◇牧師室より◇
イラクは古代文明発祥の地である。ノアの洪水物語の原型を記した「ギルガメッシュ叙事詩」は人類最古の物語で、この叙事詩から全ての物語は生まれたと言われている。アブラハムは「ウル」を出発し、カナンで神を問い続けた。南ユダは「バビロン」によって滅ぼされ、捕囚の苦役をなめた。これらは全て、現在のイラクと関係している。イラクは文明を生み出し、聖書との関わりも深い。
米国のイラク攻撃は
3週間で終わり、フセイン政権はあっけなく崩壊した。独裁、恐怖政権に忠誠を尽くす民衆(兵隊)はいないということであろう。一部のイラク国民は暴徒となって物品を略奪し、病院からも奪い病人の治療ができないという。更に、国立博物館からも古代遺産が盗難にあっている。陳列棚のガラスを破られ展示品が無くなっているのを見て、博物館員の女性が大声で泣いている映像が印象的であった。無辜の人々をハイテク兵器で殺傷する米国政府はかつてのアメリカ先住民に対するやり方と変わらない。怒りと悲しみを禁じ得ないが、人類にとって取り返しのつかない貴重な遺産、遺跡を守ろうとしない姿勢にも呆れ果てる。在米の米谷ふみ子氏が新聞で指摘しているように、世界遺産は護衛せず、油田だけはしっかり護衛しているのだから、米国の価値観が透けて見える。ウランの盗難も伝えられている。暴力による解決は暴力の連鎖を断ち切れない。