◇牧師室より◇

 中米の人口約400万人のコスタリカは「非武装中立」政策を取り、軍隊の保有を禁じた平和主義を貫く国である。軍事費を教育と福祉に用いて豊かで住み易い国になり、近隣諸国にも平和を輸出し喜ばれていると聞く。コスタリカ政権は米国のイラク攻撃を支持した。当然、米国は「有志連合」に加えた。ところが先ごろ、コスタリカの最高裁憲法法廷は、米国を支持することは同国の憲法や国際法に反すると違憲判決を出した。同政府は米国支持を取り消し「有志連合」からの削除を求めた。米国は応じざるを得なかった。

 「九条の会」が発足した。もちろん、平和憲法を謳った9条を守り、「改憲」を阻止しようとする会である。発足記念講演会の参加を申し込んだが、定員を越えているとのことで、参加できなかった。「週刊金曜日」に講演要旨を掲載していた。またビデオで、講演の全記録を観る機会を得た。井上ひさし、三木睦子、大江健三郎、奥平康弘、小田実、加藤周一、澤地久枝 鶴見俊輔(敬称略)の多彩なメンバーで、迫力ある講演会であった。二人の講演の中から紹介したい。

 評論家の加藤周一氏は第9条がなかったら何が起こるかを予想すると、下記の4つが考えられると語っている。@ 日米軍事同盟が強化される。A 徴兵の問題が出てくる。B 軍備の増大は軍産体制の強化となり、軍部の政治的発言が強くなる。C 軍事力と安保条約の強化は東北アジアでの日本の外交的な選択が狭まり、孤立感が深まる、と。

 哲学者の鶴見俊輔氏は下記のように語っている。米国留学中に日米が開戦したため、俘虜収容所に入れられた。日本は確実に負けることを信じ、負ける側にいたいと交換船で帰国した。海軍の軍属として派遣された時、隣りの部屋の軍属に病気になった黒人を殺せと命令が下った。毒を与え穴に埋めたけれども死なないのでピストルで殺した。自分に命令が下ったらどうしたか、何年も考えた結論は「私は殺した。だが人を殺すことは良くない」と一言で言える人間になりたい、と。

 武力で人を殺害すれば終わりのない悲劇が続くことを、私たちは今見ている。「国際貢献」という美しい言葉でイラクに派兵をした。日本は敗戦後、戦争で一人も殺したり、殺されたりすることはなかった、また、人を殺す武器の輸出をしてこなかった。これこそが誇り得る「国際貢献」ではないか。