◇牧師室より◇

 文芸評論家・斎藤美奈子氏の辛口でウイットの効いた語り口は面白い。「月刊百科」に連載した「趣味は読書」がまとめられて出版された。最近、ベストセラーになった本を紹介しながら、ずたずたに評論している。紹介されている41冊のベストセラーの中で、私が読んだのは何と2冊だけであった。時代に取り残されている自分を改めて知らされた。

 読んだ一冊は「市販本・新しい歴史教科書」である。戦後史を「自虐史観」と見なす「新しい歴史教科書をつくる会」が書いて、検定に合格した。教科書として採択した中学校は1%以下であったが、「市販本」は80万部も売れたという。私はもちろん買ったのではなく、人からもらって読んだ。日本をそれほどまでに素晴らしい国であるとなぜ美化したいのか。自信を喪失しているように見える彼らに、架空を想像するのではなく、事実に向き合うところから自信は生まれると言いたい。斎藤氏は「新しい歴史教科書」に対抗する批判は正論であるが、正しいだけで主張の単調さとお粗末さをあげ、「やっぱり未来はなさそうだ」と手厳しい。

 もう一冊、「世界がもし100人の村だったら」を読んだ。一冊ではなく一枚の紙に印刷したものである。「911」後、米国から発信され、ネットを巡って多くの人が目にした。斎藤氏は単純なメッセージから単純な感想が生まれるだけであり、今の地球を暗示していると嘆く。

 「ハリー・ポッター」が1億人を魅了し、聖書、毛沢東語録に次ぐ、史上三位のベスト・セラーだそうだ。斎藤氏は「ドラッグの蔓延と同じ退行現象の一種だ」と言う。 

 最近、読書量が減り、読んだことをすぐに忘れてしまう。自分で納得でき、また同じ考え方の本を読む時には興味を持てるが、波長の合わない本も丁寧に読むように心がけている。反対意見を聞ける間は、老化に多少の歯止めがかかるだろうから。