薬剤アレルギー
ピリン系薬剤とは
ピリン系薬剤とは俗称で、ピラゾロン骨格を基本骨格とする解熱鎮痛薬のことである。
また類似した化学構造の誘導体にも交差耐性があり、広義にはピリン系薬剤の
範疇に入る。
ピリンアレルギーは解熱鎮痛薬のアミノピリンやスルピリンなど、
いわゆるピリン系薬剤の投与により薬疹を生じる。
薬局窓口で患者さんから「
私はピリンアレルギーです。」と言われることがあるが、
一般の人はアスピリン(アセチルサリチル酸)をピリン系薬剤と誤解していることが多い。
ピリンアレルギーであることを告げられた時には確認が必要である。
@ピラゾロン誘導体
1883年にKnorrが解熱薬キニーネの代用薬を研究中にアンチピリンを発見して
以来、アミノピリン、スルピリン、イソプロピルアンチピリンが合成された。
これらの薬物は解熱作用が強く抗炎症作用も有しているが、その反面、副作用と
して顆粒球減少症、薬物アレルギー反応、ショックなどが起る。
またアミノピリンは、食物中の亜硝酸と胃酸中で反応して発癌物質ジメチルニトロソアミン
を生じる恐れがある。
Aピラゾリジン誘導体
フェニルブタゾン、オキシフェニルブタゾン(フェニルブタゾンの代謝物)、
ケトフェニルブタゾン、フェプラゾン、スルフィンピラゾンなどがある。
解熱鎮痛作用は比較的弱いが、抗炎症作用、抗リウマチ作用および尿酸排泄
作用を有し、リウマチや痛風に用いられる。
主なピリン系薬剤
分類 側鎖 基本骨格 薬物名 主な医薬品
(配合薬も含む)







アンチピリン
antipyrine
アンチピリン
(各社)
ミグレニン散
(各社)

など
スルピリン
sulpyrine
スルピリン
(各社)
など
イソプロピル
アンチピリン
isopropylantipyrine
SG顆粒
(塩野義)、
クリアミンA錠
(日本ガレン)








R1 R2
スルフィンピラゾン
sulfinpyrazone
アンツーラン錠
(ノバルティス)
ピリン系アレルギーによる薬疹
ピリン系薬剤の投与により薬物アレルギー反応で薬疹を生じ、形態は固定薬疹が多い。
その他に蕁麻疹型、湿疹型、麻疹型、多形紅斑型、スティーブンス・ジョンソン症候群、
中毒性表皮壊死解離型などの薬疹を呈することもある。
固定薬疹は同一薬剤の摂取の度に、同じ部位に固定して同一症状を再発し、
その度に増悪する。
発疹は通常、硬貨大から手のひら大の境界明瞭な類円形の紅斑を生じ、ときに
浮腫性で紅斑上に水泡を形成し、発症時には疼痛や灼熱感がある。
原因薬剤の投与後数時間で発症し数日間で軽快するが、炎症消退後に
色素沈着が残る。
昔は固定薬疹の多くはピリン系薬剤、サルファ剤、バルビツール酸系薬剤が原因で、
固定薬疹をピリン疹と呼称することもあった。
しかしこれらの薬剤の使用減少とともに、原因薬剤も変遷し、最近ではメフェナム酸
やテトラサイクリンなどが原因の固定薬疹が増加している。
ピリン系薬剤の使用状況
1984年にフェニルブタゾン、オキシフェンブタゾンによる顆粒球減少症、消化管出血、
皮膚障害などの重篤な副作用が問題となり、死亡例も報告されたことから、適応が
限定された。
それを契機に厚生省は1986年、「
非ステロイド性消炎鎮痛薬の安全性の見直し」を行った。
その結果、アミノピリンは顆粒球減少症やニトロソ化の問題により、諸外国で
使用禁止になっていることを踏まえ、有用性が認められず使用禁止となり、
スルピリンは解熱も目的で注射剤・坐剤としての使用のみに限定された。
またケトフェニルブタゾンやフェプラゾンも適応が限定された。
現在、ピリン系薬剤のなかで比較的によく使用されているのは副作用の発現が少ない
イソプロピルアンチピリンであり、一般薬の総合感冒薬などにも配合されている。
※追記(梅津剛吉著:医薬品と処方と調剤より)
アスピリンはピリン系薬剤と誤解されていることが多い。
しかしアスピリンはアセチルサリチル酸のバイエル社の商品名で、物質起源に由来した
名称である。
aspirin=acetyl spiraeic+in(スピール酸 spiraeic acidとはサリチル酸のことで、
-inは化合物によく用いられる接尾語である。)
一方、ピリン系薬剤の母体であるアンチピリンの名前はその薬理作用に基づいて名付け
られている。
antipyrine=antipyretica(発熱)+inともにピリンという言葉が入っているが、化学的
には異なるものである。
ふくおか県薬会報 1995年9月