「FM802」のエポックとなったのは1989年6月。当時、米国のラジオ局で定着していた
「ヘビ-ローテーション」を取り入れたことだ。同じ楽曲を各番組で最低1回以上かけるという今までの
FM局にない、ざん新なシステム。「僕らが良いと思う音楽が(ヘビーローテーションで)起点になって広がっていけば、
と考えた」と話すのは同局編成部の古賀正恭プロデューサー(43)。
手探りでスタートしたシステムは、人気が定着したミュージシャンを紹介したり、複数のアーティストを取り上げたり
試行錯誤の連続だった。89年の暮れ、3月にデビューしたばかりの「DREAMS COME TRUE」の
「サンタと天使が笑う夜」を取り上げたところ、リスナーから問い合わせが相次いだ。
「有名アーティストよりも、比較的新しい人たちをやっていこう」(古賀プロデューサー)と方向性が固まる。
そして、KAN「愛は勝つ」(90年8月)、J-WALK「何も言えなくて」(91年12月)。
取り上げた当初は売り上げに結びつかなかったものの、ともに発売数ヶ月後に大ブレークしていった。
形を整えたシステムの成功の鍵は「802の全員が良いと思う曲を選ぶ」ことにある。
まず5~20人の制作スタッフで構成される10チームが、取り上げたい1曲をノミネート。
”候補曲”を5人のプロデューサーで最終決定を下す。全員一致が絶対条件。
耳のメディアだから、人気プロデューサーの曲やアイドルなど、テレビ規格のアーティストなどは一切取り上げない。
この徹底ぶりが局としての”ウリ”となっていった。
90年以降、802は、シンガー・ソングライターの槇原敬之(91年1月「北風」)や男性3人組ロックバンド
「ウルフルズ」(96年1月「ガッツだぜ!」)などを全国へ発信、ヒットにつなげている。
最近では、今年の新人賞間違いなしの女性ボーカリスト・元ちとせが挙げられる。(森口宏平)