台湾の中国語・中国の中国語

1 陳健民『中国語言和中国社会』は面白い 

 私は仕事或いは超短期の観光旅行でしか中国へ行ったことがなく、台北滞在中のように心ゆくまで書店や図書館をぶらぶらした経験はありません。だから「大陸の本屋には面白い本が無い!」と言うつもりはありません。しかし残念ながら、いかんせん滞在期間が短いので、お気に入りの作家に出会うまでにはいたっていません。(ちなみに衛慧『上海ベイビー』は日本・台湾でもそれなりに話題になっていましたが、私はあまり興味がわきませんでした。上海の友人は「彼女の作品は非常に前衛的で上海女性の感覚を代表しているとは言い難い。」と言っていました。)辞書など工具書はとても安く、大喜びで購入するのですが・・・。このページを読んでくださった方で、今流行っていて、本当に面白い作家・作品をご存知の方がいらっしゃいましたらメールをください!心よりお待ちしております。

 自力で見つけた本の中で、面白くてすぐ読み終えられたのは、昨年夏、上海滞在中に福州路の書店で見つけた陳健民『中国語言和中国社会』です。この本は、中国語語彙の歴史的変遷や、大陸と港台の語彙の違いについて具体例をあげて解説しています。

 私の中国語は台湾に留学し、その後日本の語学学校で学んだため、中台の発音・語彙が入り乱れています。そんな私の中途半端な中国語を、中国朋友や台湾朋友は「小蘭の中国語は可愛い!」と笑って許してくれます(もちろん年相応の中国語を話せるよう努力しなければなりませんが)。しかし中国に留学し、日本で勉強を続けている同学は「台湾の語彙=方言・誤り」「北京の中国語=正統」と考え、私の中国語を受け入れてくれない感じがします。注音符号を用いて「六」「劉」「就」などの発音を解説したときに「それって台湾の訛りでしょ〜。」と言われた時は、とても悲しかったです。注音符号の方が歴史が古いのに・・・。私も自分の語学力に今ひとつ自信が無いので、戸惑うばかりでした。

 陳健民『中国語言和中国社会』は、港台の言葉を大陸の言葉と同等に扱っています。中国語を母語としている当人たちは両岸双方の言葉に対して優劣をつけたり排斥していないのに、彼らよりも自由に中国語を学べるはずの日本人が、なぜこれほどまでに北京にこだわるのか、不思議です。北京に行ったら北京で普及している語彙を使い、台北へ行ったら台北で普及している語彙を使って現地の人とコミュニケーションするのが、私のささやかな夢です。

 余力があれば陳健民さんの本の目次などご紹介いたします。それはまた今度。

2 声調・発音の違い 

 台湾から帰国した直後は四声の誤りを指摘されると「自分の覚え間違い」で片付けていました。しかし、気になったので台湾で小学生用の小さな辞典を購入し、注音符号を確認するとやっぱり違う・・・。その他習慣的に違う発音をする語も含めるとかなりありそうです。収集するには相当の時間が必要ですが、試しに少しだけ掲載しておきます。こんな少しじゃ意味ないけど・・・。少しずつ書きためていく予定です。

声調や発音が違う

漢字

大陸

台湾

危険

Wei1xian3

Wei2xian3

微軟

Wei1ruan3

Wei2ruan3

品質

Pin3zhi4

Pin3zhi2

期待

Qi1dai4

Qi2dai4

先生

Xian1sheng0

Xian1sheng1

東西(もの)

dong1xi0

dong1xi1

和(〜と)

he2 hang4

包括

bao1kuo4 bao1gua1

知識

zhi1shi2 zhi1shi4

寂莫

ji4mo4 ji2mo4
攻撃 gong1ji1 gong1ji2
平息 ping2xi1
xie3 xue4
角色 jue2se4 jiao3se4

 

3 大陸にあって台湾にない言葉

例 「三講」など

4 台湾にあって大陸にない言葉

例 「便当」 「多桑」など、台湾には日本語の影響を受けている中国語・台湾語が沢山あります。ちなみに大連にも似たような現象があるそうです。

5 同じ語彙でも両岸で意味の異なる言葉

例 「同志」など

3〜5は陳健民『中国語言和中国社会』に具体例が掲載されていますが、興味深いので後ほどご紹介いたします。その他、発見したら随時追加予定です。

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