「山崎陽子の世界
「夜明けの卒業式」 秋山ちえ子「涙いっぱいのシャンペン」より脚色/山崎陽子 
作曲/小川寛興
「月あかり」作/山崎陽子 作曲/小川寛興 出演/大路三千緒 日向薫
「バルコニーにて」作/山崎陽子 作曲/塩入俊哉 出演/日向薫 
ピアノ/清水玲子
「いざ別荘へ」O・ヘンリーの「警官と賛美歌」より作/山崎陽子 作曲/小川寛興
出演/森田克子 ピアノ/澤里尊子
文化庁芸術祭大賞を「山崎陽子の世界4」で受賞、その興奮が覚めやらぬ中、
「山崎陽子の世界5」の公演が紀尾井小ホールであり観た。
この間に博品館、大阪の近鉄小劇場でWの凱旋公演があった。
作・演出の山崎陽子さんは山崎屋の屋号の魚屋で、鯛やひらめ、
ちぬや黒鯛を巧みに料理して皆様にお見せするといつも話していたが、
今回はこの料理の仕方がいかに大切か、
そして何故、「山崎陽子の世界4」が大賞を受賞したか
明白に物語る結果を見せた。
「5」では山崎陽子さんは包丁さばきを誤ったと見受けた次第だ。
つまり、「4」では起承転結が見事な構成でなされていた。
だから大賞の受賞となった。
が、「5」ではこの構成に誤りが生じた。
その結果、舞台が滑らかに流れない。

一番目の「夜明けの卒業式」は看板娘の森田克子、新作ものだ。
物語はニューヨークの話。
二番目は「月あかり」、大路三千緒と日向薫で日本物。
三番目は日向薫で「バルコニーにて」物語は洋物。
四番目は「いざ別荘へ」で再び看板娘の森田克子でO・ヘンリーの作品。
テレビのドキュメント番組を作る時、ディレクターはなかなか編集段階で
自分が取材したビデオテープは思い切りよくカットできない。
そのような時は第三者にカットしてもらう。
今回の「夜明けの卒業式」もこれに似ている。
全体が長すぎた。潔くカットしたら状況は変わったかもしれない。
森田克子をしても作品の欠点を補えなかった。
そして「バルコニーにて」も洋物だ。
期待していた日向薫のパワーが不足、衣装もこの舞台にはマッチしていない。
この辺りで観客は大賞受賞の作品と比較する、何かおかしい、感じが違うぞと。
第二部「月あかり」、語りが大路三千緒と日向薫。
正直この二人の力量が違いすぎた。
落差が大きい。アンバランスになり物語の統一性を欠いた。
エンスト状態である。
で、最後がO・ヘンリー。
何故か山崎陽子の見事な筆さばきを見失ってしまっていた。
つまり洋物が主流をなしてしまい、観客の心に訴える身近なものが欠けた。
やはり日本物が欲しかった。
あれほど見事な「4」を知っているだけに、Xはその比較となり
観客は失意の底に落ちていく。
いかに作品の並べ方一つでこうも変わってしまうか、舞台構成の怖さを感じた。
観客が山崎陽子さんの作品を舞台で観て、
そこから自由にイマジネーションを抱ける素晴らしいものだけに、
山崎陽子さん頑張って下さい。
今回の大賞は大路三千緒さんです。

   2002年10月18日 東京 紀尾井小ホールにて  ちゅー太


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