◇牧師室より◇

 平和聖日に来てくださったS姉の説教と講演の要旨と私の感想を記したい。

 女性国際戦犯法廷(以下、「法廷」)を開く前からも、そして、最近益々右翼の妨害に悩まされている。彼らは人の言うことを聞かず、反対意見を黙殺する。また、S姉が関わっている女性を守るシェルター「HELP 」には、以前は売春目的で連れてこられたアジアの女性が多かったが、最近は夫から妻へのドメスティックバイオレンスの被害者が増えている。加害者は自分の罪を認めない。彼らは対話できず、もちろん謝罪もしない。力の論理に固執し、聞くことは負けであると考えている。

 イエス・キリストは最後の晩餐の席で、弟子たちに「互いに愛し合いなさい」と教えられた。愛することは自己を変革していくことである。その自己変革は相手の話を聞くことから起こる。権利は弱い者が強い者に向かって主張するものである。声を出しにくい弱い者の声に耳を傾け、それを日常的に行い続ける中で、平和を実現していくのではないかと語られた。

 昼食後の講演は、「法廷」について話された。性奴隷にさせられたアジアの女性たちは高齢化し、亡くなっている。日本政府と裁判所の対応に我慢できなくなり、アメリカのベトナム戦争を裁いたラッセル法廷のような裁判を開こうという機運が高まった。そして、多くの献身的な協力者を得て「法廷」は実現した。

 性奴隷に従事させられた64名の女性が参加し、その実態を証言し、多くの証拠物件が集められた。また、旧日本軍兵士二人の証言もあった。彼らの証言が終わった時、「あなたがたは日本男性の名誉を回復された」と賞賛された。彼らの謝罪と天皇の有罪判決を聞いた彼女たちはトラウマが少なからず癒された。この「法廷」は民間法廷であるから法的拘束力がなく、また未完の法廷である。これから日本政府、宮内庁、国連などに問題点を提出し、運動は続けられると語られた。

 私はこの「法廷」が開かれた歴史的意味は非常に大きいと思う。人間の良心に訴え、正義の実現に向かって地べたからの「声」を発した。S姉はこの「法廷」開催を通じて市民運動の目覚めを強く感じたと語っておられた。それこそが平和を実現する力である。