◇牧師室より◇
米国はイラクの大量破壊兵器が世界平和を脅かすと強調していた。その後、イラクの民主化のためにフセイン独裁政権を打倒すると他国への直接介入を憚らなくなった。英国や日本など一部の国を納得させ、猛烈にイラク攻撃をした。この暴挙に対し「国連の機能が崩れ、民主主義が崩壊した」という見方がある。しかし、私は逆ではないか、また逆でなければならないと思っている。米国は
15の常任、非常任理事国の中で4ヶ国しか同意を得られなかった。小さな国々も米国のアメとムチに屈しない、驚くべき反骨を世界に示した。国連の働きへの関心はかつてないほど高まったと言えよう。国際法遵守と国際協調が欠かせないことを心ある国は認識したのではないか。民主主義に関しても同じことが言える。フランス、ドイツが強力に反対したが、国益がらみだと見られる節もある。しかし、ドイツのシュレーダー首相はイラク攻撃反対を明示して選挙に勝った。フィッシャー外相は国連で米国案を飲んだら国へ帰れないと言ったという。戦争反対の強い国民意思を反映している。フランス政府も同様に民意を意識して米国のあり方を鋭く批判した。
今回ほど、世界の人々が立ち上がって意思表示をしたことはなかった。ベトナム戦争反対の盛り上がりよリ、はるかに大きなうねりであった。私も
3月は週末ごとにピースパレードに参加した。若い人が多く、道行く人々も気軽に加わっていた。人々は納得できないことに声をあげ、民主主義は育ちつつある。北朝鮮は核を保有していると表明した。今後、北朝鮮にどのように対処するかが問題になる。武力で威嚇する方法は取るべきではない。
米国を中心に戦勝国がイラク石油を独占するという。調査報告書を手に入れた「押し込み強盗」ではないかと唖然とする。米国の身勝手で高慢な単独主義は世界を混乱、崩壊させる。「力の論理」を排して、国際的な協力関係の中で新しい世界を作り上げることが大切ではないか。
私たちは主イエスに聞く。主イエスは徹底的に暴力を捨て、互いを受け入れ愛し合うところに神はおられると語り、赦されて「共にある」ことを福音として示された。これに愚直に倣うことが信仰である。パウロは主イエスの生涯から「強い者は、強くない者の弱さを担うべきであり、自分の満足を求めるべきではありません」と語っている。主イエスの福音は個人倫理だけでなく、国際関係においても「喜びの音信」として妥当する。この福音に聴き従うことが教会の証し、宣教である。