◇牧師室から◇

 今年の敗戦記念日15日(金)は珍しく大雨であった。この日、二つの集会を梯子した。一つは、平和遺族会全国連絡会が主催した「非核・平和・共生の北東アジアを造ろう」という集会である。在日大韓基督教会名誉牧師・李仁夏先生が「『有事』のない日本とアジアの平和を造ろう」という講演をされた。北朝鮮と和解するための努力が必要であると、78歳とは思えない、力強いアピールであった。もう一つは、市民文化フォーラムが主催した「『有事体制』下の平和構想」という集会で、6人が講演し、4時間を越える熱気溢れる集会であった。大雨であったが、二つの集会とも立見席が出るほどの盛会であった。「911」以後、アフガン戦争、イラク攻撃と恒常的に戦争状態が続いている。北朝鮮の拉致問題、核疑惑に煽られてか、有事法制やイラク特措法があっという間に成立した。日本が戦争のできる国から、戦争をする国になってきた。この緊迫感が集会を盛り上げている。日本の戦後史の曖昧さ、米国の歴史を逆転させる危険な政策、北朝鮮の現状など、多くのことを啓発させられた。戦争責任と戦後補償を怠ったツケが今の混乱を招いていると思う。残念ながら、日本は世界から信用されてないことは事実である。

 私たちただの市民が気をつけることとして、二点を示された。一つは、マスコミを鵜呑みにせず、批判的な視点も持つことである。最近の北朝鮮に関する一方的な報道が無意味な危機感を作り出している。かつての日本とそっくりなのだから、日本が陥った過ちを犯さないように愛情と説得的な報道があってよい。今一つは、生活レベルで信頼関係を築くようにすることである。最近の人間関係はささくれ立って、小さな違いに目くじらを立てている。私たちが日ごろ出会う隣人に愛と尊敬をもって接する姿勢が大切である。

 立教大学教授の韓国人・李鐘元先生は韓国の金大中元大統領の「太陽政策」は浸透し、年間1万人以上の市民が北朝鮮を訪問しているので、南北は和解に向かっていると報告された。日常的に信頼関係を作っていくことが将来の平和を構築していく。日本平和学会会長の北沢洋子氏が次のように語っていた。英国のブレア首相が外国を訪問すると、何十万人単位の市民がイラク攻撃に加担したことへの抗議を表明する。日本にこのような市民レベルの意思表示がないのはどうしてかと。

 二つの集会の間に靖国神社に行った。この神社が平和を求めている所とは思えない。戦争賛美と世界には通用しない愛国主義的な催しをし、ビラの配布をしている。戦死者が後世に何を望んでいるかを真摯に考えるべきではないか。無辜の多数の死者を出す戦争ほどの大罪はない。敗戦記念日、悲しみと、平和への思いを深くした。