劇団四季公演 ミュージカル「キャッツ」大阪公演
                     ちゅうー太の劇評


1985年、国鉄大阪駅コンテナーヤード跡地に劇団四季がミュージカル「キャッツ」と言う樹を植えた。
それから31年たった2016年7月に、このキャッツと言う樹に実が熟したのだ。
油脈と言われたミュージカル「キャッツ」劇団四季は正に掘り当てたのだ。

キャッツの長続きしてきた理由?魅力?はとプログラムに専門家がいろいろと書いているが
端的に言えば、舞台に出てくる猫たちが見せるそれぞれの個性が、このミュージカル「キャッツ」を
油脈にしているのだと言える。

パントマイムの‐マルセル・マルソーの舞台を金沢で見てバレエをしようという気持ちになったと
加藤敬二さんは話した。
その彼がオーディションで合格、ミストフェリーズの役を演じて一躍ミュージカル「キャッツ」を
世間に知らせるきっかけを作ったと言っても過言ではないだろう。

大阪公演は今回で4回目と言うが、小生は事情があって国鉄コンテナーヤード跡地と
大阪難波の大阪球場跡地でのテント劇場でし観劇していないので、劇場での公演は今回が初めてだ。

振付も長い間に初演の山田 卓さんから加藤敬二さんへと変わって来たし、
猫の目線から見たごみ捨て場も時代と共に少しずつごみの姿が変化してきている。

今回の舞台創りは演出スーパーバイザーの坂田加奈子さんとプログラムにある。
オーヴァーチュアが始まり、猫たちの目が客席の中を光ながら飛び回る。
やがて照明が付くと、巨大なゴミ置き場が目の前を回転していく。

やがて、1匹づつ猫たちが現れるのだが、過去の記憶では猫たちの出方が音楽と共に、もう少しリズムよく
迫力を感じさせて出てきた記憶がある。
更に、出てきた猫たちが個々に個性を見せていたはずだなあと、思いながらが出だしの感想だ。
何となく猫たちがおとなしすぎる?これは演出に当たった人の個性ゆえかなと。

期待したのは、何回もその昔の公演で見た、おばさん猫だ。
いかにも体が重そうに見えて出てきてそれが軽快なタップダンスに代わる所だ。
今回は、気持ち的にもかったるいという、重さが感じられないまま
タップに入るので、軽いという感じを受けた。
此処は、一つの見せ場だけに、押しつけがましく演じてほしかった。
これは演じる人の性格の優しさが出たのではないだろうか?

ラム・タム・タイガーの出は、もう一つ一瞬の間を突き破る感じで出てくれると、
更なるインパクトが表現できたのではないだろうか?
思いっきり、キザで格好よく出る、出の分部が大切だ。
そしてラム・タム・タイガーの周りで踊る猫たちが色男猫に媚を見せてほしい。
なんとなく、歌い踊る中で互いの間に空間を感じたから。
踊りの空気の密度を濃く見せてほしい。
つい、何十年も前に此処の場面で踊っていた羽永さんたちを思い出してしまった。

見せ場の一つ、マンゴジェリーとランベルティーザの場面は此処も
もっと、しつこく見せても良かったのではないだろうか?
掛け合いパントマイム的要素がいるだけに全体に、感じるのは淡白という感じで、
これは女性の演出というのも理由の一つかもしれないと感じた

ガス劇場猫も期待の場面だ。
かっさい浴びたあたり役、みせようか、みせようか、欲を言えばもう少し大芝居的で、
くさくすると、観客をもっと引き付けたんでは?でも、いい芝居をしていた。
残念なのは、白猫がもう少しガスにすり寄って親密度を感じさせて欲しかった。

スキンブルシャンクス鉄道猫は、これを演じたカイサー・タテイクさんが、澄んだ声で素直に歌うのが、
場面の変化としても良かった。

矢張り、一番気になったのは、マジシャン猫のミストフェリーズだ。
天井からロープで降りてくるところから、はじまり見ていて思わず加藤敬二そのままと言う印象を受けた。
ダンスの切れと言い、歯切れの良さと言い、ダンスの回転の良さ、軸がずれないで踊り。
そのステップにはよほど教え込まれたなというものを感じた。
表現の仕方も無駄がないだけにテンポがいい。

終演後、一色龍次郎さんに会うと意外に背の高さが低いので、改めて舞台で大きく見えた彼の演技には
二度ビックリ!今後の活躍が楽しみだ。

グリザベラ、如何なる感じで舞台をこなすかなと興味津々でいたが、
意外に歌共に淡白で終ってしまったというのが印象だ。
体から出るアクというものが、何か欲しいのだ。
近年、歌うと共に同時に体でも表現していくという人が少ない。
歌は歌だけというのでは、舞台は矢張りつまらない。聞かせて見せなくては。

総体的に次世代が劇団四季の油脈と言われ、大阪から見ると31年経ち、
実が熟した「キャッツ」を継承した舞台を見せていることは、
劇団四季の個性が失われていない事を立証した事になる。

常に新しいものがいいのではなく、劇団四季を支えてきた、その昔の人たちが演じた良い部分は
躊躇なく継承見習って,次なる舞台で見せてほしい。
劇団の個性はそんな事を大切にするところから始まるのではないだろうか?


 観劇 2016年7月18日 大阪四季劇場 13時公演 1階 H列 7番 <ちゅー太>


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