牧師室より

アジア太平洋戦争で、沖縄は唯一の地上戦を体験した。軍と住民が一つになって、本土攻撃を遅らせるため「捨て石」としての悲劇的な戦闘であった。この戦闘で、軍は住民を過酷に扱った。食料を奪い、沖縄の自然の洞窟・ガマから追い出し、米軍の攻撃に晒した。兵隊は「生きて虜囚の辱めを受けず」と捕虜になることを禁じられていたため、住民にも同じように捕虜になることを禁じた。更に、米軍によって男は八つ裂きにされ、女性は陵辱されると集団自決を強いた。九死に一生を得た人々はその時の恐怖をトラウマとして今も引きずっている。最近、教科書から集団自決への軍の関与を削除しようとしている。沖縄県民は猛烈に反発している。日本兵は怖かったが、米兵は親切であったとよく聞くが、それは生々しい実体験であったからである。

名護市辺野古に米軍基地を建設しようとしている。環境調査に海上自衛隊員を潜水夫として投入し、調査機材の設置を強行した。5,700トンの「掃海母艦ぶんご」を出動させ、基地建設阻止の住民運動を自衛隊が威圧して押さえ込もうとしている。政府・与党の支持を受けて沖縄県知事に当選した仲井真氏でさえ下記のようにコメントしている。「海上自衛隊が参加するような状況にあるとは考えられない。いずれにしても、特殊な任務を持つ海上自衛隊が関与すべき事態かどうか、疑問に思うし、反自衛隊感情を助長するようなことは避けるべきである。」

沖縄県民は、戦争中の日本軍の恐怖が現在の自衛隊の威圧と重なり、住民を守るものではなく、力でねじふせるものとして受け止めている。

最近、陸上自衛隊が秘密部隊を街に送り出し、イラク派兵に反対する全国各地の市民団体や政党、労働組合などが行なう集会や署名活動、ビラ配布などを盗撮、監視し記録している事実が発覚した。キリスト新聞によると、教会も調査対象にされ、実名の出た牧師もいるという。自衛隊は、平和を求める団体、個人を敵視する秘密活動をしている。驚きというより恐怖である。

ここ数年「戦争のできる国」になるために、矢継ぎ早に法整備が進んだ。北朝鮮の脅威論をバネにして、米国の世界戦略に飲み込まれている。これに対し、国民からの反発の声は小さく、その報道も少ない。

韓国の軍政時代、学生・若者が民主化を求める激しい闘いを展開した。それを、TK生(池明観先生)は「韓国からの通信」と題して、月刊誌「世界」で発信した。「韓国からの通信」には、しばしば「民主力量」という言葉が使われた。今の日本は「民主力量」が著しく低下し、政府・与党の思いのままの政治が進行している。力で管理、統制するところには国民の自由闊達な幸せは望めない。