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ミュージシャンをブレイクさせる”ヘビーローテーション”〜
放送業界誌『GALAC[ぎゃらく]』の2001年6月号。この号の特集「ラジオ21世紀の決意!」で注目の戦略として、
FM東京、ZIP-FMとともに、802が取り上げられておりました。以下、その内容です。
(情報提供 special thanks サー伯爵さん)【わんたん】
(以下、GALAC 2001年6月号 P.24〜P.25より)
〜ミュージシャンをブレイクさせる”ヘビーローテーション”〜
槇原敬之、山崎まさよし、スガシカオ、
そしてaiko、花*花、矢井田瞳にラヴ・サイケデリコ・・・・・。
この一件脈絡のなさそうなミュージシャンたちの共通項とは何であろうか。
正解は、エフエムはちまるに(FM802)が行ったヘビーローテーションという強力なプッシュにより、
人気に火がついたアーティストたち。この一つの事例を見ただけでも、FM802が音楽ステーションとして、
数少ない元気なラジオ局だと証明できるはずだ。
802が「音楽」との幸せな関係を築き上げた秘密は、一体どこにあるのだろう。
ターゲットは”18歳の感性”
関西地区のラジオの特徴といえば、パーソナリティの喋りが基本で、
一時間に音楽が一曲かかればいいというような番組形態が主流だった。
大阪では、素人同士でも会話をすれば、「漫才」になるという土地柄だ。
そこに大阪の民放FM第二局としてFM802が誕生した。一九八九年のことだ。
当時、関東圏の新FM局であるJ-WAVEは「モアミュージック・レストーク」を謳い文句に、
新しい音楽ステーションとして脚光を浴びていた。
だが、FM802がJ-WAVEのやり方をそのまま踏襲することはなかった。
FM802の開局当時の印象を、一リスナーとして聴いた古賀正恭編成部編成課長はこう語る。
「東京で仕事をしていて、J-WAVEも聴いていたので、802ってAM的だと思いましたよ。
FM局で電リク番組をやった局などありませんでしたから。親しみは持てましたね」
古賀は音楽イベントの企画などの仕事をしていて九一年802に中途入社する。
802は古賀のような音楽関係の仕事は詳しいが、放送は初めてというフレッシュな人材が多く集まった。
だからこそ「音楽」にはこだわりたいという思いが開局当時のスタッフには溢れていた。
大阪には新しい文化・風俗を生み出すバイタリティと、権力に対する反骨心が混在する。
大阪人の貪欲な好奇心を満たすには、既成のヒット曲に頼らず802らしい楽曲をヘビーローテーションするべきだと考え、
新しいムーブメントを起こすラジオ局を目指した。
大阪の土壌にあった番組編成を模索して現在の形に至ったのだ。
そして、802を聴いてきたリスナーから矢井田瞳や花*花などのミュージシャンが生まれ、
802がそのアーティストを育てるという、幸福な関係が生まれたのだ。
またリスナーをセグメント化した。ターゲットは十六歳から三十四歳。
「なおかつ、十八歳の感性を持った人に共感して貰える音楽を提供
しようと、今までやってきた」(古賀)。
802が開局した当時、洋楽中心のFM局というイメージがあった。
ところが今、選曲が変わってきた。古賀は、「開局当時の邦楽は、おニャン子クラブなどアイドル音楽全盛時代。
FM802らしいカラーの音楽を選曲すると、必然的に洋楽中心になっただけのこと。
邦楽に私たちが求める音楽がでてきたから、増えたわけです。今でも五十%弱は洋楽。
こちらの音楽に対する姿勢は変わっていない」という。
その積み重ねが、聴取率にも現れているのだろう。
ビデオリサーチによる第十六回関西圏ラジオ調査(調査期間は二〇〇〇年十一月二十七日〜十二月三日、
調査対象は京阪神地区十六歳〜三十四歳の男女、有効回答数七〇八人)でも圧倒的な強さを見せた。
イベント事業は宣伝だ!
ヘビーローテーションで推薦した曲が次つぎヒットするなど、
802の存在自体が、一つの社会現象になっていると行っても過言ではない。
ラジオへの関心が低下する現状で、このパワーの源はどこにあるのか。
今年四月、802では組織替えが行われた。編成部と事業部を一体化したのだ。この併合は何を物語るのか。
一般的に放送局の事業とは、放送以外のイベントや音楽出版で利潤を挙げる”副業”という見方をされるのが常識。
ところが802の考え方はまったく異なる。イベントを、宣伝活動と捉えているのだ。
いまでこそ放送局が宣伝費を使って他メディアでPRするのは当たり前になったが、FM802は一歩先を見据えていたといえる。
「以前から編成部と事業部は同じ目的のために連動して仕事をしてきた。
一体化することで、より効率よく展開できます」(古賀)。
802の大規模なイベント活動としては、九〇年から始まった夏の野外イベント『Meet The World Beat』がある。
しかしそれ以上に小規模なミニライブを大切にしている。その目的は、リスナーに参加意識を持たせるためだ。
大阪人はお仕着せで音楽を与えても飛びつかない。自分が関わり触れ合うことで初めて親近感を持つ。
古賀は、「大阪の人はみんなで盛りあがることが基本的に好きなんです」という。
リスナーとの交流はイベントだけではなく、アートの部分でも親密だ。
毎年ストリートアーティストのオーディションを行い、地元の新人を発掘している。
その才能をタイムテーブルの表紙やイベントポスター、ステッカー、ロゴに生かしている。
ここで「オヤッ」と思う方が多いだろう。ポスターやステッカーはわかるが「ロゴ」を変えるのかと。
ところが802のロゴは一つではないのだ。
「黒田征太郎さんにロゴを頼んだとき、黒田さんが一つに決めかねて、
これからは色んなロゴを使うべき、とハッタリでいったんです。
それを真に受けてそうなった」(古賀)。
ロゴがたくさんあるユニークなラジオ局。そんなFM802が守りに入らず、
既成概念を打ち破る発想を続けるかぎり、魅力的な放送局として私たちを楽しませてくれるはずだ。
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Michio -WANTAN- SUGIMOTO
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