◇牧師室より◇

 ジョン・G・モリスは「20世紀の瞬間 報道写真家―時代の目撃者たち(GET THE PICTURE)という大部の本を出している。その中に当然、ロバート・キャバの不朽の映像といわれる「倒れゆく兵士」が載っている。スペイン内戦で共和派勢力の兵士に銃弾が当たり、持っていた銃が手から離れ、腰が砕け、体はのけぞっている。次の瞬間、彼は間違いなく地面に叩きつけられた。あまりに衝撃的な映像のため、「やらせではないか」との疑惑があったが、米国の「ライフ」誌に掲載されて、スペイン内乱に中立的な立場から共和制支持派に同情的になったと言われた写真である。

 「週刊金曜日」に広河隆一氏が目の前で撮ったパレスチナ人兵士が狙撃され、倒れ死にゆく5枚の連続写真を掲載している。一枚目は立ってイスラエル軍戦車に向かって銃を撃っている。次は狙撃兵に撃たれ持っていた銃が手から離れ前向きにかがみ込む。次は反転して後ろにひっくりかえる。次は地面に崩れ落ちた彼を回りの仲間が助けようとしている。最後は死を確認したのであろう、イスラエル軍に向かって怒りと悲しみの形相で仲間は抗議している。

 撃たれ死ぬ瞬間の写真は多くはない。何より残酷過ぎる。パレスチナ人は圧倒的な軍事力の差を知りながら、死を賭して抵抗せざるを得ない。イスラエル人は自爆テロに怯え、生活は浮き足立っている。人は生きたいから戦うのであるが、その戦いで互いに死ぬ。この矛盾はどう乗り越えられるのか。主イエスはこの地で「剣を取る者は皆、剣で滅びる」と語られた。