◇牧師室より◇

 リバーベンドという名で、バクダット在住の未婚の女性がインターネットで公開しているブログ(ネット上でのコミュニケーション)を「バクダット・バーニング(バクダットは燃えている)−イラク女性の占領下日記」と題して翻訳、出版された。イラクの人々の恐れ、怒り、諦め、しかししたたかなユーモア、そしてイスラム教の生活習慣など、興味津々であった。

 他国の軍隊に占領、支配されることは耐え難い悲惨と屈辱であることが分かる。爆撃音と銃声を聞かない日はほとんどない。電気がこない。掠奪と誘拐を恐れ、日中でも一人では外出できない。米軍は一般家庭にも押し入り、連行し拷問する。テレビには放映されないが、爆撃地では死体が飛び散り、埋葬もできない。暫定政権は操り政権で、米軍の理不尽な行為に対して何の抗議もしない。暗殺事件がしばしば起こり、失業率は50%を越えている。イラクは破壊され尽くしている。米軍が撤収したとしても、米国への憎しみは決して消えないだろう。

 二つのことを紹介したい。一つは日本人人質事件に関して、こう書いている。「なかでも日本人人質事件は悲しい。家族と友人たちを本当にお気の毒に思う。それに日本たちのことも。… 解決の糸口があればと願うが、ありそうもない。日本政府は軍隊を撤兵する? まったくありえない。日本政府にとって3人の命は問題ではないのだから。… イラク人の間には日本に対する敵意がある。日本は軍隊を送り込んできたのだから。日本は軍隊の派遣を決めた時、『あの』国々の一つになったのだ」。「あの」国々とは言うまでもなく、米英のことである。

 もう一つは、解決策を提案せよというEメール問いかけに対して次のように答えている。「強姦するな、拷問するな、殺すな、そしてまだ選択の余地があるうちに出ていって。混乱が起きるって? 内戦が? 流血が? 私たちは私たちの運命を引き受ける。だから、あなたたちの操り人形、あなたたちの戦車、あなたたちの精密兵器、あなたたちの愚かな政治家、あなたたちの嘘、あなたたちの空手形、あなたたちの強姦魔、あなたたちのサディスティックな虐待者を連れて出ていって」。イラクの問題はイラク人の手で解決してもらう。当たり前のことではないか。

 リバーベンドは誰であるか分からないので、印税を送ることができない。彼女の同意を得て、イラクの弱い立場の女性と子どもたちを支える基金にするという。本を購入し一読をお奨めしたい。