牧師室より

「キリスト新聞」は題字の下に「平和憲法を護れ、再軍備絶対反対」の標語を掲げている。この標語を掲載するようになったエピソードを武藤富男氏の著作から同紙の社説で紹介している。「賀川豊彦が東京・神田錦町の日本基督教団ビル二階にあったキリスト新聞社の奥の部屋に入ってきて『憲法草案者の重要人物である金森徳次郎さえも、平和憲法を改める必要があるなどと言い出した。武藤さん、標語をキリスト新聞に出しましょう。平和憲法を護れ、再軍備絶対反対がよい』といった。私は『賛成です。次の号からやりましょう』と応じた」。1953815日号から標語の掲載が始まった。

その後、ある薬品会社の社長からこの標語をはずせば、題字下に毎号広告を出すと申し出られたことがあった。また、編集方針を変えれば、アメリカの教会が出している補助金の大部分をキリスト新聞社に回す、そうすれば20万部を発行し諸教会に配布することができると持ちかけられた。武藤氏は役員たちと相談したところ、「どんなに苦しくとも、補助金をもらわずにやっていこう。標語は現状のままにしよう」ということなり、賀川氏も賛同したという。

同紙は、1953919日の「どちらが現実的か」と題した社説を転載している。「世界の情勢をつくづくと見、日本の現在および将来を考えると、我々の唱える平和論が現実にピッタリしたもので、再軍備こそは迷妄であり、観念論であることを見いだすのである」。そして、「今日、日本がアジアで信頼され、リーダーシップをとるためには、憲法9条を護ることは欠かせないのである」と締めくくっている。

最近のテレビに出てくる政治家やコメンテーターは「憲法を護れと言う者」を現実離れした愚か者のように言っている。大江健三郎氏など9名で発足した「『九条の会』をきく県民のつどい」が県民ホールで行なわれた。五千人を越す大盛会であった。国民の間には平和憲法を護ろうとする思いが根深くあることを改めて知り、心強く思った。憲法は確かに敗戦の痛手の中で、米国主導で作られた。しかし、戦争に直接対面させられている人々の間では日本の憲法は羨望の的になり、世界の将来から求められている「法」であると認識され始めている。憲法は今、真にリアリティーがあるのではないか。