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▲総目次へ 6.コラム 春 信 |
茅輪(わ)くぐり
梅雨明けの日曜日はからりと晴れ、昭ちゃんは思わず大きく背伸びします。 東谷山(名古屋市内の最高地点)の上から眺める村々は、一面の青田が広がり、気持良かった。 「今日はぁ、ご苦労さんです。」 次々に登って来る人々で、山頂はにぎわいます。今日は、田植がすんで豊作祈願の総参りでした。遠くは長久手町や近郷近在の村々から集まった大勢の人達が、ここ尾張戸(おわりべ)の神様にお祈りして行きます。 どの顔も、あの田植の時に泥田をはい回った青白さが消え、ひとつことをなし終えた明るさを取りもどしていました。 帰り道、昭ちゃんは、あしびの小枝を折って持ち帰ります。 「これはなあぁ、夏病みをせんおまじないで、こうしとけば、危病神もよう入って来んわ」 お祖母(ばあ)ちゃんは、独り言をいいながら、あしびの小枝を、大戸口(おおとぐち)にさしました。 昼過ぎ、白い紙を切り抜いた「人形(ひとがた)」で、家中の人たちをさすってから、それを持った昭ちゃんは、氏神様へ出かけます。 拝殿脇の手おけの水面に、みんなが持ちこんだ「人形様」が、いっぱい浮いていました。奥まった神殿からおごそかな祝詞(のりと)の声が聞えます。子どもたちは広い境内や周辺の樹々の間をかけ回って遊んだ。 しばらくして、烏帽子姿の人が捧げるさかきでおはらいがあり、その 彌宜(ねぎ)さんを先頭に、長い行列が、茅(ち)わらでこしらえた草の輪をくぐつて、大きく8の字に回ると、神事は終りました。「昭ちゃん、お供え(おそなえ)もらったか?」 「うん。」 お参りをした人は、手に手にお供えの菓子をもらって帰ります。鎮守の杜(もり)から見おろす青田の遥か彼方に、おもちゃのように小さな汽車が、煙をはいていました。 ──「昭ちゃんの四季」(出川野 横着坊)より── |
◎ カ タ ル シ ス (Katharsis) 人の書いた作品を読んだときに、カッコいい内容とか、成功した話よりも、その人の失敗談やずっこけた体験の文章に共鳴を覚えるのは悪趣味なのだろうか? いや、必ずしもそうではない。人間は誰しも弱い一面を持っていて、他の人に自分と共通なものがあるのを知って、内心ホッとして共感するからではないだろうか。一種の精神のカタルシス、即ち情緒面の浄化作用によるものだと思う。 昨年亡くなったアメリカの有名な漫画家チャールズ・ツュルツさんが、こんな言葉を残している。 「読者は、必ずしも優秀でない主役に共鳴を覚えるようだ。私たちは勝つよりも負けることのほうをよく知っている。勝つのは偉大なことだが、おかしくはない。幸福な勝利者が一人いるのに対して、敗北者は100人もいて、おかしな話で自分をなぐさめるのだ」 自分史を書くわれわれもシュルツさんの言葉を肝に銘ずべきかもしれない。(信) ◎ オサマ・ビンラディン 「ニューヨークのシンボル的存在で毎朝眺められたWTC(世界貿易センター・ツインビル)はもうない」とニューヨーク市民は嘆いている。 WTCはテロ組織の攻撃を受け瞬時に崩壊してしまった。今も夜を徹して瓦礫の撤去作業が続き消防車が放水するたび白煙が上がる。 アメリカは国際テロ組織アルカイダの頭目、オサマ・ビンラディンを容疑者として、懸賞金を掛けて探しているが、国際テロ組織アルカイダはアフガニスタン・タリバン政権が、匿っているらしく掴まえることができない。 アメリカは、アルカイダの最高指導者オマル師に彼の身柄引き渡しを求めたが拒絶されてしまった。 爾来、アメリカはアフガニスタン空爆を続けている……。 オサマ・ビンラディンは、アフガニスタン東部トラボラ山岳地域の洞窟に潜んでいるらしい。アフガニスタン・タリバン政権はアメリカの空爆によって追い詰められ崩壊寸前である。アフガニスタン国民は難民化し逃げ惑っている。 世界の覇者である人は「何を考えているのであろうか……」 さて、パレスチナ問題が緊迫してきた。 12月の初め、パレスチナ過激派による連続テロ以来、報復を叫ぶイスラエルのパレスチナ攻撃。イスラエルはパレスチナ自治政府を「テロ支援国家」と呼んで、アラファト議長を非難している。 シャロン・イスラエル首相らにはパレスチナ和平への構想があるのだあろうか……。 辛巳(かのとみ)の年には途方もない変事が起きるといわれてきた。 1941年辛巳の年には、日本軍がアメリカ太平洋艦隊の根拠地ハワイ・真珠湾を空爆し、第二次世界戦争に発展した。 2001年辛巳の年は、テロ組織の頭目オサマ・ビンラディンがニューヨークのWTCを崩壊させた。今や、世界中の国々がテロ根絶に協力している……。 その辛巳の年2001年が去っていく。 (SEIJI) ◎ 続オサマ・ビンラデン
「ニューヨーク WTCビルが崩壊した。このテロ事件は2001年9月11日午前に起きた出来事である。」アメリカの世論では、テロの頭目オサマ・ビンラデンが仕掛けたと認識している。アフガニスタン・タリバン政権の支配下にある国際テロ組織アルカイダが彼を匿まっている情報を、アメリカは入手した。 アメリカはタリバン政権を通じてアルカイダの最高指導者オマル師に彼の身柄引き渡しを求めたが拒絶された。 アメリカは、かねてからアフガニスタンやイラクそして北朝鮮を悪の枢軸国と名指しで非難し嫌悪の念を抱いていたが、さらに嫌悪が増幅したようである。 アメリカはアフガニスタン空爆を敢行した。タリバン政権はアメリカの武力の前に瓦解してしまった。ところが、しかしである。懸賞金までつけ探索した肝心のオサマ・ビンラデンの行方はようとして不明である。 1948年5月にはイスラエル国家が建国された結果、中東は紛争の渦中となった。中東が世界の火薬庫とよばれる所以である。過去の歴史を振り返ってみても矛盾が矛盾を呼んでいる。 オサマ・ビンラデンが何国人であろうとイスラム教徒は彼を護っているようである。 「アラーの命令は至高なものである。われらはすべてのイスラム諸国からアメリカ人を追っ払うためジハード(聖戦)を行う。それは、われらの義務なのである。非イスラム教徒がわれらの国に駐留すべきではない。われらがいう正議に耳を傾けよ、もし、拒否すればアメリカは今の自由はやがて失うことになり、屈辱を味わうことを知るべきである」 オサマ・ビンラデンのこの言葉は「すべてのイスラム教徒とテロリストの願いを代弁している」と歓迎された。 イスラムは極端に非イスラムを排斥する。宗教の絡む感情は複雑な問題で尋常ではない。“不可解”の一言では解決しないようである。 イスラエル・パレスチナ紛争は終止符を打つことができたであろうか。 (SEIJI)
そう言えば大学生の学力低下が社会問題になりつつある。最近読んだ本の中に、ある新聞社の編集局で新入社員を集めて「わかりやすい文章を目指して」という内容で研修をしたとあったのには驚いた。 |