「クレイジー・フォー・ユー」

作詞・作曲 ジョージ・ガーシュイン アイラ・ガーシュイン 台本 ケン・ルドウイック
日本語歌詞 和田 誠 高橋由美子 日本語台詞 高橋由美子
演出スーパーバイザー 加藤敬二
出演 松島勇気<ボビー・チャイルド>宮田 愛<ポリー・ベーカー>志村要 大和貴恵 青羽 剛 平田曜子


大阪近鉄劇場での初演を観て以来22年ぶりにクレイジーフォーユーを見て幕開き一番に驚いたのは
セリフ回しがロボットが喋っているような喋り方で、一瞬異様な感じを受けた事だ。
もともと体調不良で劇団四季を去った浅利慶太氏は母音法を大切にしてきた。勿論母音法は大切。

日本語は最も母音を強く子音の弱い言語で明確に台詞を伝えようとしたはずだ。専門家に聞く所によると
日常会話で普通に話している時は語尾を綺麗に止めることが出来るが、セリフとして喋ると感情過多に
なった時など息を混ぜて正確jな言葉を発することが出来なくjなるそうだ。
所が現状の俳優の喋りは母音を確実に発音させようとして、腹筋で一音節ずつ腹をつくという方法をしたため
もともと母音が強い上に一音節ずつ強調する音節だけが目立って文章のフレージングがなくなりロボット語に
なってしまうという単純な原因だという事。

その以前は、一つの四季節と言われ、ストレート芝居の場合は、時には台詞が明快に聞こえ善しとしたものでした。
しかし、このロボット語をおかしいと意識して変えていかないと、ストレート芝居をするときはかなりの問題が
出てくるのではと?

そのせいか舞台で踊る所、セリフの所、歌の所が繋がりを感じさせないで、ぷつんとした流れで舞台は進行していく。
従って本来はボビーが舞台の空気を動かさないといけないのに、動かない、それゆえ物語の流れが出てこない。
歌う所、喋る所で一音ずつ腹をつくという発声ゆえ、どうしてもぶつ切れ的な感じを受ける。
その為、やはりフーリング、つまり感情表現が不足してくるのだ。

22年前にボビー役加藤敬二で観ているから、芝居の流れは勝手に加藤敬二のイメージを描いてみていれば、
つなげられるが、そうでないと相当つらい。

今回のは、アンサンブルがまとまり良く舞台を納めていた。
台詞は歌え、歌は語れと、そして大切なのは台本を読解することだ。歌は上手く歌おうでなく、気持ちで歌うことが
大切ではないだろうか?そうでないとみている観客の心の中に響いてこないのだ。

ただ歌ってる、踊ってる?確かに踊りは切れも良かったが、総てが合致しないと舞台の総合芸術にはならない。
かつての古い俳優は今の劇団四季には殆どいなくなった今、母音法は大切だが、この間違った母音法は
訂正していかないと、かなりの支障が生まれるのではないかと思った。
演技云々以前の話だ。

此れは、次にするアラジンにも、同じことが言える事になるのではないだろうか?まずロボット語の矯正から
してほしい。折角の振付ストローマンの振付もガーシュインの音楽の魅力も失ってしまう。
一言でいえば、母音発生に集中するため、舞台での芝居が忘れられている。どうしても段取りでの芝居としか
見えないのが残念だ。
セリフの神様と言われた日下武史さんが体調不良で、教えられない事が惜しい。

観劇 2015年3月27日   四季劇場 秋  13時30分公演 ちゅー太





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