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『Tidus's Zanarkand - Final Fantasy X -』





 夜を迎えてなお活気に満ち溢れている都市。派手なネオン。熄まない狂騒。鳴り響く音楽。
 眠らない街、ザナルカンド。
 繁華街から少し外れたハーバー。そこに係留している船にティーダは住んでいた。親兄弟はいない。一人暮らし。ブリッツボールチーム、ザナルカンド・エイブスの選手だ。
 今夜はジェクト記念トーナメントの決勝だった。





 出かけようと自宅を出ると、たちまちファンに囲まれた。
「今夜の試合は、大切にしてね」
「今夜こそ、あのシュート見せてくれるんでしょう!」
「サインして。サイン!」
 サインを求められ、気軽に応じる。オフィシャル・ボールに手馴れた様子でサインを書いていく。
「去年のデビューからずっと応援してます!」
「これからもよろしくな」
 可愛い女の子たちに声援を貰って、にこやかに応える。
「試合、頑張って!」
「まかせとけって! じゃあさ、今夜シュート決めたら、あー、こうすっから」
 ガッツポーズをしてみせる。
「それ、2人へのメッセージっつーことで! 席どこ?」
「東ブロックです。最前列! あたし、右から5番目ね」
「了解ッス。じゃ、そろそろ行くわ。応援よろしくな!」
 小さな男の子たちがボールを持って一斉に叫ぶ。
「ブリッツボール教えて!」
「これから試合だって」
 これには苦笑気味のティーダだ。
「じゃ、終わってから!」
「今夜は……えっと……」
「今夜は駄目だよ」
「だろ! 明日明日!」
 誰かが言ってくれたのをさいわいに、上手く逃げられた。
「ぜったいだよー」
「約束ッス!」
 ティーダの為に、男の子たちは勝利のおまじないをするのだった。





 スタジアムへ続くフリーウェイの側に、巨大なビルが幾つもそびえ立つ。
 屋上から滝のように水が落ちる。
 ティーダは、ひとつのビルを忌々しそうに見上げた。
 ビルの壁面に取り付けられたヴィジョンに映されているのは、ひとりの男。名前をジェクト。ブリッツボールの有名な選手だった、ティーダの父だ。十年前に死んだ。海で練習中に行方不明になった。
 鼻で笑って通り過ぎる。
 ジェクトを、ティーダは嫌いだった。





 入り口の両側に巨大な二体の彫像。
 正面のモニタには今夜のカード、東C地区のエイブスと、南D地区のダグルスのチームマークが表示されている。
 ブリッツボールスタジアム。
 海に張り出したこの施設に、注目の対戦を見逃すまいという人々がザナルカンド中から続々と集まってくる。幅の広い入り口が、そうと感じさせないほど混み合っている。現れたティーダを見つけ、押し寄せてくる。
「はいはい、通して通して! 遅れちゃうって! ――ひっぱんなって!」
 強引に人込みを掻き分け、ティーダはスタジアムに入った。





 ひとりティーダは座り、背後に頭をもたれさせ瞳を閉ざしていた。プールを囲む、水の満たされた円形の細い通路。ウォームアップは終わった。試合開始時間はまもなく。間の僅かな時。鼓動に鼓膜が震える。切れる寸前の張り詰めた糸の上に立っているような、危うくて――心地良い瞬間。
 青い双眸が見開かれる。
 同時に会場のすべてのライトが灯される。
 痛いほどの明かりに、一瞬目が眩む。
 ボールを片手に立ち上がると、大歓声が沸き起こった。
 周りを観客席に囲まれた何もない中心部で光が弾ける。吹きつける凶暴なまでの圧力に目を細める。
 十字に組み合わされた二重の輪が、それぞれに回転を始める。
 水の玉が二重輪の中心に現れ、球形に膨れ上がる――形成されるブリッツプール。
 今夜の戦場。
 さらにスタジアムが熱を帯びる。





 同時刻。
 海の彼方が異様に盛り上がった。津波の如く凄まじいスピードで街に接近する。
 濃青の膜を纏って、内部で『何か』が蠢いた。
『それ』を泰然と見つめる隻眼の男がいた。スタジアムの全景を望める高層ビルの屋上。強風に煽られて着衣の裾がはためく。今夜は風がいつにも増して強い。すべてを押し流す、滅びの風。
 男は酒瓶を捧げる。
 歓迎する為に。
 この街へ。
 ようこそ。
 そして、再会に。
 祝杯を。
 傾けてもいないのに、雫が、見えない何かに掬われるように瓶の口から浮かぶ。





 ティーダは食いついてくるディフェンダーを振り解けず、視界の隅にとらえた味方へパスを出す。苦し紛れのそれは、いとも容易く敵方へ渡ってしまった。黄色いユニフォームが追う。
 ブリッツボールは水中格闘技とも言え、見た目の鮮やかな泳ぎや動きのスピーディさとは裏腹に、そのプレイスタイルは文字通り全身でぶつかり合う激しいものだ。その中でもダグルスは荒っぽいので有名だった。
 執拗なタックルを振りほどき、ティーダは敵ディフェンダーをプールの外へ弾き飛ばす。
 瞬時に塞がれる水の穴の向こうで、ティーダは腕を組んでにやりと笑む。
 この程度のパフォーマンスはお手のものだ。十七歳で、体はまだまだ成長途中で不利だ。だが逆に相手の油断を誘える。これまでの実績からマークはきついが、小柄な分、素早さを活かせる。隙を突いて攻撃に転じれば効果は大きい。もちろん日々の鍛錬も欠かしていない。スピードを生むのはしなやかな筋力があってこそだ。
 味方が、パスをインターセプト。そのままゴールへ叩き込んだ。今夜の先制点はエイブス。
 ボールがフィールド中央に戻され、試合再開。絶対にパスを通してくれるとミッドフィルダーを信じて、ティーダは水を蹴って前線へ出る。
 フォワードの仕事は点を取ること。
 パススロー。
 来た。キャッチしながら一回転。
 ボールを高く投げ、跳躍。
 誰も止められない、ティーダの必殺シュートだ。これで去年のルーキーが今年はエースになった。ボールを追いかけ、跳んだ勢いのままにブリッツプールから外へ。背を逸らし、片足を振り上げる。オーバーヘッド。夜の海と空が見えた。
 そして。
 ある筈のない物体が逆さまの視界に入る。
 眼前に迫る――巨大な水の塊。
 津波ではない。
 その塊から光弾が発射された。まっすぐにこちらに向かって。
「え?」
 滞空するティーダの目が見開かれる。





 高層ビルを降りた男は、迷わずスタジアムへ向かっていた。
 試合はもう始まっている。
 観に行くことはなくても、あの子の出るゲームは把握していた。
 開始時間に間に合わなかったサポーターたちが大急ぎで横を駆けていく。今から急げば、後半には間に合うだろう。
 背後に水塊がせり上がる。
 男は悠々と歩き――水溜りに踏み込んで跳ねた雫が、落ちずにふわりと後方に流れる。





 次々と放たれる攻撃で、街のあちこちから火の手が上がる。
 平和な狂乱は喪われた。
 炎に包まれる街。
 さながら燎原の火の如く。
 紺青の空が朱に灼かれる。





 迫り来る塊に引き寄せられ、建物が次々と歪む。
 穏やかな風に翻る筈の旗が千切られ、その旗を提げていた柱も粉砕し――飲み込まれる。





 傍を掠めた光弾の余波に煽られ、ティーダは吹き飛ばされた。
 めちゃくちゃに振り回した手が、ブリッツプールを支える輪の上辺部分に引っかかる。革のグローブが擦れて音を立てる。片手でぶら下がる体が左右に激しく揺さぶられる。爪先に、何も支えになるものを見つけられない焦りが、たとえようもなく不安。
 革が滑った。
 落ちる。
 信じられない速さで手が離れていった。
「うぁっ――!」
 自分の叫ぶ声が、やけに遠く聞こえた。





 目を開けた最初に、何かの破片が見えた。眉をひそめる。うつ伏せた頬に当たる硬質な感触。
 プールに落ちた記憶はある。生きているということは、水がクッションになったのだろう。顔を上げると、壁面が視界に迫った。何処かの隙間に埋もれるように倒れているらしい。
 重い体を起こし、壁に手をついて支える。耳鳴りがする。体中が軋むように痛む。どうやら打撲だけで、骨が折れたりなどはなさそうだ。怪我をしたら試合には出られない。
 試合、で、はっと気づいた。そうだ、試合はどうなったのだろう。こんな騒ぎがあったのでは、ゲーム続行は不可能かもしれない――
 指に触れた、壁に走った深い亀裂に息を呑んだ。ひび割れの先を辿っていくと、幾筋も枝分かれして壁一面を覆っている。
 見回した周囲にさらに愕然とする。無残に破壊されていた。何処に何があったのか、記憶を探ってやっと解るくらいに。呆気ないくらい綺麗な星空が見えた。と言うことは、屋根がない。
 どうしようもなく体が震えた。
 チームのみんなや、観客は。ダグルスは。
 ――落ち着け。
 苦しい。ゆっくりと息を吐き出す。
 人のざわめきが聞こえた。
 ふらつく足で瓦礫の隙間から出ると、逃げていく――それとも逃げ遅れた、だろうか――人々がいた。自分の他にも動いている人間を見て、少し、安堵する。
 彼らに混じって外へ向かう。建物の崩落は止まっていない。早く出なければ。スタジアムに、あるいは外で何が起こったのか、何が起きているのか知りたい。散らばる瓦礫に足を取られ、何度も転びそうになった。
 建物から出てまもなく、やはりめちゃくちゃになった入り口前の広場に、見覚えのある後ろ姿があった。逃げもせず、静かに佇んでいる。その落ち着きように、安堵するより腹が立った。緩やかに下る通路を、もどかしげに駆け下りる。
「アーロン! 何ボサっとしてんだよ!」
 叫ぶ。
 アーロンと呼ばれた隻眼の男はゆっくりと振り向いた。前開きの上着を幅広のベルトで止めている。ザナルカンドでは珍しい古風な服装だ。相変わらず、片手を袖から引き抜いたスタイル。
「おまえを待っていた」
「またワケ解んないことを……」
 かまわずにアーロンはフリーウェイのほうへ歩いていってしまう。
 いつもこんなふうだ。
 幼い頃から知っているが、ティーダには今ひとつアーロンの考えていることが解らない。





 フリーウェイは逃げ惑う人々でいっぱいだった。
 ほんの少し前までブリッツのサポーターであふれていたのに。
 後をついてくるティーダなどかまわないかのようにアーロンは先へ進む。
 叫び声の飛び交う中、その声はいやにはっきりと耳に届いた。
「始まるよ」
「あ?」
 振り返ると、フードを目深に被った少年が背後に立っていた。確か今夜、家を出るときにいたファンの中で見かけた子供だ。ブリッツボールを教えてくれと少年たちにせがまれて困ったティーダを助けてくれた。彼に歩み寄ろうとする。
 眩暈がしたのかと思った。
 景色が水の膜を通して見たかのように、滲む。見慣れない色彩が視界を上塗りする。人々の動きが止まっていた。悲鳴も怒号も聞こえない。瞬きをしても元に戻らない。
「泣かないで」
「――あ?」
 何が、と尋ねようとして、『何か』――が接近する気配に建物の向こうを仰ぎ見る。が、何もない。
 気のせいだったのかと視線を戻すと、今度はフードの少年もいなくなっている。
 周囲も何事もなかったように騒擾に包まれている。
「……なんだ?」
 アーロンのことを思い出し、慌てて駆け出す。





 赤い背中にようやく追いついた。
「なあ、こっちヤバいって!」
 ブリッツの選手として日頃から鍛えているティーダだったが、走りっぱなしでいい加減に息が切れた。
 反対に、アーロンは平然と前方を見つめている。
「見ろ」
「ああ?」
 アーロンの視線の先に、巨大な水の球体が浮いていた。――プールで見たあの塊。幻でも夢でもない。思わず数歩あとじさる。
 水の巨塊の中心に何かいた。纏う膜を透かして、蠢く影が見える。
「俺たちは『シン』と呼んでいた」
「『シン』?」
 聞き慣れない言葉に怪訝そうに訊き返す。
 高層ビルに突き刺さっていた影が、不意に尾のようなものを振るわせた。何かが剥がれる。意志を持っているかのように、フリーウェイに次々と落下する。アスファルトに鈍い音とともに突き刺さった。
 硬く閉じた蕾のような物体。身震いし、一瞬のうちに別の何かに変わる。触手か触覚のようなものを動かしている。生き物、なのだろうか。
 ティーダは間近の『それ』を手で払おうとするが、威嚇されて退がる。足をもつれさせ、たたらを踏む。
「使え」
 渡されたのは一振りの剣。反射的に受け取ってしまった。慣れない重さによろける。
「ジェクトの土産だ」
「親父の?!」
 振り返って叫んだティーダに、生き物が威嚇の声を上げた。脅かされたと思ったのか。闇雲に剣を振るって払う。逆に剣に振り回されて、尻餅をついた。
「使い方は実戦でな」
「え?!」
 体で覚えろと言われ、ティーダは途惑う。アーロンと手の中の剣を見比べた。
 アーロンが大剣を携えているのは知っている。だが何故ジェクトから剣を貰わなければならないのだ。
 父ジェクトはブリッツボールの選手で、失踪してから十年が経った今でも人々から忘れ去られていない。父の放ったシュートを息子にも期待し、ジェクトの名を冠したトーナメントまで始まった。
 第一、どうして戦わねばならないのか――戦わされるのか。
 目の前には不気味に蠢く生き物が何体も立ち塞がっている。生き物、などと生易しい言葉では語れない。魔物だ。滅多にザナルカンドでは見られないが、ニュースで見たことのある魔物とは違うようだった。新種だろうか。
「雑魚にかまう時間はない。突破するぞ」
 素早い動きでアーロンは、一撃で一体を斬り捨てた。
 横の方から飛びかかってきた。ティーダは夢中で剣を振り回す。重い手応えがあって、すぐ足元に落ちた。真っ二つに斬られ、汚物のような体液を撒き散らしながら暴れる。思ったより弱い。何とかなりそうな感じだが、背中を嫌な汗が伝う。もし、斬れなかったら、のた打ち回ることになるのは自分だ。
「すべて倒そうと思うな。邪魔な奴だけ斬り捨てて走れ!」
 吐き気がする。
 倒しても倒してもキリがない。
 ――フリーウェイに衝撃。
 顔を上げると、正面、フリーウェイのど真ん中に別の魔物が刺さっている。大きい。たった今斬っていた魔物とは比べ物にならない。死んでいない証拠に、上部に何本も生えた触手が蠢いている。刺さっている根元付近にも小さな魔物がうようよしている。
「好き勝手暴れやがって!」
「まとめて片付けてやろう」
 アーロンが前へ出た。
 大剣を構え、独特の呼吸法で気を整える。体中の末端から中心へ。練られた気はさらに腕を介して剣へ。
 咆哮とともに、剣を地に突き立てる。
 地面を伝った気は、魔物どもを内部から破壊した。





 自宅からスタジアムまでの通い慣れたフリーウェイはすっかり様変わりして、アスファルトは波打ち、亀裂が走り、ともすれば足を取られる。
「笑ってんじゃねぇよ、クソ親父」
 傍に建つビルは無傷のままだ。大画面でジェクトが笑んでいる。
「アーロン! 逃げたほうがいいって!」
「迎えが来ている」
「はあ? ――つきあってらんねぇっての!」
 このフリーウェイは一本道だ。分岐はまだ先。戻るか進むか――否、毒づいても、追いかけるしかない。
 魔物も減る気配がない。前後に突き刺さり、抜け道を失う。
「ふん、手に負えんな。おい、あいつを落とすぞ」
 と、アーロンは傍らに転がっているオイルタンクを指差す。
「なんで?!」
「面白いものを見せてやる」
 魔物を無視して、アーロンはオイルタンクを繋いでいる鎖に剣の峰を叩きつける。
 仕方なくティーダもぶっ叩いたがなかなか切れない。
 何回目かにようやく千切れた。支えを失ったオイルタンクはフリーウェイから落下する。地面に激突して大爆発を起こした。魔物は黒鉛をまとわりつかせた炎に焼かれ、爆風にふっ飛ばされる。
 オイルタンクが落ちたのは、ジェクトの映ったヴィジョンの付いたビルの前だった。爆発を喰らって崩れ始める。
「行け!」
 落下物に潰されそうになり、ティーダは慌てて地を蹴る。フリーウェイを塞ぐように倒れたビルの壁面を走り抜ける。ガラスが割れ、亀裂から次々と炎が噴き出す。





 膨れ上がった水塊が何でも吸い込んでいこうとする。剥がれた壁材や建材が重力を無視して上昇していく。破片だけでなく、まだ無事な建物すらも脆く歪み、崩れ、吸い込まれていく。
 分断されたフリーウェイの片側が、吸引に耐え切れずに端から持ち上がる。
 その所為でティーダは着地し損ねた。靴裏が地面を踏めずに滑る。縁に手が引っかかり、かろうじて墜落は免れる。プールでの恐怖が蘇った。
「アーロン! アーロン!」
 目の前に立つアーロンの隻眼が、一瞬だけ、サングラスの向こうから覗いた。優しげな――哀れみを帯びたまなざし。何を哀れむ? ――何を?
 だがティーダの助けを乞う声には応えず、アーロンは上空を振り仰いだ。
「いいんだな?」
 何もかも飲み込もうとする謎の物体に何やら問い掛けた。まとっていた水の膜が剥がれ、海から現れた怪異は茶とも黄ともつかない体色をした姿を現し、視界いっぱいに広がった。周囲は金色の光に満たされる。光源は――吸引口だ。そこを中心に輪が波状に幾筋も浮き出ている。不可思議な文字のように見える皺が波紋を飾る。
 縁に必死にしがみ付き、ティーダは自力でよじ登った。体半分這い上がったところで、アーロンにその胸倉を引っ掴まれる。アーロンの力だけでなく、謎の物体の吸引力で足が浮く。
「覚悟を決めろ」
 逆光を浴びて、アーロンの姿が蔭る。
 頭上に迫る謎の物体――『シン』。
 近づいているのはこちらか。
「他の誰でもない、お前の物語だ」
 意味が解らない。
 射るような眩しさに目を細める。息苦しさが、唯一の現実のように思えた。
 訊き返す間もなく、アーロンが縦に歪んで伸びた。飲み込まれていく。
 そして、ティーダも。





 視界が白に塗り潰され――。





『おい! おい!』
 彼方で燃え上がる炎。エイブスのチームマーク。
 誰かが呼んでいる。
『親父……?』
 ぼんやりと呟く。
 上空を漂っていた。眼下に崩壊した街。
 崩れ残って、ステージのように取り残されたフリーウェイに人影。仁王立ちで腕を組んでいる男。透けて、消える。代わりに今度は小さな人影が現れる。
 降りていく。向かい合うと、それは、幼い頃の自分。




『いろいろ考えてたのは覚えてる。俺、どうなるんだ、とか。ここどこだよ、とか。そのうち頭がボーッとしてきてさ、何だか眠くなって……夢を見た気がする。ひとりぼっちになる、夢』





 青い視界。埋もれた遺跡。





『誰でもいいから、そばにいて欲しい、そんな気にさせる夢……だった』









This story closed to here.The true story continues, in
Final Fantasy X



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