◇牧師室より◇
朝日歌壇の選者・馬場あき子氏は横須賀在住の梅田悦子氏の歌、「『don' t Kill(殺すな)』とヨット『おむすび丸』はたった一隻 巨大空母に揺れつつ抗議す」を第一首に選んだ。数ヶ月後であろうか、選者の近藤芳美氏は、同じ梅田氏の歌、「飾られて空母は母港に凱旋す 誰を殺せしや『母』が疼きぬ」を第一首に選んだ。そして「母港である横須賀にアメリカの空母が帰って来る。遠くアフガンの空襲を終えた後と知る。第一首。『母』が疼きぬ―自らのいのちのうちの『母性』の感情が疼くまでに、というのであろう」と選評している。空母の子どもは爆弾とミサイルを満載した戦闘機であろう。その戦闘機の空爆によって子どもたちは殺され、また殺され続けている。それを凱旋として飾りたてて帰港してくる。子どもを失ったアフガンの母親たちの疼きに思いを重ねる梅田氏の鋭く優しい感性が伝わってくる。
米国のブッシュ大統領は一般教書演説でイラク、イラン、北朝鮮を「悪の枢軸」と断定した。その理由は、大量破壊兵器の製造、武器とテロの輸出であるという。これらの悪は米国が最もしていることで、その他、自国中心を挙げれば切りがない。放送大学の赤城昭夫教授は「自壊するアメリカ」で、米国は世界の多様性を受け入れてはいるが、それらを一つの文化、信条に同化、一様化し「自画像」を描けないと書いている。ソ連崩壊後、米国の経済、軍事のひとり勝ちが自己を見えなくし、他者を失っている。米国が「自壊」しないために、日本は「自戒」するように進言すべきではないか。向こうには、子どもを何よりいとおしく思う母親のいることを、そして、自己中心は幼さの現われであることを。