◇牧師室より◇
22日(火)の朝日新聞の夕刊に「『マーチン・ルーサー・キング牧師の日』の21日、ホワイトハウスでの記者会見で、コレッタ夫人をエスコートするブッシュ米大統領」とコメントして腕を組む二人の写真が掲載されていた。「キング牧師の日」に黒人公民権運動指導者のキング牧師のコレッタ夫人らを招いた式典で、ブッシュ大統領は「(キング牧師は)現代米国の英雄だ」「彼がいたからこそ米国はよりよい国になった」と絶賛したという。唖然とした。
昨年の
12月、梶原寿先生が「マーチン・ルーサー・キング自伝」を翻訳、出版された。キング牧師の研究家のK・カーソン氏が膨大な資料を駆使し、家族と話し合いキング牧師の全体像を編集した本である。キング牧師は
1955年に始まった人種隔離バス・ボイコット運動から1968年4月4日の暗殺まで、12年数ヶ月、残虐なテロに晒される日々を送った。初めは、主イエスの「だれかがあなたの右の頬を打つなら、左の頬をも向けなさい」という言葉は個人倫理であって、社会や国家間には適応できないと考えていた。また、護身用ピストルの携帯を警察に願ったりもしている。幾多のリンチや死の脅迫という暴力を受ける不安と恐怖の中から、人間の道徳性への深い信頼がダイナミックに非暴力思想を発展、体現させた。デモの参加者に「もしみなさんが非暴力への忠誠から打ち叩かれるなら、みなさんはこの国を救うことになると言ってよい何事かをすることになるのだ」と語りかけている。主イエスの十字架による罪の贖い(救い)という福音の真理を倫理的服従として実践し、その実践が究極的な贖罪の恩寵に更に深く与れると信じたのである。梶原先生は、同時多発テロとそれに対する執拗な報復攻撃に戦慄を覚えながら、キング牧師が命を賭して問うた「非暴力の共存か、暴力の共滅か」は今日の私たちに突きつけられた課題であると書いている。