◇牧師室より◇

 Y兄はタイのチェンマイでエイズ孤児を養育する「さんたの家」を開かれた。その「開園式」にS兄、T兄 M姉と私の4人で参加してきた。「さんたの家」はタイ語で「バーンサンタ」と言う。バーンは「家」でサンタは「平安、平和」を意味する。それに子どもたちに喜びを与えるサンタクロースを掛けた命名である。カタカナのサンタはサタンと間違えられるので、ひらがなの「さんたの家」にしたと言っておられた。

 Y兄は残された人生をタイのエイズ孤児に捧げたいと経営していた会社をたたみ、59歳の誕生日にタイに向かい永住された。バンコクの郊外に100人の孤児を養育できる「ハッピーホーム」という立派なホームを3年という早さで建てた。Yさんの心血を注いだ献身に多くの人々が感銘を受け、協力支援した。驚くべき働きであった。

 しかし、完成し自立した「ハッピーホーム」の運営姿勢はY兄が孤児のために傾けたほどの情熱ではなくなっていると思えるところがあるようである。

 心機一転、孤児たちと心の通い合う手作りのホームの設立を目指して「さんたの家」を立ち上げた。借家を手に入れ、改造し、必要な家財や食器類を購入した。そして、4人のスタッフを集め、孤児を受け入れる準備はできた。希望と喜びの中での、素晴らしい「開園式」であった。タイ在住の人を含め日本人が40数名、総勢90人ほどが列席した。地元の郡長(多忙で欠席)、村長、病院長、警察署長、看護師、保健師などが集まり、地域の協力が得られていることを頼もしく思った。

 今は借家で、せいぜい10人くらいしか養育できない。広い土地を確保し、建物を建て、良いスタッフを求めなければならない。やるべきことは無数にある。しかし、ここから全てが始まる。一人の孤児でも救いたいという熱意がひしひしと伝わり、その気概に圧倒された。

 Y兄は、主イエスの「そのように、これらの小さな者が一人でも滅びることは、あなたがたの天の父の御心ではない」というみ言葉に真っ直ぐに動かされてきた。私たちも可能な支援をしたいと励まされて帰ってきた。