宝塚歌劇講師45周年記念
      〜オンステージ タカラジェンヌと共に〜


   構成演出 草野 旦 振付 アキコカンダ 音楽 吉崎憲冶、編曲 前田繁美
   衣装 任田幾英 河底美由紀 照明勝柴治朗 振付補 市川紅美 
   振付助手 小川玲子 粕谷理恵 舞台監督 山崎芳雄
   製作主催 アキコINタカラヅカ実行委員会<可奈潤子 美高悠子 但馬久美>
   製作協力 宝塚クリエーテイブアーツ 協力 宝塚歌劇団 宝塚舞台 阪急電鉄
   スペシャルサンクス 松原徳一


アキコカンダは舞踊家マーサー グラームに憧れ1957年にマーサー グラーム舞踊団に入団。
ソリストになるが、その後日本に帰国、1962年に宝塚歌劇の舞踊講師、振付を担当するようになる。
それから今日まで45年経ち退団した元生徒達で今回の舞台が企画されて実現となった。

アキコ カンダ今年71歳、このこの公演企画の話を聞いた今回演出担当の草野 旦は
出演する元生徒の中には60歳を超える方もいて歌の世界では年輪が味を出すというが、
洋舞では無茶だろうと思ったとプログラムに書いている。

普段のアキコ カンダを見ている人は、本当に大丈夫?と思う人が多い、これが正直の話だ。
所がそれが大違いでアキコカンダは舞台に上がるとがらりと変身するのだ。

舞台は「セピア色の記憶〜」〜アズナブール作品集、アキコの軌跡 ナレーション和 涼華
風に光るアキコ、「タカラヅカ名場面集」の4部構成。

出演者は歌 麻鳥千穂、安奈 淳、明日香 都、但馬久美、峰 さを理 
ダンサーは美高悠子、但馬久美、安奈 淳、三代まさる、峰 さを理、 千城 恵、桐生のぼる、
瀬川佳英、あごう沙知、優木 京、スパニッシュダンスの蘭 このみ、他で
元宝塚歌劇団28人、宝塚歌劇団星組18人が出演した人たち。

幕が上がるとロングドレスで裸足の出演者がそぞろ歩きに舞台奥にセットされた
応接間風の所に集まり始める。やがて麻鳥千穂の歌で5人の集団が踊り始める。
舞台上の他の出演者はその踊りを見ている。
こうして交互にそれぞれがソロか集団で踊りを見せていく。
裸足で踊るのがアキコカンダのダンスの見所?特徴でも?
衣装は統一され、色のばらばらも無く自然体の中で演出の草野 旦が心配した
年長の人たちの踊りも見事にスムースに運ばれていく。
アキコカンダのダンスには衣装が大切な部分を占める。
踊りながら衣装が妖精のような雰囲気をかもしださないとその雰囲気が生まれてこない、
衣装プラスダンスなのだ

出演者の多くはその若い時代に、宝塚歌劇団の稽古場でその姿を見受けた人たちばかりだ。
それだけに厳しい基礎と気持ちは知っている人たちばかりだから、
またアキコの舞台で踊ろうと思う人たちばかりだから、
その真剣さは、情熱は自然に舞台から客席に伝わって来る。

アキコの振付は、手先を美しく見せる、体から踊りながら出す線を大切にする、
繊細な体の動きを重視するなどあり、踊り手にはかなり難しいダンスだ。
ただそれがスムースに出来上がれば見ていて気持ちの良い踊りとなる。

麻鳥、安奈、明日都、但馬、峰とそれぞれの個性を失わずに歌い、
それにあわせてダンスも滑らかに「セピア色の記憶」は流れるように終わる。
気持ちの集中、一致団結は素晴らしい柔らか味を持つ舞台を作り出したのだ。

「アキコの軌跡」は星組の和 涼華のナレーションで
アキコカンダの経歴が篠山紀信の写真背景に語られる。
ナレーションが終わり写真の背景が引きあがると、舞台中央にアキコがよこたわっている。
「風に光るAKIKO」のダンスの始まりだ。
舞台の上で踊るアキコカンダの裸足の足のつま先の使い方が繊細で、
細い体を小川の流れのように運んでいく。
手先は指の先まで神経が行き届き、
その動作の一つ一つが見事なまでにメリハリをつけているのには驚いた。
さらに踊りの先端には、そこにアキコカンダの恩師マーサー グラームが存在しているかのように思えた。
心の中ではマーサーに常に語りながら躍っているのではないかと見受けた。
もう一つアキコカンダの振付の踊りは、水に油を流してながれていくが
やがてその油は正確に次の流れに入り込むように仕組んでいる所が普通の振付と違う所だ。
それでこそ舞台のダンスを観てアキコカンダのものだと人に判らすものがある。

一本の線上の中でその線の渦巻きが逆回転史ながら又元に戻るという、
単純に幾何学模様を描くだけというものとは違うのだ。

星組生徒のダンスになり、風の追憶で星組生徒達とアキコカンダのダンスになる。
この時の生徒の衣装がモノトーンの中で裾が広がり
これがアキコカンダの雰囲気に良い感じをかもし出すのが良い。
そして生徒の集団の中にアキコカンダが交わり踊るのだが
若さの中で孤高な感じがアキコカンダからにじみでるのが興味深い。
そしてアキコカンダとダンスの線上で繋がる生徒の和 涼華と手をつないで集団で踊る雰囲気が
アキコカンダを増幅させ、また若き和が引き立ち溌剌に見えるのが不思議だ。
アキコカンダの魔力かもしれない。
<風の追憶>と<アリア イン ジャズより>のアキコカンダのダンスが見ごたえがある。

幾つになろうともダンスにおいては肉体での表現が必要であり、
それをアキコカンダは充分にやり遂げている所に驚きを感じるのだ。

「タカラヅカ名場面集」の
<レビュー オブ レビュー>は1964年8月公演 鴨川清作演出の作品、
<ジュ ジュ>は1974年1974年8月公演 草野 旦演出
<アリア イン ジャズ>は1967年7月公演 鴨川清作演出作品
<ハロー タカラヅカ>は1970年3月作品公演 鴨川清作演出作品
<ヒット キット>は1967年9月公演 内海重典演出作品
<ハムレット>は1967年2月公演 鴨川清作演出
<ハロー ジョージ>は1992年10月バウ公演 大田哲則演出作品
<クラシカル メニュー>は1980年6月公演 草野 旦演出作品

こうして過去の作品が名場面集として久々に披露されたわけだが、いずれもダンサーの皆さんが
一から取り組んで作り上げた舞台だけに、アキコカンダの情熱とその情熱に今も心酔して
アキコを求めていく人たちの心は素晴らしいものだ。
更に但馬久美のソロのダンスは日頃の修練を感じさせ、開脚も見事。
ダンスの峰はその片鱗をう失わず、千城は久々のダンスを持ち前の生真面目さで披露、
蘭は身につけたスパニッシュで魅了させた。
記憶に残る優木、桐生、瀬川、あごうは充分に現役時代を彷彿させていた。
さらにこうしてみると名場面は矢張り鴨川作品となり、素晴らしい演出家だったことが裏づけできる。
強いて言わしめると、最近の作品に不満を感じる草野が過去にこれだけの作品が、
そして今回このような素晴らしい作品が作れるなら、もうひと頑張りして欲しいものだ。

<風の追憶>と<アリア イン ジャズ>のアキコカンダがいいと書いたが、全体の踊りの
総ては過去に過ぎ去った人たちのレクイエム的心情も表現されているかのように感じ取れた。
踊の中には愛が、情熱が、博愛がそして自身の信念が凝縮していた。

音楽の編曲も良かった。
得てしてこの種は途切れ途切れになるものだが、この舞台は流れが
スムースで場面の繋ぎもよどみなく、ダンサーの出入りも気遣いが感じられ、
いまだに元生徒もこの公演のため自主稽古に全力投球したのかと思わざるをえないほどだ。
それ程今回の出演者の気持ちがアキコカンダ45年に一直線に注ぎ込まれている感じを受けた。
誰が良かったというものではなく、本来の宝塚歌劇の生徒が持つ団結、絆が皆にあり、
全員が好演したのだ。

振付という仕事は、才能が総てと考えている。考えて出来るものではない。
又見せようとした振付は皆失敗するのだ。それ程才能と感覚が無くてできない。
踊れるから出来ると言うものでもない。その才能がアキコカンダにはある。

これほど気持ちよく舞台を見て劇場を後にしたのは久々だ。
アキコ。まだまだ安心して当分踊り続けてください。そして素晴らしい振り付けも。

  観劇 2006年12月1日宝塚バウホール公演 午後18時開演 席番ち列 18番 ちゅー太



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