牧師室より

柏木哲夫先生が「ホスピス・緩和ケア」を上梓された。1981年に、日本に最初の「聖隷ホスピス」ができた。1984年に、柏木先生の「淀川キリスト教病院ホスピス」が作られた。四半世紀しか経っていないが、ホスピス・緩和ケアに関して、先生方の努力によって、大きな広がりと質的な深まりがあることを知った。

以前、柏木先生の本を読み、大変感銘を受けた。その頃、求道者の家族の病気について心を痛めていた。病状を詳しく書いて、柏木先生のご指示をいただきたいと手紙を出した。先生は丁寧な返事をくださり、その誠実さに感激した。上梓された本を読み、あれだけ忙しい中、返事をくださったことに改めて感謝した。

人は必ず死を迎える。その時、どのような迎え方をするか。ホスピスは「その人が、その人らしい生を全うできるように援助する」ことを目標にしたケアシステムである。 

キューブラー・ロス博士は末期患者にインタビューして、名著「死ぬ瞬間−死にいく人々との対話」を著した。以来、死はタブーではなく、真摯に向き合うことが一般化した。柏木先生は、下記のようなプロセスで死を迎えると書いている。@治る希望から A疑念 B不安までに至り、ここで疑念や不安について尋ねる人と尋ねない人に分かれる。尋ねた人は Cいらだち Dうつ状態へと進む。尋ねない人は Dうつ状態に直結する。ここから、死を受容する人とあきらめる人に分かれる。

自分の死を受け入れた人の心理的プロセスには人生の積極性、ケアする者たちとの間に暖かさ、人間的な連続性、つながりがある。一方、あきらめて亡くなった人は人生に消極的で、少し冷たく、コミュ二ケーションがどこかでプツッと切れたような不連続がある。そして、宗教を持っている人の42パーセントが死を受容したの対し、持ってない人は25パーセントであった。サンプルは少ないが、死の受容には宗教が役割を果たしていることは確かなことであると書いている。

淀川キリスト教病院の初代院長だったフランク・A・ブラウン氏の手紙を紹介している。「近々、自分の死が訪れることが分かったとき、まわりの景色が急に特別の輝きを持って私に迫ってくるような感じがするようになりました。…… 夜空の星も輝きを増し、そのずっと向こうにある天国のことを私に思わせます。不思議に死は全然、怖くありません。むしろ、天国はどんなところか早く行ってみたいと思います。」

K兄が奥さんに「夜空の星になって、あなたを待っている」と言われた言葉を思い出す。