劇団四季公演ディズニーミュージカル「アラジン」

                       ちゅー太の劇評


作曲 アラン・メンケン 作詞 ハワード・アッシュマン テイム・ライス 台本・作詞 チャド・ベグリン
演出・振付 ケイシー・ニコロウ 装置デザイン ボブ・クローリー衣装デザイン グレッグ・バーンズ
照明デザイン ナターシャ・カッツ 日本スタッフ 日本語歌詞 高橋知伽江 日本語台本 劇団四季文芸部
加藤敬二 たなか浩一 田邊真也 道口瑞之 音楽監督 鎮守めぐみ 

劇団四季とデイズニーの提携は20年前の美女と野獣をMBS劇場と赤坂ミュージカル劇場で公演したのが
始まりで、閉館していた毎日ホールをリニューアルしてMBS劇場へ、私もそのお手伝いをした。

アラジンの公演は61年劇団四季を育ててきた浅利慶太氏が健康上の理由で去ったあと62年目の劇団四季を
新たに社長になった吉田智誉樹さんが育てていく作品としてはふさわしいものと言える。
吉田社長の話では来年5月まで発売した切符は90%35万枚売れていて,改めて今年7月に来年末までの切符を発売
することにしていると。また今回の日本公演では技術面で洞窟の場面の金箔は日本の伝統技術を駆使、ジーニーの
手枷が外れるのと、コブラの映像はブロードウエイ公演にはない日本公演の加藤敬二他のスタッフが
独自に考えたとの事。

そのアラジンの公演が2015年5月24日に初日の幕を開けた。ブロードウエイ公演が昨年の3月からの公演だけに
その1年後に日本公演と言うのは異例の速さと言える。

日本語作詞を高橋知伽江さんが音楽監督に鎮守めぐみさんが担当しているのも舞台の完成度を高めるのには
最適のスタッフと言える。
物語はアラジンと魔法のランプの話で、ミュージカル舞台化に当たり、その一番は空飛ぶジュータンであり、そこで歌う
ア・ホール・ニュー・ワールド新しい世界、とともに愛の素晴らしさ、人間にとって誠実がいかに大切かが
美しい装置、衣装、音楽の中で描かれている。

キャストも今回はプログラムによれば1500人余りオーデイションから選ばれた人たちだ。
主役はアラジン<島村幸大>とジャスミン<岡本瑞恵>だがこの二人を盛り上げるジーニー<瀧山久志>
ジャファー<牧野公昭>イアーゴ<酒井良太>が歯切れのいい芝居を見せてくれるので主役二人の単調に
流れがなりそうなところを補っている。
瀧山ジーニーは物語全体の流れを堅実に作り上げていた。舞台の空気を自在に動かしており彼の巧みな演技が
主役二人を盛り上げていくのは宝塚歌劇と同じで、宝塚歌劇のトップスターも周囲の生徒が自然と盛り上げる
役目をするからトップが光ってくる。

ジャファー役の牧野とイアーゴ役の酒井のコンビは下手すると邪魔な役どころになるのが、
ジャファー牧野が変な芝居をせずにごく当たり前の素直に演じているのが逆にジャファーの個性を
観客は感じているのではないだろうか。
イアーゴ役の酒井は、えてしてこういう役は自分流に一人芝居になりがちだが、ジャファー牧野の芝居を見ながら
自分の芝居が邪魔しないように演じているのが素晴らしい。二人のコンビの息が合致している。

アラジン役の島村とジャスミン役の岡本の弱点は台詞の言い方だ。母音法は大切だが、愛を語るにしても、
言い回しに気を付けないとロボット語になりがちで、せっかくの甘い香りが漂わなくなる。
台詞の言い回しに関しては観客の中でも感じ取る人がいた。アラジン役の島村はもう少しジャスミンに対して気持ちの
強弱を出してほしい、一因は台詞の言い回しだが、何処か間の取り方が読解してないのでは?ジャスミン役の岡本も
台詞に余韻を残す感じが出てくると雰囲気的にいいのでは?二人の台詞のやり取りキャッチボールが消化されて
ないように感じた。
動きにしても、決めるところは決めていくと、アラジン役の島村の個性が生まれてくるのではないだろうか?
ミュージカルで間の取り方は難しいだろうが、そこが演者の実力と言われる由縁ではないだろうか。

初日のせいもあり、こなれてくればと思うが、舞台の中の自分のリズムを確実に、つかまないと演じてるだけで
終ってしまう。

舞台全体はジーニー役の瀧山とジャファー役の牧野、イアーゴ役の酒井の間にアラジンとジャスミンが挟まれている
印象を受けるだけに、二人の個性がも少し欲しい。空飛ぶジュータンの上で二人が歌う雰囲気も
もう少し舞台の空気を動かして欲しい。

配役もダブルで組まれているのもあるが、個々の個性が出ることを期待したい。大人も子供も楽しめる。

舞台装置、衣装と雰囲気は充分満喫できる。振付もアンサンブルが切れのいい踊りを見せてくれる。演技陣も
ニュー劇団四季に相応しく次代へ突入出来るだろう。

観劇 2015年5月24日 午後1時公演 初日 電通 四季劇場 海 <ちゅー太>





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