牧師室より

「旧約を読む会」は「列王記下」を読んでいる。ソロモン王の死後、(南)ユダと(北)イスラエルに分裂する。両国とも王政は猫の目のように代わり、国力は衰える。南にエジプト、北にアッシリアという大国に挟まれて、苦悩の中、滅亡に向かって進む。歴史をHistoryと言う。これはhis story(彼の物語)である。支配権を握った男たちの歩みを綴ったものである。王政の変遷を読みながら、動乱の時代、民衆はどのような生活を強いられたのだろうかと思う。それは、民衆の苦悩を伝えた預言書を読む時に、回答が得られるだろう。

 北朝鮮は核実験をした。完全な成功ではなかったのではないかとも言われているが、とにかく核実験を強行した。平和が著しく損なわれ、本当に残念なことである。広島、長崎の経験から、核は「悪魔の兵器」であると誰もが思う。その悪魔の兵器で国際的な発言権を得るという矛盾に陥っている。国連は迅速に、国連憲章7章に基づいて、経済制裁を決議した。北朝鮮と関わりの深い中国、ロシアも軍事制裁は避けたものの、経済制裁を当然とした。

軍事制裁はイラク攻撃に見られるように、爆撃によって血を流し死亡させる。経済制裁は、見えるところでは血は流れない。しかし、ボディーブローのように長期にわたる苦悩が続き、軍事制裁より死者の数は多いと聞く。食料がなく医薬品が切れて、特に子供たちの命が失われる。

北朝鮮は今夏、洪水によって食料が激減した。今冬には、餓死者が相当数出ると言われている。

私たちが新聞、テレビで知ることはhis story(ライス女史を除いて、権力を持つ男たちの物語)である。その背後にいる民衆の姿は見えない。私はそれを見たい、伝えてほしいと思う。世界の人々が二千二百万人の北朝鮮民衆の苦悩を見れば、対応が変わるのではないか。

かつて日本は、国際連盟を意気揚揚と脱退した。そして、経済制裁を受け戦争へと突っ走った。その時の国民生活を知っている日本は北朝鮮を最も理解できる立場にある。徒な力の誇示を競い合わず、民衆の現実を共有したいと切望する。