宝塚歌劇星組公演 ミュージカル「こうもり/THE ENTERTAINER!」102期初舞台
                  ちゅー太の劇評


ミュージカル「こうもり」…こうもり博士の愉快な復讐劇…

 脚本・演出 谷 正純  振付 尚すみれ  作曲・編曲 吉ア憲治  編曲 植田浩徳  装置  新宮有紀
 衣装監修  任田幾英  衣装 加藤真美  照明  勝芝次朗

ショー・スペクタキュラー「THE ENTERTAINER!」
 
 作・演出  野口幸作  作曲・編曲 青木朝子  作曲・編曲 手島恭子


久しくご無沙汰の宝塚歌劇の星組公演を観劇、この公演で102期生が初舞台を踏んだ。
谷正純の脚本演出の,こうもりは宝塚歌劇が本来得意とする分野だ。
1998年入団の星組のトップスター北翔海莉、二番手の紅ゆずるを中心にした
配役だ。
もともとが使われる曲はウインナーワルツで3拍子のもので、どう考えても、ダンス部分は
3拍子以外使えない。振付の尚すみれも此の辺りを大変苦労した様子が伺える。

タイトルにあるように、こうもり博士の復讐劇なのだが、北翔にしても、その博士の個性が
漫然としているので感じられない。
宝塚の舞台の芝居と言うのは、如何にそれ風に演者が見せるかなのだ。さらに
博士の親友を演じる、紅ゆずるが芝居の演技の基本的なものを備えていない風に
見受けて、雰囲気で芝居をしているという雰囲気を感じて、何かしら身内の芝居と言う
感じを強く受けた。

紅も芝居の基本的なものを、ちゃんと勉強,つまり沢山の外部の舞台を見ていれば
自然と芝居のやり方が判ってくるので、風貌素材としてはいいものを持っているのだが
誠に惜しい気がした。

つまり芝居にメリハリがなく、芝居を演じる生徒たちが、ばらばらの芝居をしている
その為、芝居の流れがないので、全体がかったるいものになってしまった。

こうした中で、汝鳥 伶が長年の貫録で落ち着いた芝居を見せてくれたのと
刑務所看守の美稀千種が流れのよどんだ中で、軽妙な芝居を見せてくれた。

ダンスに関しては振付の尚すみれが苦労した通り、どう転んでもワルツ以外の何物も
ない中で舞台全体を使い軽やかなダンスを又細かい部分でもワルツでダンスを
エッセンスの様に使ったり,芝居に変化をつける苦労が感じられた。

良いものを持った生徒もいるだろうが、その育て方が今の宝塚では作品から見ても
難しい。大げさに言えば100年の間に宝塚歌劇の伝統を守ってきた人たちは今
誰もいなくなったと言える。

ショウの方は、初舞台生のロケットだ。
振付の鈴懸三由岐、もともとバレーの上手い人だったので、ロケットにもその
フィーリングが感じられたが、何か線が細い初舞台生のロケットという感じを受けた。
矢張り,その昔の振付の喜多弘がしたような、振りは単純だが、初舞台に相応しい
ダイナミックなものがほしい。
喜多弘はまだ踊れないのだから、細か振りはいらないです。そして欲しいのは笑顔で
その作り方は、おかーさんという事ですと話していた事を思い出した。

ショウの作演出の野口幸作はこの舞台が初舞台だそうだ。
出だしの北翔が星の中から出てきて、セリで本舞台へ降りるという出だしだが
この手は昔よくやったもので、やはりせり上がりで出してほしかった。

ショウの作りとしては、短いながら物語が欲しいもので、単純に大勢口を使う事は
舞台が散漫になってしまうのだ。
今回もロケットが前半で出てくるのだが、やはりロケットは最後に持ってきてほしい
そしてトップのコンビのダンスで大階段と言う、永遠のマンネリでもそれが宝塚の
売りも出はないだろうか?

それと銀橋も使いすぎと見受けた。振付の朱里さんが、銀橋を渡り切れたらその生徒は
スターになれると言ったぐらいで、銀橋は一番観客に近い所だけに、その大切にしないといけない。
黒燕尾にしても、大勢口にしても、メリハリがなく、ただ出てきているという感じで
舞台に残るものがないままに消えていく。
元来の宝塚のショウ、レビュ―の作り方を考えてほしい。5人の振付師を使うなら
それぞれの振付を1本にまとめる所が演出家の腕だろう。
大階段を逆三角形に降りてきてロケットと言う初舞台生の時もあった。

衣装の色は華やかだが、舞台演じられるショウには、宝塚と言う華やかさが見当たらなかった。

観劇 2016年4月1日 宝塚大劇場 13時公演 5列45 12000円 ちゅう太









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