牧師室より

タイでエイズ孤児のために「さんたの家」を建て、彼らの養育に奉仕しているYさんからIさんにきたメールを紹介したい。

「サーイは元気に幼稚園に通い始めました。今日は4時過ぎに元気に手を振って帰ってきましたので、私が『おかえり−』と声をかけたら、『おはよごまじゃす』と返ってきました。サーイが初めて覚えたたった一つの日本語です。朝の挨拶の『おはようございます』と言っているのですが、あまり的外れと言えないのです。タイ語ではサワディカーでしょう。 

 昨日、サーイを幼稚園に連れて行った時、さんたの家のスタッフは私を含めて、4人でしたが、園に入った途端に、私のところに来てカエデのような小さな手で力の限り、わたしの指を握っているのです。

 雰囲気を察しての行動です。Iさんが言われたようにたった4才で愛する人と何度も別れなければならなかったことがカエデのような手から今度こそ 放すまいと伝わってきます。園に預けたあとも泣いていた声を私は終生大切に、耳の奥底に残しておこうと思います。あの手の温もりと共に」。

4歳のサーイちゃんは両親をエイズで失った。養ってくれていたおばあちゃんも亡くなった。彼女はお兄ちゃんと共に「さんたの家」に来た。初めて幼稚園に行くことになったが、また、自分を守ってくれる人から切り離されるのではないかと、Yさんの指を必死で握りしめた。園舎に入った後も、大声で泣き叫んだ。Yさんは、その泣き声と指の温もりを生涯忘れないと書いている。

指しか握れないカエデ(モミジ)のような小さな手で、Yさんの毛むくじゃらの指を嫌いもせず、握りしめて離さない。彼女の小さな胸の不安と恐怖が痛いように伝わってくる。兄妹二人で、安心して住める「さんたの家」に来ることができて本当に幸いであった。

私は多くを知っている訳ではないが、途上国の困難な人々への支援に関して、下記のように感じている。女性たちは目を見張るような無私の活動をしている。バングラデシュ、タイ、ヒィリピン、ブラジルで感銘を持って彼女らと出合った。男性の場合は医者、教育専門家、建築関係者などの特殊技能を持っている人が多い。Yさんは特別な技能を持ってはいない。しかし、環境を整え、母親のように懸命に子どもたちを養育している。Yさんは稀有な男性で、その働きに心から敬意を表している。タイに永住した当初の力みは抜けて、「この奉仕が出来ることは本当に幸せだと感じています」と子どもたちの安心と成長を喜んでいる現在の心境を書いてこられた。