2005.12.8
緑とおまわる人

述べねばならない、述べんばならね、のーべんばー。


○ ○ ○

11月15日。

この日は、急ぎで必要になった会社のマシン用のフォントを、またビックカメラに買いに行くことになった。

購入するのは大日本スクリーンの書体シリーズ「ヒラギノ」のOpenType版だ。
OpenTypeの説明は読んでも意味がわからない人がほとんどだろうから省略。

セレクト1とセレクト3というパッケージがそれぞれ1本ずつ必要。
前者は¥20,790、後者は¥52,290もする。
フォントのグリフ(字形)のデザインは日本語の場合ものすごく大変なのは十々理解できるのだが…。

メーカーサイトで取扱店を調べたところ、会社に一番近いのは恵比寿の出力サービスセンターだった。
が、オレの使っているマウスが壊れたので、その代替品を買うためもあって次に近いビックカメラ新宿西口店に行くことにした。
ちなみにそれより近い渋谷のビックカメラ(「かばん」の回で行った店)は販売店リストに掲載されていなかった。

この日は買い物に出られるほど自分の仕事がヒマな日だったので、都会散歩も兼ねて会社の非変速チャリで新宿までケッタすることにした。



突然現れたなぞの地図。
実は、新宿は折り返し点にはならなかったのだ…



【南青山→新宿】
15時くらいにスタート()。
骨董通り-青山通り-表参道とオサレな道をすすみ、原宿駅の脇の道からさらに裏の住宅街に入り、代々木駅に出る。
代々木から小田急と新宿通りを渡れば新宿。
ちょっと買い物に的な距離ではないが、このくらいならラクラクだ。



【ビックカメラ新宿西口店】
新宿西口店は小田急ハルクの中にある。
いや、正しくはあそこにあるのが小田急ハルクだという意識はいままでなかったのだが、
有楽町そごうの跡に入ったりと、ビックカメラもデカくなったなぁ、と感心。

パソコンフロアのキントッシュコーナーに行く。
とりあえずマウスはすぐ見つかった。
キントッシュ付属の純正マウスはシングルボタンのシンプルなもので、
ドウズを使わないオレにとってはこれでじゅうぶん慣れているのだが、店で売っているのはワイヤレスタイプのみだった。
ワイヤレスタイプは電池がどうのこうのでめんどくさそうなので、ワイヤつきのキントッシュ純正スケベマウスを買うことにした。
画像を見てのとおり、クリ様(スクロールホイールの役目)がついている上、
3ボタンマウス(見た目は境目がないが前2つ、そしてサイドボタン)として使えるのだ。

問題はフォントだった。
扱っているというから来たのに、フォントのコーナーには大日本スクリーンの品がまったくない。
仕方なく店員に
「大日本スクリーンのヒラギノフォントのOpenTypeのセレクト1と3を探してるんですが」
「ダイナフォントですか?」
(ダイナフォント:世の中こうあるべきだ、といわんばかりに異常に安くて書体数が多いフォント集(のメーカー))

おーい!
狭いキントッシュ売り場なんだから、商品知識増やしとけっつーんだ。
メーカーのサイトに「ここで売ってる」ってから買いに来たのに。
ダイナフォントが棚にあるのは見えてるし。ナメやがって。

そこからなんだかんんだで「高額なため、取り寄せになり一週間くらいかかります」となった。

んー、それでは間に合わんのだ。急ぎじゃなかったら通販で買ってるわい。
と困っていると「システムで検索したところ、有楽町店にお探しのものが1点ずつだけあるようです」とのこと。

はぁ、あるってなら行くか。

自転車で(バカみ)


ここから都心名所巡りが始まったのだ。



【新宿→有楽町】
有楽町へ出るとなると電車がいいのだが、会社のチャリをどこかの駅前に置いていくのもなんだし、
この日はほかにやることがないのでゆっくり日本の中心をチャリで横断することにした。
新宿駅と東京駅は実は直線距離で6kmくらいしか離れていないことは知っている。
地図を見てもわかるが、両駅を結ぶ中央線はS字にうねっているのでこの間の駅が多い。
道路で行く場合も皇居を避けるので多少余計にかかるが、大したことはないのだ。

大ガードをくぐって新宿通りをひたすら進むのがわかりやすいルート。
でも大通りは人通りの多い歩道か、車の多い車道の端を進まなければならず、
意外にサクサク進めなかったりするもんだ。

冒険心の沸いてきたオレは敢えて別ルートから勘を頼りに進むことにした。
そうすると大ガードや南口陸橋を通る選択はなくなり、再び代々木駅へ向かう。
駅の脇のガードをくぐって山手線の内側に入り、明治通りとの交差点に出る。
ここで明治通りに出ると元来た道に合流してしまうので、交差点の奥の細い道に突っ込む。

左側に森を見ながら進むと門があり、そこが新宿御苑の森であることがわかった(A)。
そのまま進むとJRのガードがあり、千駄ヶ谷の駅に出た。
ここからは名所づくし。
国立競技場、絵画館の裏、赤坂御用地の脇、迎賓館の正面を通り、結局四ッ谷の駅で新宿通りに合流となった。
赤坂御用地は東宮御所があるところ。この日は奇しくも紀宮さまが黒田清子さんになった日でもあった。
この赤坂御用地の脇は谷になっていて(B)、気持ちよく坂を滑り降りたと思ったら、
谷底の交差点から迎賓館に向けてきつい上り坂に。
このあたりはN島さんの縄張りだ。バイクならなんでもないんだろうけどね。
続々坂を下りてくるどこかの陸上部らしきランナーたち(ウザい)を避けながら
非変速のチャリでケッタしまくって上がった。

四ッ谷駅からは仕方なく内堀通りに突き当たる半蔵門まで新宿通りの歩道を進むが、
通行人があまりよけてくれず、イライラダラダラのまま半蔵門へ出た。

半蔵門で右折して内堀通りに入ると右に国立劇場と最高裁、左は当然内堀を隔てて皇居がある。
社民党の交差点を左に進み、国会議事堂、警視庁の前を抜けると日比谷公園の脇に出る。
この社民党の交差点から警視庁にかけても下り坂(C)。
左は内堀が迫っていて、歩道の柵は低く、坂を高速で滑り降りてなにかを踏んだらボチャンの可能性もあるところ。
もう日がほとんど暮れていたが、かなりな時間ケッタしているので、顔に当たる風がとにかく気持ちよかった。

日比谷公園の交差点を越えれば、右が日比谷で左が有楽町。
新宿で買えればとっくに社に戻っている時刻にようやく有楽町に着いた。



【ビックカメラ有楽町店】
元有楽町そごうの建物はフロアごとの高さがあまりなく、エスカレーターをちょっと上がっただけで次の階に出る。
2階に上がったときは、中2階かと思ったくらいだ。
…そういえばなぜかデパートには中2階というものがあったよなぁ。
小さい頃親に連れられてデパートに来るといつもふしぎでたまらなかったが、いまもふしぎだ。

キントッシュコーナーを見つけ、フォントの棚を見ると、ありましたありました。
ようやく恋人に出逢えましたよ。
そそくさとレジへ持っていくと、店員がレジの裏に引っ込んでしまった。

出てきた店員が発した言葉は
「すいません、お取り寄せになります」
「んぁ〜?」
オレは半ギレしていた。
新宿西口店でここにあるって言われたからワタシはチャリをケッタケタしながら来たのだよ、キミ!
口調はともかく、そう伝えると、再び店員は奥へ。

で、なんだかんだで15分くらい待たされた挙げ句、
「ドウズのフロアにありました。これハイブリッド版なんで」
だとさ。ドウズというのはオレの言い方であることは言うまでもない。
ハイブリッドなのは知ってるけどさ、ハコを棚に置いてあるのに品切れっておかしいだろうが! ゴルァ!
…ま、そんなクレームは言わないで
「お手数かけて申し訳ないですね」
と声をかけたのがホント。オレはいい子なのだ。

新宿で結局買わなかったスケベマウスも一緒に買う。
前回渋谷でソフトを買ったのと、今回のフォント&マウス購入でオレのビックポイントカードは15,287ポイントもたまっていた。
給料安いんだから、これくらいのプレゼントはしてもらわないとなぁ。
レジの後ろの棚に積んであったiPodが気になったが、とりあえず衝動買いせずにゆっくり使い道を考えることにした。


さて、問題は帰り方だ。
会社は六本木通りに近いのだが、日比谷方面から六本木通りへの地図がオレの中にできていなかった。
青山通りなら、今来た道を戻って、社民党の交差点を曲がらず真っ直ぐ進めばいい。
でもそれではそこまでルートが被る。
またもや冒険心が沸き、どうにかして六本木通りへ出ることに決めた。



【有楽町→霞ヶ関】
ひとまず日比谷公園の交差点に戻り、内幸町方面へ曲がる。日比谷公園の長辺に沿う形だ。
日比谷公園とは反対側の歩道を進むと、ほどなくTVとラジオの中継車の駐車の大行列(D)。
警察の青白バスもいて、おまわる人がわんさかいる。

そうか、帝国ホテルだ。黒田夫妻の宴が行われている、もしくは行われていたんだろう。
とりあえずキー局はぜんぶ揃えとけとばかりに中継車の列が続く。

ほどなく西新橋の交差点に出る。
よくわからないが、とりあえずここを右に折れてみる。


[霞ヶ関のイヤな年始]
…どことなく来たことのある風景… と思ったら、一昨年の1月に嫌な思い出のあった場所だった(E)。
霞ヶ関、虎ノ門、内幸町、新橋と近隣駅はいろいろあるところ。
当時、前にいた会社を中国人ディレクターとケンカして辞めた直後で、
すぐにでも次の職場にありつきたいところであっさり入れた会社がそこにある…
いや、あった、になってるかもしれない。

その会社は、正月休み明けに初出社すると、そこにいた12人の社員のうちの10人がオレと同じ同日入社組だった。
説明してもわかりづらいので理由は書かないが、とにかく人が長く居つかない労働環境の会社だった。
初日に女社長と各自が面談を行ったところ、営業として入った1人が面談を終えて即辞め。
翌日も朝1人来ず、辞めるという連絡がほどなく入った。
3日目にまとめ役として入ったディレクターが朝いずにこれも辞め、
4日目に業務が終わったところでまた1人辞めた。1日に1人ずつ消えていく、バトルロワイヤル状態だった。

2人越年したうちの1人も引き継ぎのためだけでこの週で辞め。
仕事が本格化し一旦バトルロワイヤルは途切れたものの、人員不足もあって成人の日がらみの3連休は丸つぶれ。
オレも手をつけた仕事が終わったらエスケープしようと決めていたので、明けた水曜に辞めた。

一週間半しかいなかったので、ビルの場所がなんとなくしかわからなかったが、
初日に面談をやったドトールの前に出て、隣にあるビルがそうであることを思い出した。

んー、あの辞めた日は同期入社のヤツとケンカして荷物持たないで飛び出したんだよなぁ。
ビルの区画をひとまわり歩いて頭冷やしてから会社に戻って、「辞めます」と言って荷物取って出て…
駅へ向かって歩き出したら、女社長が追いかけてきて「辞めないで。私もあの人は嫌いだし」という。
いやいや、ケンカで辞めたのは前んとこで、ここは会社そのものがヤバいから辞めるんであって。

ケンカしたそいつはオレより年上。10社以上の会社を辞めていて、給料未払いの裁判もやってるとか言ってた。
その件では社長にクビにされたらしい。そいつはオレが一番嫌いな「自分を客観視できない」タイプ。
自分の何が悪くてそんなに会社を移り歩いているのか、正味のところをわかってないようで、
会社組織ではうまくやっていけない性格なのは明らかだった。

次の会社で土曜出勤しているときに女社長から電話が来た。
「会社の環境もよくなったから、戻ってこない?(ケンカした)Sさんも辞めちゃったし」と。
でも、オレがいた間の給料を1月中に払うと言ったはずなのに未払いのままで、そんなところに帰るわけないだろ、と断った。
その後、オレより後まで残った人と二度電話で話したものの、会社がどうなったかは知らない。



【霞ヶ関→六本木】
そんな場所の前を通る、新橋駅から延びる大通り(外堀通りだった)が、西へ進むとどこへ出るのかは把握していなかった。
同じく、六本木通りの北の始まりがどこかもまた知らず。
そして、オレは強引に頭の中でこの2つの大通りをつなげ、真っ直ぐいけば六本木、と考えた。
しかし、六本木通りは首都高3号線が常に上を走っている。
いま西へ進んでいる大通りの上にはそれがない。

虎ノ門の交差点の先で道がぐにょっと曲がっている。
東京は家康が外敵の進入を阻むために敢えて複雑な道路の構成にしたそうで、大通りも道がうねり、東西南北の感覚が狂うことが多い。
とりあえず道なりに進むと、またおまわる人が。それももんのすごい数だ(F)。
深緑の街宣車がいたり、太鼓をベンベン叩きお経を唱えながら歩くボンさんがいたり、異様な風景。
その先の交差点の角には「うぇるかむ あめりかんぷれじでんと」的な(詳細忘却)横断幕を持った団体が。

そう、黒田夫妻の次は、ブッシュくん来日の警備だった。
後で地図を見たら、この交差点の左に入ったところにはアメリカ大使館があった。
日はとっぷり暮れて夜になっていたが、歓迎の横断幕が出てるということは、まだ大使館に着いてなかったんだろう。

そこを過ぎると、正面に首都高が見えてきた。
どうやら先で交差しているのが六本木通りのようだ。
溜池の交差点で六本木通りに入り、谷町で左に分かれる首都高都心環状線にダマされないよう、右へ続く高速にくっついて進む。
谷町とはよく言ったもんで、ここから六本木へは長い上り坂(G)。
しかも狭い歩道を進まざるを得ない状況で、人を轢かないように坂を上るのは非常に辛い。

まっすぐ高樹町まで進めば会社の近くに出るのだが、歩道を進むのがイヤになった。
六本木の交差点で、右へ折れる。これも冒険心からだ。



【六本木→西麻布→南青山】
一時期マジックアカデミーをやるために会社から都バスでよく来ていたゲーセンの前を通り、
2つ目の大きい信号を左へ。最早見たことのない道。
しかも大きくうねり始め、東以外のどこかに向かっているはず、くらいしか把握できなくなってしまった。

うねった下り坂の右側に雑誌で見たことがあるケッタイな建物が目に入った(H)。
建設中の国立新美術館だ。
この建物の正面もまたうねった骨組みで構成されている。
その先には首都高でない高架道路が目に飛び込んできた。
高架は山の中に入っていて、六本木トンネルを抜けてきた道であることがわかった。

米軍が仮設ヘリポートを設置したまま不法占拠を続けている青山公園の脇を通って、大通りのY字路に出た。
ここがどこだかはこのときさっぱりわからず。
周りを見ると住居表示が目に入った。西麻布だった。
西麻布って六本木通りより南側だと思ってたけど、こっちにも広がってんのね。
Yの左辺の大通りを進むと、右はずーっと森(I)。
ふたたび道路を高架が越えていて、ここで、森が青山霊園であることが理解できた。
高架は会社のほうから根津美術館の前を通って青山霊園へつづく橋だ。

橋の道を西に進めば会社へ近づけるのだが、歩道は階段しかなく、チャリは上れない。
仕方なく橋の脇の道に入る。完全な住宅街。見た目一般市民の住居が並ぶが、地価は高いんだろうなぁ。
この道は細いんだけど交わる道が少ない。ここも上り坂。ひたすら前へ坂を上っていくしかない。
突き当たりに出たので適当に進んだら、大通りに出た(J)。左にコンビニのポプラがある。
会社の近所にポプラがあるが、脇に道はない。
答えを知りたくないが、大通りに出たら、やっぱり青山通りの外苑前と表参道の駅の間だった。

まぁ、橋に上がれなかっただけでだいぶん違うところに連れてこられてしまった。
このポプラの近所は、今の会社と同時に就職活動をしていた会社があるところだ。
テキトーに進んでいても、過去のいろんな思い出の場所に出くわす。
ふしぎだね、東京砂漠。


ここからの道は迷いようはなく、予定より2時間近く遅れて帰社。
同僚F曰く、ケッタしすぎ(風受けすぎ)で前髪がヒサシ状…「90年代」になっていたらしい(笑み)


フォントをインストールする前にすぐさまマウスを使ってみるが、OS9では1ボタン扱いなうえ、カスタマイズできないことが判明。
こいつが備えてる機能を使うには、OSXじゃないとダメなんだってさ。
そんなぁ、そんなのってないぞ…

しかしまぁ、地図を見る限り、新宿通り(新宿駅を出て四谷3を通る)と六本木通り(六本木から高樹町)を素直に進めば、もっと速やかに行けたっぽいね。
東京って、台東・中央・墨田・江東の一帯は道が碁盤の目に近いところが多いんだけど、山手線の中になると、これが複雑怪奇で。
そして緑とおまわる人が結構多いこともよくわかった。



え?
長くて重い?

うっさい!

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