◇牧師室より◇

 小井沼宣教師夫妻が一時帰国されたので「ブラジル宣教報告会」を持った。朝の礼拝で木田献一先生が説教をしてくださった。20世紀は軍事と経済による奪い合いの世紀であった。21世紀は「命」を尊ぶ世紀にならなければならない。その「命」は人間だけでなく、動物、植物の命を含んでいる。一方的な情報ではなく、聞こえてこない対極からの声を良く聞いて、世界は「命」を分かつ結び合ったものであることを知る必要がある。エゼキエルは「枯れた骨の復活」を見た。死人を生かす神の恵みにどのように与って復活していくのか。先生は淡々とではあるが、今語らなければならないと押し出されるように語られた。

 「報告会」はまず眞樹子師が、老人介護の奉仕活動の報告をされた。介護を求められて、更なるボランティアの募集をしている。生きることを喜び合う老人たちの楽しい会話を聞いて大笑いした。昨年の夏、S姉が介護の実習指導をされたが、それが驚くほどの速さで整えられて実行されている。また、路上生活者への支援と教育も続けられ、行政に認められるようになったという。眞樹子師の情熱と行動力に敬服する。

 國光師は、第二次世界大戦後から現代までのブラジルの歴史から話された。戦勝国として利益を得たが、軍政、民政と政権交代していく中で、大きな債務を抱え、グローバル化の波に翻弄されている。人は都市に集中し、汚職、失業、殺人、麻薬と混乱している。ブラジルはカトリック教国と言われている。そのカトリックも保守派から解放の神学まで多様で、最近は家族の団結を説く「カリスマ主義」が人気を集めている。プロテスタントも伝統的な教会があり、最近は繁栄を良しとする伝道熱心なペンテコステ派が急成長している。それぞれの宗教が人々に癒しと希望を与えようと多様な活動を展開している。ブラジルの殺人事件と日本の自殺者の数は同じくらいである。日本は自己憎悪が強いのに対し、ブラジルはエロスを含めた「愛」に生きている社会である。聖書時代と共時性を持つ混乱した部分と明るく開放的なブラジルの二面性を語られた。