◇牧師室より◇

 英国国際研究所の「ミリタリーバランス2001」の資料報告によると軍事費(単位はドル)の上位7までは下記の通りである。米国−2946億、ロシア−588億、日本−444億、中国−411億、フランス−342億、イギリス−338億、ドイツ−282億。

 米国は他の追従を許さないダントツである。2位以下9位までを合計し、ようやく米国に達する。現在はこの差が一段と広がっていよう。日本は「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と謳った憲法に反し、世界第3位の軍事大国である。

 イラクは15億。米国は196倍以上の軍事力を持って攻撃した。無力な赤子の手をねじるようなものである。北朝鮮は20億。日本の45%に過ぎない。拉致問題がこじれ核開発疑惑が起こり、北朝鮮からの攻撃がまことしやかに論評され、有事法制化に弾みをつけた。数字だけを信用するわけではないが、北朝鮮からの攻撃はまず考えられない。

 過去の戦争において侵略に乗り出したのは、今の米国と同じで、明らかに軍事力を強めた国々である。

 小泉内閣は米軍の後方支援のためイラクに自衛隊を送り出す法整備も急ぎ、忠犬であろうとしている。

 紀元前8世紀、南ユダで活躍した預言者イザヤは「彼らは剣を打ち直して鍬とし、槍を打ち直して鎌とする。国は国に向かって剣を上げず、もはや戦うことを学ばない」 と語っている。このイザヤの預言は現実とはならず、国々の争いは絶えなかった。イザヤは戦争に明け暮れる人間の愚かさを嘆き、血を吐くようにして平和を求めたのである。

 新型肺炎SARSは感染力が強く、特効薬もできていない。沈静化しつつあるが、7百人もの人が亡くなった。米・英軍の攻撃でイラク兵1万人以上、民間人4千人以上が死亡したと言われ、その数さえ判明していない。今後も、ウラン弾や治療を受けられないため、間違いなく死者は増えていく。彼らは伝染病とは違い、人為的に殺されたのである。戦争は人間の英知で避けられる。避けられる戦争を続けるほど、イザヤの時代のように現代人は愚かなのか。

 覇者気取りの米国に異議を言い出せない虚無的な風潮が世界に蔓延している。「剣と槍を鍬と鎌に打ち直せ」と叫び続けることが、内なる虚無を克服する信仰である。