キューバのかなしみ

【悪ぃね! 韓国】
WBC、始まるまで知らなかった国民も多く居ようが、ふだんから野球を観ている人間からしたら、
日本国民の注目度・興奮度が思いの外高くて驚いた。
日本-韓国の準決勝のテレビ中継、関東で瞬間最高視聴率が50%を超えた。

私も家でテレビ観戦。
福留の打球には「イケェェエエーー!」と叫んでしまった。
レフトが異常に奥まっているものの、ライトは100mなかったので、実際は打った瞬間にホームランだとわかった。
それでも叫びたくなる、空を飛べるんじゃないかとも思うくらいのウキウキな気持ちになった。

明けたきょう、職場で、ふだん野球のことなんか話さない人間から「多村」という名前が出てきたときはすんごくヘンな感じだったが、
やはり一般市民はどんな競技でもナショナルチームが頑張る姿を見たら応援したくなるもんだ。
(「一般市民」という表現に他意はありません。ボキャブラリーがないだけです)


前回に書いたコラムの中で韓国のプロ野球を「集客力がない」と書いたが、
さすが、ナショナルチームとなると韓国国民はパブリックビューイングに集まり、大盛り上がりで応援していた。
台湾や中国もそうだが、兵役がある国は、こういうときの団結力の強さが日本とはケタ違いだ。

その面では、韓国のほうが勝っていたかなぁ。
テレビの報道のシーンしか観てないから何ともいえないけど。
試合が終わってもずーっと「大韓民国」コールをしてたし。
日本選手が着替え終わって出てきたところのインタビューのバックにも、それが聞こえていた。

通算成績からいえば対日本は2勝1敗の韓国だが、肝心なとこで負けちゃった。
私は日本人なので日本が勝ったことが素直に嬉しいが、韓国国民はもどかしいだろう。
あるファンは「この恨みはサッカーで」と語っていた。
恨まないでくれ(笑み)


【経済制裁】

さて、あしたの決勝の相手はキューバ。

この大会は事実上メジャーリーグ機構の開催。
北中米のチームはそれぞれメジャーリーガーの強者で固めて参加したが、決勝に残ったのは日本とキューバ。

ご存知のとおり松井ゴや井口の辞退によって、日本チームのメジャーリーガーはイチローと大塚の2人。
さらに、キューバ人は亡命しないとメジャーリーグには行けないので、キューバチームにメジャーリーガーは皆無だ。
決勝に残ったメジャーリーガーはたった2人だけということになる。
大概の人が、アメリカとドミニカ共和国の決勝戦と思ってただろうに。

キューバの選手たちは「プロ」ではないが、彼らは国内では特権階級にあたり、家や車や年金が支給される。
月給も一般労働者より恵まれていて、アメリカ$で約20$ほどらしい。日本円にすると¥2,320だ。
えーーっ? にせんさんびゃくえん?
日本なら1日3食でも消費しちゃう額。物価の違いとはいえ、ハラホロヒレハレ…

現在、日本のプロ野球選手で一番安いのは、今季から設けられた「育成選手枠」で登録された選手たち。
二軍の試合のみに出られるという制限つきだが、それでも最低年俸240万円が保証される。

そんな育成選手たちが足元にも及ばないメジャーリーガーたちを蹴散らしてきたのが年俸¥27,840のキューバの選手たちだ。
そら金額の書式も変えるっちゅうねや(笑み)

悲しいのは、キューバがアメリカ財務省から経済制裁を受けているということ。
今大会の利益は、各チームに分配金としていくらかずつ回されることになっているのだが、
アメリカの財務省が、キューバに対する分配金を認めない…つまり、参加を認めないと言い出した。

中米の他国は「キューバを出さないなら、うちも出ない」と抵抗、これで大会の開催自体が危ぶまれたが、
結局、キューバが分配金をアメリカのハリケーン被害地域に全額寄付するという形で収まった。
決勝まで残って場を盛り上げ、優勝したとしても、分配金で潤うことはないわけだ。

参加国・地域中いちばん物価が安い国であろうに… こんなに悲しい話って、ないよなぁ。


【松坂で?】
そんな背景は、勝負の上では関係ない。
これまで通算で大きく大きく負け越しているキューバ戦、日本は出せる力を出し切っていかないと勝てない。

んが、ここで意外な事実がある。
楽天・ノムラ監督によれば、シダックス時代にキューバと対戦し2戦2勝だったそうだ。
しかも今大会のメンバーとほぼ変わらなかったという。
「日本のプロ一歩手前程度の選手で勝つには真っ向勝負ではダメ」と判断したノムさんは、
エース(野間口かな?)ではなくアンダースローの投手を先発に立てることで対抗、
キューバは変則モーションに戸惑いを隠せず、見事にシダックスが勝ってしまったらしい。
客が少ない親善試合という空気でキューバのモチベーションが上がらなかったこともあったとは思うが。

キューバ戦で先発とされている松坂は尻上がりに調子を上げてきていて、スライダーのキレは絶品なのだが…
速い球には滅法強いキューバ、ど真ん中のストレートは松坂のそれであっても怖いかもなぁ。
数々の人が言うのは「キューバの野球は日本と似ている」という事実。
松中は「あのチームは粗っぽい手を使ってでも勝ちにくる」という随分ダーティなイメージで語っていたが、
基本的にコツコツ野球、というのが今大会のキューバの傾向のようだ。

今週末はパ・リーグの開幕ということもあり、松坂が長く投げることはないだろう。
2番手はぜひとも渡辺俊介で。
いや、どうせなら打者一巡で交代とか、一人1イニングでもいいのかもなぁ。
常に初見で対戦すればいいのだ。
久保田や馬原にも投げさせてあげたい気もあるし。

なお、ケイジバンにも書いたが、前回コラムに書いた和田ベンちゃんは尿管結石なんだそうで。
スイングすると子ベンちゃんが痛むので試合に出られる状況じゃないようだ。
2次リーグの韓国戦敗退後にベンチでひとり泣いていたベンちゃん、それは悔しかったろうなぁ。
それとも、子ベンちゃんが痛くて泣い…

んなこたぁ、ない。

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