牧師室より

サンパウロ福音教会の小井沼國光宣教師が検診のため、一時帰国されたので説教をお願いした。主イエスは十字架刑を宣告され、十字架を背負って「ゴルゴダ」の刑場まで市中引き回しをされた。途中負えなくなった時、その場に居合わせたキレネ人のシモンが十字架を負う代役をさせられた。過ぎ越し祭の巡礼に来ていた彼は無理やりに負わされた十字架に怒りと屈辱で一杯であっただろう。ところが、彼の息子たちは初代教会において知られたクリスチャンになり、また彼の妻をパウロは「彼女はわたしにとって母なのです」と言っている。怒りと屈辱の中で負わされた十字架がシモンの家族をクリスチャンにするという祝福に転化した。

國光師は筋萎縮性側索硬化症(ALS)という原因も治療方法も分からない病気になり、現在両手が不自由で、不便と不安の中、目覚めとともに毎日生きる闘いをしている。この事実を、シモンと同じように自分に負わされた十字架として受けとめている。キューブラー・ロス博士は「喪失体験がかけがえのない新しいものを得る機会となる」と語っている。会社員としてサンパウロに駐在していた時、第2の回心を経験し牧師に献身した。今、思わぬ十字架を負わされ不便と不安の中にあるが、第3の回心が与えられ、この生を大らかに受け入れ喜べる祝福の時を待っている、と率直に話された。

来年の3月頃、十年間のブラジル伝道を終えて帰国される。神が新しい「備え(イエラエ)」をしてくださることを祈りたい。