牧師室より

「ドイツの二つの戦後処理を知る報告会 記憶の碑−和解の関係者たち」というセミナーがあった。ドイツ文化センター(ゲーテ財団)が日本のジャーナリストや学者たちを招いて、ドイツの戦後処理と近隣諸国との和解に関わっている機関を訪ねる企画を行なった。そのような企画を行なうことが驚きであるが、招かれたジャーナリストや学者たちが旅の報告をした。ドイツの近隣諸国との和解を求める戦後処理の努力と忍耐に敬服した。

ヴァイツゼッカー大統領の「荒れ野の40年」という演説はあまりに有名であるが、19991219日に、ドイツ連邦大統領のヨハネス・ラウ氏も下記のような声明を出している。「私は、このたび強制労働に対する保障についての合意の最終的な決着を見たことに深い安らぎを覚えます。

ナチスが引き起こした先の戦争で不当な扱いを受けた人々が補償金を受け取るために、敗戦以来54年も待たねばなりませんでした。

あの時代、数多くの企業が強制労働の被害者から利潤を得ました。そのうちいくつかの企業はすでに、自分たちが負うべき責任を公式に認め、実質的な補償金を支払うことを考慮しました。いくつかの企業は強制労働を行なったことがないのにもかかわらず、参加しているのです。

犯罪の犠牲者にどんなにお金を積んでも、きちんと償うことが出来ないということは、私たちすべてが知っています。何百万人もの女性や男性に負わせた傷を回復させることができないことも、私たちすべてが知っています。過去にどれくらいの数の犯罪が行なわれていたのかということすら、推し量れないのです。

奴隷労働と強制労働とは、単に賃金が支払われなかったということだけを意味するものではありません。人々の故国と人権を奪い取り、人間の尊厳を容赦なく奪い取る行為です。時には働く人々を意図的に殺すためにも利用されたのです。

人命を失った数多くの人々にとって、侵略の時代に亡くなった人々にとって、今回の保障は、遅きに失するものです。たとえそうだとしても、今大事なことは、今日合意された人道的保障を、生存者の方々が早急に受け取るということです。私は、それが金銭の問題ではないということを十分承知しています。犠牲者が求めているのは、あのときの苦しみを苦しみとして、あのときなされた不正義を不正義として認められることです。私はドイツの支配のもとで奴隷労働と強制労働を強いられたすべての人々に弔意を表し、ドイツ国民の名において、ここに許しを請います。私たちはこの苦しみを決して忘れません。」

日本の戦争責任の認識と対応のあまりの違いに愕然とした。謝罪の深さと真実さが真の和解を生み出す。