品質管理部対空課修繕係第三班
集合がかかった。あたしは急いで点呼の列に並ぶ。
「揃いました」
「では出発します」
リーダが班長に告げ、班長は全員を促した。
「新米、遅れるなよ」
「…っ、はい!」
背嚢を背負い直し、キャスター付きのトランクを引き摺って格納庫へ走る。背嚢のベルトに取り付けられたバケツ同士が当たって喧しい。
格納庫では既にエアトラックが待っていた。着いた順から荷台に乗り込んでいく。あっという間にトランクを奪われ、背嚢ごと放り込まれた。勢い余って転ぶ。
止まらないうちにトラックは発進して、あたしは更に転がった。
品質管理部対空課修繕係第三班、それがあたしの所属。ペーペーで、先輩について習ってる最中で、仕事らしい仕事と言えば雑用。出動するのは2度目。夜勤はまだ。
世界は常に動いている。空だろうが大地だろうが海だろうが。動けば負荷で破れるのが道理だ。
それらを繕うのがあたし達の仕事。
誰にも気づかれないうちに。
「座標地点、y35、x256、z75、到着」
「総員、作業準備」
雲に擬態したトラックから、班員達が次々と降りていく。足場拵えのチームが先頭。彼らの作業が完了しなければ実作業が始められないからだ。
熟練の職人達は手早く裂け目を埋めていく。
あたしは邪魔にならないよう後ろで、糸を足したり、ナイフを渡したり、使い終えた道具を片したりする。
「注意! 角度30、方位12時より風!」
観測員の報告に、作業場に盾が張られる。
風は、世界が動く事により生まれる。発生から時が経てば経つほど速さと鋭さを増す。
やり過ごそうと作業は一時中断だ。
飛ばされてしまわないように道具を抱え込む。
「新米、もっと中に入れ」
「は」
い。
……ぁ
奇妙な浮遊感。
足場に付いていた筈の足が。
「新米っ!」
無意識に伸ばした手。
視界の端を掠める、
指先が絡む。
抱えていた道具が風に持って行かれた。
ガラクタのように消えていく一瞬の様を、ただ茫と見つめていた。
(05/12/19)