朗読ミュージカル「山崎陽子の世界」


  「乾杯のとき」 作:山崎陽子  音楽:大野惠美  朗読:堂ノ脇恭子  ピアノ:清水玲子 
  「幻の肖像」 作:山崎陽子  作曲:薮内智子  朗読:上原まり  ピアノ:沢里尊子
  「新・つづみ物語」 作:山崎陽子  作曲:小川寛興  朗読:日向 薫  ピアノ:清水玲子
  「それぞれの空」 作:山崎陽子  作曲:小川寛興  朗読:森田克子  ピアノ:沢里尊子


久々の大阪での公演でしかも作品は、大阪で演じるのは、総て新作と聞いて心が興味津々で
ときめいた。
観客層は申し訳ないが歌舞伎と同じで高年齢の方々ばかり、男性客も両手はいかない人数。
初出演の堂ノ脇恭子さんの舞台を見てはたと気づいたのは、山崎陽子の世界は、ある一つの
共通した音程があるという事、その音程が実は観客には自然に耳に入る音程だという事を
知った。
堂ノ脇さんは矢張り劇団四季で母音を潜在的でも叩き込まれた名残が、今回の朗読劇では
違う音程になっていたのだ。
どうしても幕開きで、彼女の朗読手法は違う、それは何なのかと考えているうちに、上原まりさんの
舞台になった時感じたのが、音程が他の人と違う異質な音程でのセリフ回しなのだ。

多分彼女も演じているうちに、流れが自分でも気が付いたのではないだろうか?つまり線路を
1本間違えて違う線路を走り続けたのだ。

山崎陽子さんの作品そして朗読ミュージカルの難しさはそこにあるのではないだろうか?
つまり短時間の間に奇想天外に物語は大団円に進行する、そして最後は必ずハッピエンド
それが山崎屋の物語なのだ。

その短時間で間違いの間違いをハッピーに持っていくのは演じる人の技量なのだ。

上原まりさんの肖像画は、以前に少し似た物語があった。でもすべては延長線上の物語と
思えばいい。
かって、ベルばらで私はフランスの女王ですと、大見得を切った素敵な方が、いわば、実は
片思いできていた話で、実はこれとよく似た話は、画家の鴨井玲さんと小生の知り合いの女性の
恋物語だ。
画家はフランスへ、共に行ってほしかったが叶わぬこと、で画家は女性にパリからはがきを送り続けた。
その後画家は死ぬが、その時一枚の絵を女性に贈るが、その女性も亡くなる時、病室に彼の絵を
壁にかけて天国。

その心情を上原まりさんには折角なのだからもう少し表現してほしかった。
作者が言うとおりに本を演技者に渡したら後はどうでも料理してほしいものだと。山崎屋という
屋号があり、その店先に並んだのは演じる皆様なのだ。

それでも上原まりさん、昔得た舞台の務め方を充分に舞台の上で見せてくれたのは、長年の
経験だろう。

日向薫さんの「新、つづみ物語」は歌舞伎でいえば,四ノ切だ。その鼓にされた自分の妻の事が諦められなくて
人間の姿に成りすまし、鼓にされた妻に会いに、でもそこには今さら、元に戻れない悲しさがあるのを
何とか,一鳴きしてくれたら、焼かれずに済む、だから鳴いてくれと、でも叶わぬ心と知り共に火の中に
消えていく、悲しさを癖なく演じたところは、彼女の性格を作者は上手く見抜いて使い切ったところに
流石と感心!朗読劇だから当然一人で演じているが、やはり昔星組トップを張っただけに、大見得切って
セリフを言うところは、宝塚大劇場の中央で一人セリフを言う仕草と同じなのは思わずさすが!と感心した。

こうして山崎陽子さんの最近作を拝見して、作者に思わず聞きたかったのは、若きときと違い、今書くことは
かなり、苦労があるのではないかと。作者は正直に昔ならどんどん書いていったのが、今時を経てくると
つい、これでいいのかとか、こんな表現はいかがなものかとか、思わず考えてしまうと。疑問を持ってしまう。
昔のように流れるように書き綴れない、やはりそうかと、今回の作品を見ていてそれを感じたのだ。

考えるから筆がなめらかに流れていかない、だから森田克子さんのフィナーレになる物語も、どこかエンストしながら
進行していく風に感じた。

墓参り、その代役業、亡くなった方には申し訳ないが、もっと喜劇調にそして哀愁を感じさせてもいいはずなのだ。
一つは、一つ一つの話の中が入交じってしまう、つまり作者はそこで、考え込んでしまったのではないだろうか?
折角の素敵な今風の話が言い訳風に感じてしまう、まことに残念。
でも作者が総ては気づいていることなのだから、演じるうちに素敵なフィナーレ作品になるだろうと心ひそかに
思ったのだ。
亡くなった三国連太郎さんが、喜劇は喜劇と演じなくても自然に喜劇は喜劇になると話していた。それと同じなのだ。

でもそれにしても、メデイアはいい加減だから、こうした舞台は東京でだろうと、大阪であろうと取り上げないと
良い舞台は育っていかないものだ。

今回は、いささかほろ苦い感じになったが、最後に言いたいのは、山崎陽子さんにぜひしてほしいのは
見るべき座付作者もいない宝塚歌劇の舞台を作ってほしいと言う事だ。

でも、聞く所、ちかじか、あの名優、光枝明彦さんが「山崎陽子の世界」に現れるそうで、一段と成熟した
山崎陽子さんの手腕に楽しみを期待している次第です。

2013年4月20日(土) 大丸 心斎橋劇場 午後1時公演 ちゅー太


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