◇牧師室より◇
プリンストン大学の国際経済学教授・ポール・クルーグマン氏の「嘘つき大統領のデタラメ経済(原題
THE GREAT UNRAVELING Losing Our Way in the NEW Century−大解明 21世紀は米国の世紀ではない−訳者の意訳)」が、出版された。ニューヨーク・タイムズ紙に連載されたコラムを編集したものである。経済に関する記述が多く、私には難解であった。しかし、歯に衣着せぬ物言いで、ブッシュ政権の実態を言い当てていると、興味深かった。ブッシュ政権は富裕な人々に手厚く、貧しい人々を切り捨てる政策を行い、分極化が進んでいる。「アメリカンドリーム」はまさに夢になり、出自によって出世が決まるような社会になっている。今一つは環境破壊を加速させる政策を押し進めている。エネルギーを確保するためにはなり振り構わない手段を取っている。クルーグマン氏は経済学者らしい豊富なデータを引用しながら、それらが嘘とデタラメな手法であると手厳しく論じている。
イラク攻撃はアルカイダと繋がるテロ対策、そして大量破壊兵器保持が大義であったが、二つとも違っていた。真の狙いは石油利権確保であると批判されている。クルーグマン氏はもっと巨大な野望「アメリカ帝国論」とでも言える、軍事力でアメリカ的秩序を世界に押し付けようとしているのではないかと疑っている。「聖書の世界観を広める」と豪語する人もいるという。武力で制圧する十字架の福音などあり得ない。
ヨーロッパ人のアンケートでは北朝鮮、イラク以上に米国が世界にとって脅威であると答えている。ヨーロッパと米国の違いが顕著に表れているが、それは情報入手の違いであり、米国は権力による情報操作が著しいという。人格に品位があるように、国家にも品位があろう。品位をなくしたブッシュ政権への無批判な追従は禍根を残す。ブッシュ大統領と小泉首相は「劇場的政治手法」において似ていると思った。