◇牧師室より◇

 一週間の休暇をいただき、妻の故郷の青森に行った。妻の父・菊池吉弥牧師が戦後、苦闘しながら伝道した五所川原教会を訪ね、礼拝を守った。五所川原教会は都市計画によって移転し、大きくきれいな教会に建て替えられていた。菊池牧師に信仰を養われた古い信徒が、妻は母・キヨ姉にそっくりだと懐かしがり歓迎してくださった。今は開発されているが、昔は不便で貧しかった農村地帯を連れ回し、菊池牧師は吹雪の中、雨の中ここでも、あそこでも集会を持っていたと案内してくださった。そして、ご自分のりんご畑を歩きながら、信仰によってここまでくることができたと実感をもって話された。

 太宰治の「斜陽館」を訪ねた。大きな屋敷で、昔の地主の権勢に驚いた。自分の出自と共産主義をあこがれる狭間で揺れ動いた太宰の心境を垣間見る思いがした。

 妻の母の実家と妹さんの家も訪ねた。弘前を案内してくださり、津軽人の故郷を象徴し、演歌でよく歌われる「岩木山」を満喫した。

 妻の祖父が住んでいた日本海側の漁村・深浦を訪ね、墓前で祈った。

 妻の従兄が車で世界遺産に登録されている「白神山地」のブナ林を案内してくださった。壮大で豊かな森であった。「十二湖」と言われるが、三十数個の湖を擁しているという。その中で「青池」はコバルトブルーの神秘的な色をたたえている不思議な池であった。

 深浦は「きれいな夕陽百選」の一つに数えられる所で、ガラス張りのペンションでおいしい海鮮料理を食べながら、空と海に見惚れた。赤く大きな夕陽がぶるんぶるんと日本海に沈み込む時、「ジュッ」と鳴ったような気がした。この海を相手に一日釣りをし、鯵を10匹くらい、クロを一匹釣ったが、あまりに小さいので海に返した。そのうち、逃がした鯵が大きくなって皆さんの食卓に乗るでしょう。

 深浦に行く途中、鰺ヶ沢を通った。鰺ヶ沢は、私の無二の友人・工藤幸紀牧師の実家のある村である。彼は言葉の出ない死の床で、サインペンで「天国のドアマン」と書いて、私が天国に行った時、ドアを開いて待っていると慰めてくれた。「鰺ヶ沢」「工藤幸紀」の二つしか分からなかったが、近所の方々に親切に教えられ、最後はバイクに先導されて、彼の実家に辿りついた。彼の葬式以来、姉ご夫婦と懐かしい再会を果たした。

 その工藤牧師は神学生時代、新婚旅行は十和田湖と奥入瀬渓流に行くと言っていた。一度行って見たいと思っていたが、なるほど、十和田湖は透明度の高い澄んだ湖で、深い緑のブナ林の木洩れ日の中を流れる奥入瀬渓谷も心洗われるような清流であった。楽しく意義深い旅行をすることができ、感謝であった。