◇牧師室より◇

「家庭内暴力」という言葉を聞いて久しい。「ドメスティック・バイオレンス」と言われる夫や恋人からの女性たちへの暴力は、もちろん以前からあった。その被害者をかくまうシェルターは全国にできている。かつては、シェルターの利用者はアジアから性産業につかせられた女性が多かったそうだが、この頃はドメスティック・バイオレンスの被害者が多くなっていると聞く。男性たちの苛立ちが昂じているということであろうか。

最近、考えられないほどの痛ましい「幼児・児童虐待」の悲劇がしばしば報道される。この虐待は世代を超えて繰り返されると言われている。実態は、虐待の連鎖を断ち切れない人は2割くらいらしい。それでも、虐待を受けた人は皆、結婚と出産に恐怖を感じている。この件に関し、新聞の投書を読んで感激した。女性投書者は被虐待経験を持ち、幸せな家庭は築けない、子供なんて産みたくないと思っていた。20代に恋人ができ、思い切ってつらい子供時代を打ち明けた。彼は一言「つらかったね」と言った。その一言で、一気に過去の記憶から解放されたという。今は子供に恵まれ暴力をふるうことは全くない。彼女は最後に次のように書いている。「私は暴力を受けた子供のつらさ、悲しみを知っている。私を受け入れてくれる夫がいることで愛することを知り、子供たちを心から愛しているから。」 親からもらえなかった愛を恋人から受けて癒された喜びを伝えている。

聖書にはイエス・キリストの一言で癒され解放された人が多く記されている。愛されているという実感が生み出す奇跡である。この奇跡は、投書者のように今も私たちの間で起こっている。