ナメトコ山
2002年5月28日(火)晴れ
幕舘橋から眺めたナメトコ山、登山口はナメトコ山の写真向って左側の裏側にあり左側の尾根の中腹に出て尾根伝いに山頂に向う
所在地  岩手県花巻市の西方
標 高   860m 
 童話作家で知られる宮沢賢治の作品の中に「なめとこ山の熊」と言う童話がある。
「なめとこ山の熊のことならおもしろい。なめとこ山は大きな山だ。淵沢川はなめとこ山から出て来る。なめとこ山は一年のうち大ていの日はつめたい霧か雲かを吸ったり吐いたりしている。まわりもみんな青黒いなまこや海坊主のような山だ。山のなかごろに大きな洞穴ががらんとあいている。そこから淵沢川がいきなり三百尺ぐらいの滝になってひのきやいたやのしげみの中をごうと落ちて来る」と言う書き出しで始まる童話である。

 作品の舞台なったなめとこ山はいったい何処の山のことなのか賢治作品の研究者の中で色々な説があったようだが所在地を特定させる古文書が発見されて実在する山の名前で有る事が確定されたと言う。宮沢賢治生誕100年に当たる平成8年に記念行事の一つとして国土地理院の二万五千分の一の地図に「ナメトコ山」の山名が印刷された地図が発行されている。以後は五万分の一の地図にも山名が印刷されるようになった。
 地図を見れば山の位置は解るのだが登山道は記入されてはいないので一般には登る事が出来ないと思われていたがどうやら登山道が有るらしい。どんな山なのか登ってみる事にした。
豊沢川に架かる幕舘橋の中央の欄干に設置されているナメトコ山案内板
 花巻市内から県道12号を花巻南温泉郷(大沢温泉、志戸平温泉、松倉温泉、渡り温泉、高倉山温泉、鉛温泉、新鉛温泉、山の神温泉をまとめて「花巻南温泉峡」と称しています)
へと向う。
8:42分  新鉛温泉を通過
 新鉛温泉を過ぎると間もなく豊沢ダムに着く。ダムの堤体の上を横切るとダム湖を左に見ながらのアップダウンのある道になる。
8:52分  県道12号と県道234号の分岐着
 ダム湖に流れ込む豊沢川に掛る幕舘橋に着いた。橋を渡ると直ぐ県道12号と234号の交差点がある。行くときは気付かなかったが幕舘橋の中央からはナメトコ山の全体が見渡せるのだった。そして欄干には透明なプラスチックの板にナメトコ山の位置が描かれていて一目でナメトコ山が特定できるようになっていた。県道交差点から右に入り豊沢川に沿って続いている県道234号を雫石町に向って進んでいく。道幅は狭いが舗装されているので沢内村や秋田県の田沢湖町方面に向かう時は良く使う道だ、秋の紅葉も美しい。
9:00分  林道入り口着
 県道交差点から3、6km進むと豊沢川の支流の西ノ股沢に沿って左に入る林道が有る。これが登山口に通じる林道だ。砂利道だが路盤はしっかりしている。しかし路肩の雑草やノバラ、雑木、ササなどが林道にはみ出していて車をこすっている。これから夏になるとますます伸びて車に傷が付くこと間違い無しだろう。道幅も狭く1台通るのがやっとの状態、待避所も少ないので注意が必要だ。
県道234号から左に分かれて林道に入って行く
この標識の場所が登山口、沢に向って右側に登山道が有る
9:11分  登山口着
 林道に入って2、2km進むと左カーブの右側に新しい標識が立っている「至、中ノ叉林道 北ノ叉林道 至」と言う標識だ。一本道の林道にこの標識はどんな意味があるのだろう?付近に廃道が有るのかと探してみる。(地図を良く見るとここから右に林道が400mほど伸びている、それが「北の叉林道」らしい)
 林道はまだ先に続いているがこの先は落石も多くだいぶ荒れている、そしてこの標識の場所が登山口になる。林道の右手から左の西ノ股沢に向って沢が流れ下っている、この沢に向って右側に新しい踏み跡が着いていた。これがナメトコ山への登山道らしい、ナメトコ山の登山道を連想させる標識は全く無い、そしてナメトコ山の本体も県道234号に入ってからはよく見えないので現在の位置関係は地図上で想像するしかない。
 駐車場は無い、林道の路肩に止める事になるのでせいぜい1〜2台が限度だと思う、200m手前には空き地があるのでそちらに止めて歩いたとしても数分余分に掛るだけだろう。
9:32分  登山口出発
 身支度をして出発する。陽射しが強くて暑い、沢の水音が谷間に響いている。登山道に入ってみるとつい最近グループで入り込んだらしく雑草が踏み込まれている。予想よりもしっかりした道だ。左脇を流れる沢の一段高みを歩いて行く。
9:42分  沢の中の道になった。
 沢の右へ左へとゴロゴロした岩を渡り歩きながら登っていく、木の枝に所々赤いテープがくくり付けて有るのでルートが解る、間違いなくナメトコ山の登山道だ。沢の脇の斜面には花が咲いていて眺めながら進む。
登山道が沢の中に入ると目印のテープが有った
沢の湿地帯に咲いていた花
9:53分  沢を抜ける
 沢の水量が幾分少なくなって沢が狭くなってきた。沢の上流に向って右側の急斜面に登山道が伸びている。ここからいよいよナメトコ山の本体に取り付く事になる、鼻先が地面につくような急斜面だ。雑木林のなかに細い道が続いている赤テープが短い間隔で取り付けてあるので迷う事は無い。次第に対岸の山腹が見えてくるが展望は良くない。
10:10分  尾根に出る
 ナメトコ山山頂から南に伸びる尾根に出た。此の辺からはササが繁っているが綺麗に刈り払ってある、そして南東の方向が開けて豊沢ダムの湖面が見えている。周囲の山も見えるが山名が解らない。山頂に向っての道は幾分勾配が緩くなる、そして尾根の上だけにブナ林が山頂に向って続いている。ブナ林を通って吹き込んで来る風が気持ち良い、だが展望が良くないのが残念だ。
ナメトコ山山頂、思ったよりも広かった
山頂付近から塚瀬森方面の展望
10:20分  ナメトコ山山頂着
 山頂の細いブナの幹に「なめとこ山」と書いた板切れがくくり付けてあった。誰かが手作りで作ったものだろう。山頂はなだらかで結構広い、20〜30人ぐらいは腰掛けられそうだ。一面若いブナの林が続いている。だが残念な事に展望が殆ど利かない、わずかに西側が沢内村方面の山並みが見えるだけ、林を通して南東方面に山影が透けてみえるだけだ。

 童話の「なめとこ山の熊」にはこのあたりには熊がゴロゴロ住んでいて熊捕りの名人の淵沢小十郎ががそれを片っぱしから捕ったとある。この山頂にも何度となく登って来た事だろう、そして月光の下でのあの小熊と母熊の会話する姿を見たのはどの山のどの辺りだろう?などと考えると賢治がより身近な人物に思えてくる。

下山後は鉛温泉「藤三旅館」で汗を流してみることにした。日帰り入浴500円(税込み)だった。
レトロな雰囲気の木造の温泉宿で湯船に浸かっていると気分が落ちついてくる、豊沢川を眺めながら、瀬音を聞きながら疲れを取って帰路についた。
登山口→21分→沢からナメトコ山本体へ→17分→尾根に出る→10分→山頂

登山口→48分→山頂
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