牧師室よ

N兄から勧められ、横浜の日本新聞博物館で開催されている「写真が伝えた戦争」展を見に行った。

写真はダイレクトに事実を伝えてくれる。瓦礫になった都市や沈没する艦船の写真は悲惨である。人間の体がバラバラになり、腐り果てていく写真には、同じ肉を持つ者の痛みが伝わり、目を被いたくなる。

ロバート・キャパの一枚の写真が世論を変えたと言われるほど、写真はインパクトを持っている。ベトナム戦争の写真報道は戦争の非道さを伝え、反戦意識を高めた。逆に言えば、用い方によっては更に大きな悲劇を生み出す要因にもなる。湾岸戦争の時、米国は燃える油田や油にまみれた鳥の写真報道などを巧みに利用し、戦争の正当化を訴えた。

米国中心で始めたイラク攻撃後、自爆攻撃が続き、収拾がつかなくなっている。この間、双方で十数万人が死んだ。イラク人と米国人の犠牲者は1001くらいの割合であろうが、米国も深く病んでいる。

大学への奨学金や健康保険を出すからと誘って、貧しさに喘ぐ青年を兵士に駆り出している。それらを得られるのは少数者であるという。兵士6人に対し1つの防弾チョッキしかない。信じられないことだが、水も一週間に1リットルしか支給されていない。日用品と引き換えにイラク人から水や食料をもらっているという。戦場の恐怖が無為な発砲を誘発し、関係のない人々の殺戮につながっている。更に深刻なのは、戦闘で体が飛び散る想像を絶する悲惨に触れ、精神障害を抱える兵士が6人に1人の割合でいる。彼らは帰国しても、深いトラウマに捕われ、人に対して攻撃的になり、アルコールやドラッグ依存症で苦しんでいる。家庭は崩壊し、350万人のホームレスの内、50万人が帰還兵であるという。

ある帰還兵の言葉が胸を打つ。「俺たちはみんな、戦争というのは私腹を肥やそうとする大統領や軍需産業や建設会社が起こすものだと思い込んでいる。だが、戦争を引き起こし、支えている一番大きな原因は、腹の突き出た金持ち連中じゃない、俺たち国民の『無知』だったんだ」。支配者、権力者が開戦を決断するが、その責任は「国民の無知」にあると言い切るのは「無念さ」であろうが、正鵠を得ているのではないか。

米国在住の堤未果氏は、勝者と思われている米国の深い病を上記のように伝えながら下記のように締めくくっている。「武器は、持てば持つほど恐怖を増大させる。その対極にあるのが、相手を信じ切り武器を捨て丸腰になる『平和憲法』だと知った時、『戦争には加害者も犠牲者もない、全員が犠牲者だ』という米兵たちの声は、私たち日本人の心の中深くに届くだろう」。