さらに、エクストラ


2000.8.27 Sun.
パ・リーグ公式戦
F-H 23回戦[東京ドーム]
○7-5
W高橋憲2勝1S L吉田7勝3敗1S HRウィルソン28(2) 松中29(3) 田中幸12(3) 


ファイターズフライヤーズOBデー』のこの日、スタンドには試合前のセレモニーに参加した土橋正幸元監督がいた。
ファイターズの前身、日拓ホームフライヤーズとドームになってからのファイターズで監督を務めた。
後者はリアルタイムで観たが、あまりいいイメージがなかった。
なにしろ1年で辞めてしまったので…。選手と仲がよくなかったって話を聞いたが。

その土橋氏が現役時代、フライヤーズでつけていた背番号が21。
ドーム黎明期のエース・西崎幸広の後を継いでこの21番を背負ったのが、この日の先発・清水章夫だ。

そんな因縁の中、試合開始。
いつものハイテンポで清水柴原に対し、ポンポーンと4球投げ込んだ。

四球(苦笑)。

2番・大道の3球目、やっとこさストライクが入った。
先が思いやられたが、そこは「悪運の強い男」。その大道を併殺に討ち取った。
その後も、四球に至ったのは少ないが、つねにボール先行の苦しいカウントメイクが続く。

ダイエーの先発・斉藤和は、6日のいわきで対戦している。
その日の観戦記でも書いたが、コントロールさえ安定すれば、なかなか打てない投手だ。
両先発とも、コントロールが永遠の課題だろう。

3回・小笠原のタイムリーで先制。
4回にはウィルソンの2ランで加点。依然打線好調だ。
さらに奈良原の中前タイムリーで1点追加。4-0
一発の後にちょこんと打たれたこの1点は精神的なダメージを相手に与えることができる。
しかも、打ったのは一番打率の低い9番・奈良原だ。

斉藤和は結局5イニングで4四球・2暴投と、コントロールの課題は解決せずに降板した。

さて、6回に攻め込まれた清水は一死満塁のピンチを迎えた。
4-0でリードだが、一発同点なわけだ。
そんな時に打席にいたのは、なんと4番の小久保だった。同点になる可能性は高い。

しかし、投手が抑えられないときはバックが救う。

小久保清水の球を捉え、左中間を抜かんとばかりの当たりを放った。
が、そこに飛び込んできたのは、センター・井出の逆シングルだった!
ものすごい守備範囲。抜ければ3点は堅い当たりを犠牲フライに変えてしまった。4-1

やはり今のFsは違う!…そう、思いかけた直後だった。
松中の当たりはライトスタンドに飛び込んだ。3ランで4-4だ。
試合は振り出しに戻ってしまった。

清水と6回から登板の吉田は7回をそれぞれ抑える。

8回・城島のタイムリーが出た。ついに逆転。ランナーを残したまま清水は降板となった。
しかし、立石を挟んで3番手・高橋憲がなんとか抑え切って、失点は1点にとどまった。

4回の奈良原のタイムリーのような「間をおいた後の追加点」がこの回のダイエーには出なかったのだ。

リードを奪った8回裏・ダイエーのマウンドには3イニング目になる吉田が立っていた。
私の感覚からすれば、登板過多の吉田をこの時期に3イニングも投げさせるのは危険だから、篠原あたりを出してくると思っていた。

4-5で迎えたこの回・Fsはチャンスをつくるも、オバンドーが併殺。あきらめムードになりかけた。
しかし、またランナーを2人ためて、当たりの止まっているユキオに回ってきた。
この日も、内野のエラー気味の処理がヒットと記録された「もらいもん」の安打はでていたが、
あとの2打席は打球が真上に上がるだけ。タイミングがあってないようだ。

ダイエー尾花コーチがマウンドまで行った。
右のユキオに対して左の、しかも3イニング目の吉田だ。
ペドラザを早く出してもいい場面だったが、吉田は続投だった。ユキオの不調を見込んでの判断だろう。

しかし、2ストライクまで追い込んだものの、もはや吉田に球威も細かい制球力もなかった。
ど真ん中に入ってきた甘いカーブは、見事に右中間スタンドにブチ返された!
起死回生のユキオの鳥肌逆転3ラン! 完全なる王監督の采配ミスだ。

9回表、こちらも続投の高橋憲は1安打されるも、抑え切った!
ミラバルを出してもいいと思ったが、今は高橋憲の信頼が絶大なことがわかる。

また勝った! 5連勝だ。スタンドもいつになく沸いているぞ!
この試合の勝敗の差は、やはり同イニング内で間をおいたチャンス両方で得点できたかできなかったかの差であろう。
それがチームの勢いの差から出てきているのだ。

シーズン後半から一軍に帰ってきた高橋憲はこのところいい働きをしている。
ニュースでも名前を挙げて取り上げられるようになった。
失点の後に、相手のさらなるチャンスを防ぐのがこの男の仕事だ。
決して球は速くないが、相手の当たりが芯を喰わない。
そのノラリクラリとした投球は、まさにリリーフ向きなのだ。
敗戦処理投手だった地味男が、にわかに脚光を浴びてきた。

シモといいノリといい、一時はファームで腐っていた奴らがチームを支えている。

「優勝」の文字がまたちょっと、濃く見えてきた。
 

●●●今季観戦通算 11勝14敗 勝率.444●●●



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