2006.1.31
通告

ある日の夜帰宅すると、東京電力から封書が届いていた。
ハイツの郵便受は1階の暗いところにあって、小さい文字がよく見えない。
隣のマンションの駐車場から漏れた明かりがあるだけで、1階の部屋の住人が玄関外の明かりを点けないとホントに暗いのだ。

部屋に入って見てみると、【重要】の文字。
そこにはこう書いてあった。

いちおう書き出してみると…

【重要】
 当社では、お客さまの宅内に石綿(アスベ
スト
)を含有したアンペアブレーカあて板を
設置しております。
 内容をご確認のうえ、お手数ですが当社宛
にご連絡をお願いいたします。


だそうな。

昨年急に騒ぎ出したアスベスト。
ま、実際には「よくないものが混じっている」ということは昔から言われてはいたし、知っていた。
これまで他人事だと思っていたのだが…

封筒を開けてみた。

「あて板」とはこの写真の部分のことらしい。存在すら気にしていなかった。

でも、我が部屋のものはちょっと見た目が違うぞ…

ブレーカーそのものはほぼ同じだが…
あ、ハコの中に見切れてるのは…

こいつか!
でも綿丸出しの感はまったくないなぁ。
しっかし、いままで意識して見たことなかったけど「昭56」ってなぁ。1981年。
さすが昭和53(1978)年築のハイツだ。オレが幼稚園に入る1年前の建物。
このシールは、建ててから3年後になんらかの変更があったってことなんだよな。
それ以来、四半世紀そのまんまというのも変な話だ。

世の騒ぎからすれば、いささかタイミングが遅いような気もしたこの封書。
逆に言えば、そんなに大きな問題はないんではないかと推測した。
肝心の話は、「あて板の詳細」のあとに続いて書いていた。

安全性について
○あて板は、プレート状に固められた石綿成形品であり、表面を金属板で覆われているため、飛散性はありません。
○東京労働基準局から作業環境測定機関の登録認可を受けた測定会社へ依頼し、取付状態、取外作業中において
 粉塵測定を実施いたしましたが、飛散がないことを確認しておりますのでご安心ください。

ということで、いまのまんまで何ら問題はない、つまり推測のとおりだった。
ただそれでも不安な人のために改修工事をやってくれるとのこと。
別に問題ないのならそのまんまでいいや。


昭和56年というと、Fsが最後のリーグ優勝をした年。そして、オレが小学校に入った年でもある。
我が母校は校舎が3度に渡って建てられていて、3つが連結しているのだが、いろいろと仕様が異なった。
当時の体育館はすでに建て替えられたのだが、校舎の方は今はどうなったのかな?

昭和40年代に建てられた3階建ての旧校舎は床が木製タイルだった。
オレは1・2・5・6年を4階建ての新々校舎、3・4年を旧校舎の教室で過ごした。
学校の名物「ワックスがけ」のときは、新校舎と新々校舎はリノリウムだったので白いサラサラのワックス、
旧校舎は木製タイル用のオレンジ色のドロドロワックスだった。
白ワックスはモップでならすのだが、オレンジワックスは雑巾でならさねばならず、
作業時は顔が床に近づくぶん化学的なニオイが鼻をついて辛かった。

この旧校舎のもう一つの特徴、それが、天井のアスベストだった。
ここの天井を見たとき「なんてぞんざいな天井だ」とコドモながらに思った。
いや、なにか工事で天井の板をはずしているのかとも思ったのだが、恒常的なものだった。

ホコリがたまってくっついてしまったように見えるアスベスト。
昨年の一連のアスベストの報道でよく出てきた、つつけば綿がはがれ落ちるアレだ。
もともと白かったんだけど、すすで汚れてしまったようなゴマシオ色をしていた。
いたずら好きな子どもは、この天井のアスベストに向かって雑巾を投げ、ほこりを舞わせて遊んでいた。
掃除の時間以外には「被害」が大きくてできないいたずらなのだ。
その時点では「被害」はただホコリを浴びてしまう、ということだけであったのだが、
いま考えてみればとても恐ろしいことだったわけだ。


語呂が似た「アルマイト」というものがある。
これはかつて学校給食の食器などに使われていたプラスティックの一種。
発ガン性があることが判り、すでに学校からは姿を消している。
オレの小学校では通い始めた当初から金属の食器だった。
プラのほうが熱い汁物のときでも持ちやすくていい。
あの当時すでにアルマイト食器の問題はニュースでやってたので「あぁ、金属なのはそのせいなのか」と思った記憶がある。
もちろん、アルマイトじゃないプラの食器はいくらでもある。親父の入っている施設だってそうだ。
そう考えると、なんでキーキー音がするあの金属の食器を使っていたのか、少々疑問が残るところだ。


我が母校は片方だけだったが、天井にアスベスト、給食はアルマイト、という学校だってたくさんあっただろう。
恐ろしい時代があったもんである。

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