◇牧師室より◇

 アフガニスタンで米軍が結婚式場を誤爆し、40人が死亡し多くの負傷者が出たと報道されている。こんなことが許されてよいのか。元米国司法長官ラムゼー・クラーク氏が「湾岸戦争 いま戦争はこうして作られる」という大部の本を1992年に著している。

 湾岸戦争はイラクのクウエート侵攻に対し、国連決議に基づき米軍を中心に多国籍軍が制裁するという国際正義の名の下で行われた。ところが、クラーク氏は湾岸戦争は米国のイラクへの侵略戦争であったと分析、主張する。イラクをクウエートに侵攻させるように挑発し、その侵攻によって米国のイラク攻撃を正当化したと種々の資料から語る。それは、米国の石油支配と中近東に米軍のプレゼンスを確立する目的以外の何ものでもないと断言している。

 イラク攻撃は軍事施設へのピンポイント攻撃であったと宣伝された。クラーク氏は爆撃の最中イラクを訪ね、無差別な攻撃であることを確認している。25万人のイラク人、数千人の他国の人々が死亡し、その大半は非戦闘員、女性、子どもであった。米国人の人的損害は148人で、投下された爆弾は広島に落とされた爆弾の7倍に当たる。これは戦争ではなく、計算しつくされた虐殺である。

 米国のメディアは政府の流す宣伝に乗って、クラーク氏らが起こしたイラク攻撃反対の声を黙殺した。作られた情報を鵜呑みにし、湾岸戦争の勝利はベトナム戦争敗北の後遺症を癒したとまで言わせた。

 イラクの電気、ガス、上下水道、道路、港湾など公共施設は壊滅的な打撃を受けた。環境汚染も甚だしい。大気中に放出された二酸化炭素は10%以上増加し、特にウラン弾による放射能汚染は今後に大きな影響が出る。そして、深刻な問題は食料、飲料水、薬品の欠乏による死者が爆撃による死者を上回っていることである。賠償金の支払いと経済制裁によってイラクは身動きできない。法律家のクラーク氏はイラクを立ち上がれないように追い込んでいく米国の暴力を米国憲法、国連憲章、国際法違反として糾弾している。

 軍事力と経済力で圧倒する米国の傲慢と自己中心は暴力と経済制裁によって反対、反抗できない状況を作り出している。米国はテロ支援国家には先制攻撃も辞さないと豪語しているが、米国への追従は人間否定、地球破壊に加担することになる。クラーク氏は米国人としての良心から自国の退廃を事実と膨大な資料によって厳しく告発している。

 アフガニスタン攻撃も湾岸戦争と同じような傷跡を残しているに違いない。