牧師室より

信濃町教会で「バルメン宣言70周年記念集会」が持たれた。「ドイツ福音主義教会の今日の状況に対する神学的宣言」がバルメンで出されたので、通称「バルメン宣言」と言っている。1934年、ドイツ福音主義教会の告白会議に集ったルター派、改革派、合同教会などの代表者たちが福音主義の地盤の上に立って、発せられた6項目からなる簡潔な宣言である。

その第一項は「聖書においてわれわれに証しされているイエス・キリストは、われわれが聞くべき、またわれわれが生と死において信頼し服従すべき神の唯一のみ言葉である。教会がその宣教の源として、神の唯一のみ言葉のほかに、またそれと並んで、更に他の出来事や力、現象や真理を、神の啓示として承認しうるとか、承認しなければならないという誤った教えを、われわれは退ける」と宣言している。この第一項に最も大切なことが表明されているが、文字上からは、キリスト教信仰が古典的に述べられているような文言である。しかし、この宣言は特定な歴史状況の中で出された。その状況とは、ヒットラーがナチズムを形成、大きく成長しようとし、これにドイツ的キリスト者という有力な教会団体が追従していた状況である。宣言はナチズムが内包するファシズムの本質を見抜いて不服従を告白し、これに追従するドイツ的キリスト者は福音主義信仰から著しく逸脱するとの危惧を表明している。

 バルメン宣言を読むたびに言葉の重さと力を痛感する。言葉は全くキリスト教の信仰告白であるが、時代の危機を鋭くついて、国家と教会のあり方を教えている。

 歴史的事実は、バルメン宣言を担ったキリスト者たちは迫害を受け、ナチズムは連合軍の武力によって崩壊させられた。しかし、神学的意味は限りなく大きい。

「記念集会」は三人のコーディネーターによるシンポジウム形式で行なわれた。東北学院大学の佐藤司郎教授は、バルメン宣言が@罪責告白を生み出し、Aエキュメニズム(教会一致運動)を促進し、B和解と平和、解放を自由への力として受けとめられたと話された。弘前南教会の村松重雄牧師は、「前進への呼びかけ」であり、この視点から教団の信仰告白の検討と第二の教団信仰告白の必然性を熱く語った。富坂キリスト教センターの鈴木正三総主事は韓国、中国、台湾での教会闘争は「東アジアのバルメン宣言」であり、日本での「靖国闘争」もその中にあると語られた。

 キリスト告白への集中は人間を否定する諸々の力からの解放をもたらし、人間の尊厳を確保することを改めて確認させられた。