牧師室より

憲法と教育基本法の改定が議論されている。教育基本法の改定は犯罪の低年齢化や青少年の自殺などに見られる生命軽視を憂慮し「宗教的情操の涵養」を盛り込もうとしている。これに対し、朝日新聞で三人の識者がコメントしている。

早稲田大学の西原博史教授は「国家神道が戦争を美化し天皇を権威づけた歴史を考えれば、『宗教的情操の涵養』が、軍国主義の亡霊を呼び起こす危険性も高い。宗教的情操や愛国心は、為政者が都合のいい考え方を押しつける手がかりになる」と批判的である。

国学院大学の大原康男教授は「戦後、『修身』が廃止され徳育が消えた。『道徳』は効果をあげていない。宗教情操教育で徳育の穴を埋めたい」と主張している。

僧侶で小児科医の梶原敬一氏は、浄土真宗の祖・親鸞の「疑いを持って問い続けることによって、人間の都合に振り回されない真実が明らかになる」という教えから、宗教で「愛国心」を教えるなら「国家」とは何かを問うことから始めなければならない、また「教育に宗教心を生かす目的は考え抜く人を育てることで、信仰あつい人を育てることではない」と語っている。

宗教と国家は決して結び合ってはならない。また、国の宗教情操教育によって生命尊重の心が育まれるとは思えない。子供たちの「今」は無残に人を殺し、弱い者をいじめ奪う大人社会を写し出している鏡である。大人たちが教育基本法の理念を実行することによって、子供たちは健全に育っていくのではないか。