WBCってなんだかんだで楽しいね

このコーナーの更新は2004年4月17日以来、丸2年近くぶりとなる。

カンセンキは時間のある頃によく書いていたのだが、自ら作り上げた長文スタイルが足かせとなり、
終業が遅い会社に移ってからはなかなか書けなくなってしまった。

このごろはケイジバンが文章を載せるスペースになっていた。
でも、なんだか丁寧語で書くのがめんどくさいし、
ケイジバンだと過去のものはログを辿っていかないと見られないという欠点もある。

いろいろ考えると、ブログスタイルでやるのがいちばんいいんだろうなぁ。
読んだ人のコメントもそのコラムの下に出るし。
今後ケイジバンのブログ化も考えていこう…


【WBCとイチロー】
このコラムは2006年3月18日のAM3時前に書いている。
17日は、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)2次リーグでアメリカがメキシコに敗れた日だ。

日本チームは初戦のアメリカ戦で、「誤審」により結果的にサヨナラ負けとなった。
アメリカ人球審・デービッドソンが、アメリカの抗議を受けて西岡のタッチアップを「フライング」と判定変更した。
一番近い所で見た三塁塁審は西岡のタッチアップが成立しているジャッジをしたのにだ。
あとの結果を見れば、ここで1点入っていれば、という場面。
当初勝つのが難しいかと思われたアメリカ戦は、勝ってもおかしくない戦い方ができていた。

デービッドソンの判定覆りを、アメリカのメディアも批判した。
韓国の新聞も、日本を全面的にかばう書き方をしたそうだ。

日本はメキシコに6-1で勝ち、1勝1敗で韓国戦を迎えた。
ここまで韓国はメキシコ、アメリカを下し2勝。
アメリカは1勝1敗、メキシコが2敗という状況で、ルール上、日本は韓国に勝てば準決勝進出となる。

ところが、日本は1次リーグに続いてここでも韓国に1点差負けを喫した。
この試合、ライト線のファウルフライをイチローがスタンド際へ追っていくと、
韓国系観客が押し寄せて捕球を妨害したシーンがあった。
あの冷静なイメージの強いイチローが、グラウンドから観客に大声で文句を言った。
そんなことが今まであっただろうか。
冷静、ときには冷徹にも見え、一挙手一投足に神々(こうごう)しささえ見えていたイチローとはまったく違う姿だった。

イチローはアテネオリンピックへの参加に興味を示さなかった。
しかし、今回のWBCはヤル気満々で参加を表明した。
その心境の変化は、メジャーリーグにおける現象が要因だそうだ。

メジャーでも高打率を維持するイチローだが、昨年は彼にすれば不調に終わった。
いろいろな原因があるのだが、その中のひとつに「審判のえこひいき」がある。
ストライク判定では、不服なものが昨年は特に多く感じられたようだ。
このえこひいきは、アメリカ人優位、そしてその中でも白人優位という空気を持ったものだ。
もちろん審判みんながそうではないものの、アジア人であるイチローはその害を受けやすい。
国の誇りを賭けて戦うWBCは、イチローにとって渡りに舟だったのだ。

そんな気持ちでイチローが臨んだこの大会だが、アメリカ戦で審判に邪魔をされ、韓国戦では観客に…。
イチローの捕球を妨害した韓国系の客たちは、単にファウルボールを捕る「栄誉」がほしくて追っかけただけなのか、
それとも、韓国チームのためにイチローの「邪魔」をしたのか?
複数の人間の動きだっただけに、どちらの要素も混じっているのかもしれない。

興奮を抑えられないイチローは、敗戦直後、ベンチで「Fuck!」という想像もし難い言葉を叫んだ。
そこには誤審の審判、邪魔をした観客、そして持ち味を出し切れない自分への苛立ちもあっただろう。
インタビューでは「野球人生で最大の屈辱」と発した。
「神」であるイチローをこうも変えてしまう、それがWBCの魅力なのかも。


【プロ野球は選手だけでやってるわけじゃない】
くだらない分析だと思うが、韓国の勝因を、日本のメディアは「ニンジン作戦」と伝えた。
高麗人参パワーとかいう話ではない(笑み)
韓国は兵役がある。
健康上の理由がない限り基本的に決められた年齢のうちに2年から3年の間軍隊に入るのだ。
スポーツ選手にとって、円熟期に競技から長く離れなければならないのは死活問題となる。
これまでオリンピック選手やサッカー代表選手などには兵役免除があったそうだが、
プロ野球選手にはそれがなかった。
そこへ「今回のWBCでいい結果を出せば兵役免除」という話が沸き上がった。
これが力を引き出して勝った、と報じるマスコミが多いのだ。

韓国のプロ野球は日本や台湾に比べると集客力がない。
設備も充実しているとはいえず、ビジターチームのロッカーさえなかったりするという。
それと直結した話ではないが、プロ野球のレベルは日本より格下だ。
現に、昨年のアジアシリーズでもロッテにまったく歯が立たなかった。
ロッテが「胸を貸している」ように見えたくらいだった。

メジャーリーグへ移る選手のほとんどが投手なのは日本と同じだ。
WBC代表チームでは、日本より多くのメジャーリーガーで投手陣を形成している。


なぜ1次・2次リーグと続けて日本は韓国に勝てなかったのか?
それは、「たまたま2つ負けた」だけだと思う。

抜きんでた力の投手が投げれば試合は引き締まる。
現時点でメジャーリーグが世界最高野球リーグであることは揺るぎなく、
日韓ともに多くの投手がそこで活躍しているのだが、野手は少ない。
そう考えると、日本も韓国も「投高打低」のチームといえよう。
屈指の投手を集めたチーム同士の対決は、どうしても貧打戦となる。
1プレーが試合に与える影響が大きいのだ。
その1プレーが、たまたま韓国にいい影響を与えるモノが数回続いただけなんだと思う。
2-3、1-2という敗戦スコアを見てのとおりだ。


王監督は敗戦についてのコメントで「韓国の勝利に対する執念が日本のそれを上回ったんだろう」と語った。
私もそう感じたのだが、日本の選手が気が抜けていた感じはまったくなかった。

じゃぁ、なにが違うのかだ。
それは、ムードだ。

日本での1次予選から通じて、韓国の試合には常に組織的な応援団が現れ、
「大韓民国」コールや、「♪Oh Mr. KOREA」などが聞こえてくる。
守備時にピンチになったときも大声で声援する。
日本のプロ野球のシーンでは基本的に御法度な行為でもあるのだが。
渡航が簡単な日本での試合ならともかく、アナハイムでもまったく同じボリュームの声援が成されていた。

対して、日本チームへの応援はというと、普段マイ・チームでの試合で浴びる、
トランペットとドラムとメガホンのビートではなかった。
各球団の私設応援団は参加を自粛したそうだ。
1次予選の東京ドームでは、韓国応援団が普通にドラムを叩き、トランペットを吹いていたので、
普段の応援活動ができない状態ではなかったようだ。
試合中継を観ていたら、日本がアウェーに見えるシーンも多かった。
応援リーダーがやってこないのは、さまざまな事情がそこにはあるんだろうが…。

それでも、東京ドームでは12球団のファンがそれぞれのカッコをして、それぞれのメガホンを持って、
アカペラで応援歌を唄って自然発生的に応援をしていた。
が、これも国内ならではのこと。
アメリカに渡るとなると、それは大変なことだし、
気軽に来れる現地の邦人がいま現在の日本のプロ野球の応援を熟知しているわけがない。

メジャーリーグの観客からすれば、日本のリーグの応援は組織的ですごい、という見方をされようが、
代表の応援となると、なぜだか日本はアメリカにも韓国にも見劣りが否めなくなる。
まぁアメリカは地元だから、絶対数の違いという優位があるわけだが。
日本のスポーツの代表チームの応援では、サッカーが優れている。
アテネでは、このサッカーと同じ「ウルトラス」が応援に来ていたのだが、WBCではどうなのかな?

ノセられないといい結果がでない、というわけではないが、
普段と同じ応援があるのなら、それのほうがいいに越したことはないと思う。
それにはいろいろな制約があるし、そう言っている私だってそれをやりに行くヒマはないので、
どうにかならんもんか、と思うより先には進めないのだ…


【ズルい仕組み】
さて、アメリカとメキシコの試合は、メキシコが2点以上獲って勝てば失点率差で日本が準決勝進出となる重要な試合だ。
韓国と日本に敗れているメキシコがアメリカに勝つという可能性は低かった。
そして、この試合の一塁塁審があのデービッドソンだった。
3回、メキシコ・バレンズエラのライトポール直撃の「ホームラン」を「二塁打」と判定。
ボールにはポールの黄色いペンキが付着していたのだが、この抗議も通らず。

しかし、これがメキシコへの追い風となった。
隣国メキシコからの応援はヒートアップ、選手のテンションも上がり、
日本が6点をもぎ取った投手陣も踏ん張って、2-1でメキシコが勝ってしまった。
アメリカは日本戦でホームランを放ったデレク・リー(レオン・リーの息子)と
昨年レッドソックスのリードオフマンとして活躍したデイモンがともに左肩痛で離脱したハンデもあった。

結果、二度目のデービッドソンの助太刀は逆効果に。
聞けば、この審判、過去メジャーにいたものの、いまはマイナーの審判に格下げになっているらしい。
このWBCは事実上MLBが開いている大会なのだが、残念なことにマイナーの審判が多くを占めているそうだ。
国の威信をかけた大舞台を力足らずの審判が仕切るというのは、それこそ大きな誤審であるといえる。

これでアメリカ代表のWBCは終わってしまった。
1次予選の1位通過を予想して、2次予選は1位チームが1日おきに試合する日程が組まれていた。
しかし、予想もしなかったカナダ戦の敗戦によりこの目論見も崩れた。
リーグの組み合わせも、アメリカが早い段階でドミニカ共和国・プエルトリコ・ベネズエラ・キューバなどと当たらないように組まれた。
そんな中、こんな段階での敗退はまことにいい気味である。
アメリカ代表の選手たちは何も悪いことがないということをきちんと付け加えておこう。

今後4年おきに開催するようだが、次回同じ体勢で開かれることがあるのかどうか?
サッカーにはFIFAやUEFAという国際組織があるのだが、野球にはそれがない。
審判や日程など、公平を保った形できちんと運営できる母体ができあがらないとね。


【飼い殺し】
もうひとつ問題を感じる。
それは、レギュラーシーズンの開幕直前に行うということ。

それに配慮し、投手への球数制限が設けられたのだが、
好投している投手が強制的に引っ込められることで試合の展開が変わってしまう。
んが、これは対戦しているチーム同士お互いに同じことだ。

投手はその特殊性から、出番がかわるがわる訪れるわけだが、野手はそうはいかない。
日本チームの場合、王監督のやり方である「スタメン固定」がなされているので、
昨年の首位打者・青木と和田一浩、本塁打王・新井、日本シリーズMVP・今江などが飼い殺し状態になっている。
とくに若手の青木と今江に関しては、通常であればオープン戦に出続けて試合勘が磨かれていく段階なのだが、WBCでは出場はごくわずか。
ヘタに日本が勝ち続ければ、試合勘が鈍った状態で開幕を迎えることになりかねないのだ。
青木や今江が今季成績をガクリと落とすようなことがあると、
次回のWBC開催時に「控えクラス」にあたるスタンスで招集をかけられた選手が辞退することもあるかもしれない。

「あの舞台で戦いたい」と思うほうが増えるか、「招集は迷惑だ」と思うほうが増えるかは、
今後の日本の戦いに拠るところもあるかもしれない。

準決勝と決勝はともに一発勝負だ。
まずは韓国が相手。3連戦でたまたま2連敗しただけと思えば気が楽なんじゃないか?
…とシロウトな意見をしてみる。
韓国に勝ったらドミニカ共和国かキューバが相手だ。たぶんドミニカ共和国なんだろうが。

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