◇牧師室より◇

 小井沼國光宣教師が使徒言行録17章から、パウロの信仰と伝道について、マイクを手に持ち講壇を歩き回って説教された。

 パウロはアテネの哲学者たちに弁明を促されてアレオパゴスで説教した。学問を誇ったアテネには三千を越える偶像があり、「知られざる神」という祭壇もあった。パウロはこの「知られざる神」を「お知らせしましょう」と語り始めた。哲学者たちは理性を根拠にして合理性、自然法を尊重していた。その彼らへの神による「天地創造」信仰は受け入れられた。しかし、イエス・キリストの十字架、殊に「復活」の話はあざ笑われた。パウロの語る福音は哲学者たちには届かなかった。

 パウロの時代、ヘレニズム文明がグローバル化し、政治、経済、文化の一体化がローマ帝国の下で進行していた。それは、一見明るく華やかな印象を与えるが、実態は奴隷社会で、人々は苦難を負う生活を強いられていた。パウロの伝道は彼らに「連帯と共食」への招きであった。

 イエス・キリストはイスラエルの律法体系から落ちこぼれ、人間扱いされない人々を見出し、彼らを愛し共に生きられた。それは、律法体系の拒否であり、下に向かう生き方であった。パウロはこのイエス・キリストに倣い、グローバル化の進む暗黒の世界の中で、苦難を分ち合う信仰と伝道を走り抜いた。そして、それはキリストの再臨が今すぐ起こるという緊迫した終末信仰が支えた。

 今日、私たちも様々な不安と恐れがある。しかし、世界の中では圧倒的に豊かな社会に生きている。何かを捨てて風穴を開け、他の人と真に連帯することを模索すべきではないか。そのことによって、私たちは終わりの日にイエス・キリストの前に立つことができる。