GWも過ぎ大阪近傍の山々の新緑も目に映えんばかりです。大峰山系の山は八剣山・弥山と稲村ケ岳には登っていますが、山と渓谷社のアルペンガイドで最も登高欲をそそる大普賢岳は登っていませんでした。登山口の和佐又口へのバスの便が悪く、和佐又ヒュッテに前泊を余儀なくされるからいささか億劫であったのです。尚私達は原則マイカー登山はいたしません。今回は登山時間を検討して、翌日早立ちをすれば更に宿泊をしなくともその日の最終バスに十分間に合うことを確かめて決行しました。5月12日・13日に実施し案ずるより易しで余裕を持って最終バスに乗れ、バラエテイに富む大普賢岳-->七曜岳-->無双洞のルートを楽しむことが出来ました。

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5月12日 晴

和佐又口へは大和上市駅で杉の湯行きのバスに乗り杉の湯で上桑原行きに乗り換える。上市駅発が9:55なので何時もの山行と違い長尾駅7:35の遅い電車に乗る。橿原神宮前駅から大和上市駅までは急行でも各駅停車なので思ったより時間を食い、余裕を見た積りであったがバスの時間にほぼ丁度の感じであった。

バスは定刻に出発したが、乗りこんだ客は、私達二人の他に登山者一人、一般利用者が一人であり、流量の余りない吉野川沿いをのんびりと走る。木曾の寝覚めの床を思わす宮滝を過ぎると建設中の大滝ダムサイトが目につく。吉野川の対岸の山肌のかなり高い部分に予想水面を思わす伐採線が見える。柏木は国道を離れた旧道沿いにあり、バスは迂回してこの集落を過ぎる。大峰山奥駈道の登山口の一つらしくいわれのある集落であることを感じさせるが、同時にわびしさも感じさせる。長い新伯母峰トンネルを出ると直ぐに和佐又口のバス停である。予定より15分ほど早く着いた。

姥峰地蔵尊にいくばくかのお賽銭を上げ登山の安全を期して、11:20に和佐又ヒュッテを目指して林道を歩き出す。ものの50m程登ると右の山腹に和佐又展望道入り口、和佐又ヒュッテまで約2時間の道標があるのが目につく。前もって読んだガイドブックによれば、こんなに早く林道を離れるようになっていなかったが、舗装の林道をだらだらと歩かされるのは嫌なのでこの道に入り込む。

いきなりかなりの急登でしかも階段の道である。しかしシャクナケが咲いていて木陰の道なので文句も出ずに登り続ける。間もなく山の中腹を巻く傾斜の緩やかな山道になる。途中に崩壊しているところが2箇所あったが慎重に横切る。最初に緊張を強いられた場所であった。機嫌よく歩いていると立派な休憩所があるではありませんか。まだ元気もありこれはパスして歩きつづけると、和佐又谷の対岸に和佐又ヒュッテの屋根が見えだす。やれやれこの先で和佐又谷を渡ればヒュッテ到着とばかりと思い、昼食はヒュッテ前で取ろうと更に歩く。もう一つ小さな休憩所があり、先発したバスで乗り合わせた青年が昼食を取っていた。

この休憩所をやり過ごして歩き続けて約2時間、そろそろヒュッテに到着してもよいはずと疑問を感じ始めた頃石灰岩の岩塊のゴロゴロした悪路に直面する。改めて地図を見たがどうやらこのルートは和佐又谷の源流を巻いてかなり大回りしてヒュッテに向かっているようで、ひょっとすると日本岳のコルまで歩かされるのではないかと思い、場合によっては引き返すことも考えている矢先に先ほどの青年が追いついてきた。彼の説明によるとこのコースは近鉄の旅しるべに出ている和佐又山登山コースとのことであった。このまま歩けばヒュッテおよび和佐又山に到着するとの話で一安心し、ここで遅い昼食を取ることにした。13:00を少々過ぎていた。

この後は再び良く整備された道でブナ林、バイケイソウの心地よいルートである。谷側の熊笹が風もないのにがさがさと音を発している。多少不気味な感じではあるが恐らく小動物であろうか。きれいなヤマシャクヤクが数カ所で見られて感激ものであった。以前に打見山の山頂付近で一本だけ見た記憶がある。良い気分で歩き続けると思いがけずに前方が抜けて石碑が並び立つ広場に到着する。時に13:58であった。やはり日本岳のコルまで歩くことはなかったのである。

この広場はヒュッテの上にあり、ここから和佐又のコルを経て和佐又山または大普賢岳に至る。車はここまで入れるらしく4駆が駐車していた。本日は和佐又山を登っておこうと右の登山道に入る。ぼつぼつ登っていると山渓の「大峰・台高を歩く」の大普賢岳のコース・メモでお顔を拝見していた岩本さんに偶然にお会いする。山菜採りをされていたらしい。コースのアドバイスを受け14:25に和佐又山の頂上に到着する。木が邪魔をして山望は期待していた程ではない。でも大普賢岳・小普賢岳・日本岳・弥山・八剣山・仏生ケ岳などが見える。大台ケ原も木の葉隠れに顔を覗かせる。明日はいよいよ大普賢岳から七曜岳までの縦走と尾根筋に目をこらすが、木立に遮られてうまく見通せない。その内に東側の大台ケ原の方から雷の音が聞こえてきた。未だ近くないと思いながらも山頂で雷音を聞くのは極めて不気味なので、早々にヒュッテを目指して下山をする。

15:03にヒュッテに到着しチェックインを済ませる。ヒュッテの玄関横に見事なコゴミがたくさん生えているのに気がついて奥さんに質問したところ、長野から株を移植したとのことで管理に注意して増やしたとのことであった。私は今まで関西の山でコゴミがあるか注意しているが、未だ自生しているのを見たことはない。やはり関西の山にはコゴミは見られないと言う。

風呂の用意ができたとのことで檜の浴槽の風呂場で一汗かいたのを流す。何と言う贅沢か。でも水洗便所とともに排水処理をどうしているのかがどうしても頭を去らない。

夕食は山菜づくしで、タラノメ・コゴミ・モミジガサ・ミツバなどの天麩羅、イタドリの煮物、ウドの酢の物、フキノトウの佃煮、イタドリのゼリー(これは美味)などで、その他岩本さんが説明して下さったが名前は覚え切れない。山菜づくしはめずらしいが蛋白質は海老・小キスの天麩羅、アマゴの甘露煮で正直やや不足気味。

明日は結構長丁場が予定されているので、8:00過ぎには就寝する。冬のスキーヤーも対象にしているので収容客数も多く、本日は誠にゆっくりと手足を伸ばせて快適である。勿論布団は一人当り一組である。

5月13日 晴

4:00に起床する。トイレ、洗面をしていると鶏が鳴き出しここでは目覚まし不用である。朝食は3:00過ぎから利用出来ると豪語するだけあって4:20頃にはあつあつのご飯・味噌汁が食べられた。

計画立案中にヒュッテに問い合わせたら通常6:00ヒュッテ発とのここであったが、これだけ早く朝食が用意できることを知り、出発を1時間早め5:00発とした。これで行動時間に1時間の余裕が出来た。何しろ午後一便きりののバスが和佐又口を15:27に発車するので、遅くても14:30にヒュッテに戻る必要がある。ヒュッテ-->大不賢岳-->七曜岳-->無双洞-->ヒュッテまでの標準歩行時間はガイドブックによって異なるが、例えば山渓の「大峰・台高を歩く」では8時間20分、昭文社の地図では6時間55分である。食事・休憩時間を1時間としても山渓の時間を参考にするとヒュッテ帰着は14:20になる。まずぎりぎりの予定である。どちらの標準時間を採用するのが妥当かは実際歩いて見ないと分からない。

気があせっていたのか、4:50の出発となった。ヘッドランプも必要なく和佐又のコルまでは前日歩いたので気楽なものである。そこから少し歩くと大普賢岳と無双洞の分岐に達する。ここまで14:00までに帰れればとちらっと思いつつ歩を進める。ブナの芽吹きが気持ち良い登山道をそれほどきつく感じずに登って行くとやがて伯母峰への道を右にわけて左の水平道に入る。薄暗くなった道を歩くとやがて指弾ノ窟の前を過ぎる。次いで朝日窟をやり過ごし程なく5:44に笙ノ窟に到着する。岩屋の中には不動明王がまつられ、右手の奥には天井からの岩清水を溜めた水場がある。ここでもお賽銭を上げて無事に登山が出来ることを祈り、冷たい水を頂く。10分休憩して出発し鷲ノ窟を過ぎて右手の山側に入り込むと本格的な鎖・梯子のルートになる。

かなり丁寧な鎖・梯子の設置であるから何の不安もなく登れて程なく日本岳(文殊岳)のコルである。ここで左を取りほぼ尾根伝いに大普賢岳を目指す。たくさんの梯子(数えたら大普賢岳の頂上までに30余り付けられていた)が掛けられ、危険なへつり個所には立派なメッシュ鋼板が掛けられていて、大分話が違って難しさは感じない。気がついたら小普賢岳のコルの遭難碑の前である。どうやら石の鼻は気がつかずに来てしまったようだ。後で岩本さんに確認したところ昨年大普賢岳へのルートを整備し直したとのことで、ひょっとしたら石の鼻は巻いてルートが付けられていたのかも知れない。相棒は遭難碑を読んでリーダーの責任に感じ入ったようである。

ここから大普賢岳の鞍部まではかなり急勾配の下りで慎重に降りる。再び鎖・梯子のご厄介になり登り詰めると奥駈道に合流する。ここから一登りで待望の大普賢岳の頂上である。時に9:01であり、笙のノ窟で10分の休憩をしたのでネットの歩行時間は2時間01分となり、ガイドブックの標準時間より大幅に時間短縮である。やはりルートの整備で歩行時間の短縮が実現されたようである。頂上からの展望は素晴らしく立ち木にやや妨害されるものの北・西・南にかけて山上ケ岳・稲村ケ岳・バリゴヤノ頭・弥山・八剣山・仏生岳・孔雀岳、東は大台ケ原が見渡せる。これから縦走をする弥勒岳・国見岳・七曜岳も間近く望める。弥山・八剣山と稲村ケ岳は既に登っているので相棒は山の名前を聞いて一層親しみを持って見ることが出来たようだ。頂上に18分滞留し十分にリフレッシュしていよいよ七曜岳まで奥駈道を縦走である。

結構急勾配の道を降りて進むが水太覗きは気がつかずに過ぎてしまい、ほとんど芽も出していないブナの疎林を気持ち良く歩いて弥勒岳も過ぎる。ここからサツマコロビとか内侍オトシとか呼ばれる鎖場が続く。トラバースと垂直の下りであるがトラバースは高度感もなく、心配していた程の難度ではない。間もなく稚児泊と称する平坦部に至りちょっと安心をする。厳しい奥駈道で落伍した修行者が宿泊でもしたのだろうか。

これからは気楽な縦走が楽しめ、国見岳の手前の開けた場所で大普賢岳から日本岳までの鋸状のアルペン的な眺望をデジカメに納める。ここで9分間の休憩である。国見岳の標識を確認出来たので間違いなく頂上は踏んでいる。

七曜岳の頂上手前にも梯子が掛けられていてこれを乗り越して8:56に無事頂上を踏む。八畳程の横長の岩場の頂きであった。キバナシャクナゲのつぼみが見られ、あとニ週間程で開花となろう。10分休憩で更に奥駈道を5分ほど降ると無双洞へは左の支尾根への道を取るようにとの天理大学WVの黄色の標識が目につく。ここで気がつかずに南下すると行者還岳に至ってしまう。間違いなく無双洞へのルートに入れ後は難所もないようなので気分は高揚してくる。

どんどん尾根筋を降るが広くなった尾根の左に曲がるあたりで登山道の踏み跡が不明瞭になりルートを外したようだ。白いテープを頼りに左の方角に進路を変えたところ階段のあるルートに復帰出来た。広くなった尾根の上部の白テープの位置で左に曲がってしまうべきであった。そうすれば難なく登山道を探すことが出来たと思う。後は瀬音が高くなる谷筋に降りるだけある。

10:20に無双洞下に到着する。無双洞は谷を更にさかのぼった位置にあるのだが、登山道の近くの滝と洞穴を見てこれが無双洞と早トチリしてしまった。ここで最後の休憩をして、相棒が大事に持ってきたグレープフルーツを食する。いつもこれで元気を取り戻すのだ。

10:41出発しいよいよ最後の難関底無井戸の鎖場に挑戦である。ニ箇所の涸沢を登るのだが、石灰岩の岩場で適当に手懸り足懸かりがあるので鎖は必要なく快適に高度が稼げる。もっとも降りにこのコースを使う場合は鎖は頼りになるはずである。底無井戸は二つ目の岩場の上部にあるが、トラロープで囲ってあったので君子危うきに近づかずで、底無井戸の左手を登り上手を越して難関を終える。

この後は朝通過した大普賢岳と無双洞の分岐を目指して水平道をひたすら歩く。途中で岩本新道と合流したのでもうじきに分岐に出るだろうと思ったが、なかなか到達できない。何度この山を巻いたら分岐に出ると思ったろう。やっと分岐点に到着して、ほぼ本日の山行は実質的に完了したと確信する。ヤレヤレ。

後は和佐又のコル、石碑の広場を経てヒュッテに戻るだけで、意気揚揚とヒュッテに到着した12:23であった。正味の歩行時間は6時間25分で、1時間10分早立ちをしたにしても、最遅で14:20の予定帰着時間に比較すると何と2時間近くの短縮であった。相棒は10回近くクモの糸を払ったとのことだから、すべて先頭を歩いたことになる。元気に歩けて短縮出来たと言うことより、前記の通り昨年大普賢岳へのルートの再整備が出来たことが大きな理由と考えている。岩本さんに「大峰・台高を歩く」の標準歩行時間は訂正の要ありと感想を述べたが、個人差がありますからとの返事であった。帰りのバスの時間の制約から余り標準歩行時間が長いと計画中にギブアップしてしまい、この岩場、谷、ブナ林、シャクナゲ、ヤマシャクヤクを始めと高山植物・山野草を楽しめる素晴らしいコースを知ることなく終わる登山者がいるかも知れないので、是非標準歩行時間の見直しを関係者にお願いしたい。

ヒュッテでゆっくりとコーヒーを飲み、林道経由で和佐又口のバス停に向かう。途中で日本岳と小普賢岳の間にピ−クを覗かせる大普賢岳の写真や新緑の山肌の先に聳える辻堂山の写真を撮りながら、本日の厳しかった山行の余韻を楽しみつつ下山した。

今回の山行で反省すべきはヒュッテへの帰着時間を気にする余り余裕がなくなり、石の鼻・水太覗・無双洞などに寄れなかったことである。それと近鉄の旅しるべの和佐又山登山コースの事前検討が出来ていなかったことであり、途中で要らぬ心配をしてしまったことである。

第01回山行記録バックナンバー(何故山好きに)(2000.09.14)
第02回山行記録バックナンバー(念願の劔岳に登る)(2000.10.15)
第03回山行記録バックナンバー(秋の白峰三山)(2000.12.30)
第04回山行記録バックナンバー(交野山 - 石仏の道)(2001.03.15)
第05回山行記録バックナンバー(懐かしの摩耶山)(2001.04.15)
第06回山行記録バックナンバー(早春の奥比叡縦走)(2001.04.30)
第07回山行記録バックナンバー(めずらしく九州の山 - 由布岳)(2001.05.15)
第08回山行記録バックナンバー(八淵ノ滝から武奈ケ岳)(20001.05.30)