◇牧師室より◇

 原告の一人に加わっている「バンザイ訴訟」は宗教行事である即位礼・大嘗祭に公人である県知事、県議会議長が公費を使って参加したことは「政教分離」を規定した憲法に違反するとして起こした住民訴訟である。天皇明仁に対し1.3メール下から「天皇陛下バンザイ」と叫んだことは、主権在民の民主主義を著しく損なう事態であるという認識がある。第一審の横浜地裁は、即位礼・大嘗祭は天皇家の伝統行事であって宗教行事とは言えないと判断し、私たちは敗訴した。現在、東京高裁に上告している。先日、控訴審第9回口頭弁論があり、国立民族博物館館長の宮地正人氏が証言された。宮地氏は歴史学者として、即位礼・大嘗祭は古事記・日本書紀から神道神学に則り、天照大神から神権と日本統治権を授与される宗教行事であると証言された。明治に作られた天皇制は幕末までのものとは違う特異なものである事を明らかにされた。興味深かったのは、即位礼・大嘗祭を宗教行事でないとすることは、神道に対して「失礼」であると語られたことである。神道は誇りを持って、即位礼・大嘗祭は神道神学が生み出した宗教であると公言すべきではないか。権力と結び、言葉を無くした宗教は必ず宗教的生命を失う。また、天皇に「憲法を守る」と言わせたことは天皇を矛盾の中に「追い込む」ことであると語られたことである。憲法を守るのなら、宗教とは関わりのない天皇の代替わり儀式が考えられて当然である。皇室人ほど人権を認められていない人々はない。彼らの人権を認め、只の人になる時、憲法で言う日本の民主主義は本物となる。現在の天皇制は差別を生み出し、国民を奴隷化・物化させる。

 反対尋問があった。宮地氏の証言は歴史学者の専門的知識であり、一般の人は証言のように考えていないのではないかと問い、失笑をかった。しかし、宮地氏は真面目に一市民として「政教分離の原則」を守りたい思いで証言したと答えられた。

 個々人の宗教は全く自由で、他者の信仰は尊重すべきである。しかし、政治が宗教に関与する時、人権が脅かされる。このことはどんなに厳密に考えても考え過ぎることはない。